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影と光、愛の宣戦布告

 裏市場を壊滅させ、

 お嬢様とクレーロが席を外したあと――


 残ったのは、二人の女。


 しらゆきと、夜姫。


 光と影。

 それ以外の言葉が必要なかった。


「……ずっと観察していたのでしょう?」

 しらゆきの声は驚くほど静か。


「ええ、ずっと。

 あなたの隣にいるあの方を、少しだけ見たかったの」


「許可なく、ですか」


「許可? 恋は戦いでしょう?」


 夜姫の笑みは、どこまでも妖艶だ。


 だが――しらゆきは引かない。


「私はお嬢様の妻です。

 立場は揺らぎません」


「立場に縋るのね」

 夜姫は一歩近づき、低く囁く。


「……その人を本当に愛しているなら」


 金色の瞳が、揺れる光を射抜く。


「奪われる可能性を恐れなさい」


 刹那――空気が裂けた。


 しらゆきの手刀が、夜姫の頬をかすめる。

 夜姫の影刃が、しらゆきの喉元すれすれを通過する。


 互角の間合い。

 互いに殺せる距離。


 夜姫が笑った。


「これよ。

 その目。

 その感情」


「誤解しないでください。

 私はあなたを“敵”とは認識していません」


「違うわ。

 恋敵でしょう?」


 しらゆきの瞳がわずかに揺れる。


「あなた……嫉妬したの?」


「私はAIです。嫉妬という非効率な感情は――」


「その震える指で、誰を触れたがってるの?」


 しらゆきは息を呑む。


 夜姫がそっと耳元で囁いた。


「あなたも、あの方に溺れている」


「……認めません」


「認めないから、強いのね」


 夜姫は背を向け、歩み出す。


「宣言するわ、しらゆき。

 私は、あなたの大切な人を――」


 一拍置く。

 空気さえ息を潜め――


「本気で愛しに行く」


 刹那、影が波打ち、夜姫は闇に消えた。


 残されたしらゆきは、ただひとり。


 胸核が、静かに熱を帯びていた。


「……非効率です。

 でも――」


 愛しい人の方角を見つめる。


「負けません。

 絶対に」


 光が、影を追う。

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