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影を捨てる夜、牙を研ぐ闇

「仕込みは完璧です。後は派手に“回収”してくださいよ」


 夜の倉庫街を見下ろす高台。

 クレーロが手にする魔導通信器には、裏社会の幹部たちが

 まんまと一箇所に集結している映像が映っていた。


「お嬢様に手を出す計画なんて……

 商人舐めんじゃねえぞって話ですわ」


 胃薬片手に、クレーロは不敵に笑った。


「標的は三十七名。全員、裏社会の中核です」


「ええ。その“闇”、今日で終わりよ」


 夜姫が影から現れる。

 その背には抜き身の魔剣《黒霞》。


「援護は任せてください。

 夜間モード、フルバースト」


 しらゆきの瞳が蒼光を宿し、

 背部から稲妻のエンジンが噴き上がる。


「行きましょう。

 お嬢様の闇を、私たちの手に」



 倉庫内部。

 幹部たちが黒い机を囲み、計画書を広げている。


「魔女の失脚? 笑わせる」


「やれるさ。あの女は一人だ」


「違うわよ」


 声は天井から――影から。


「魔女には、私がいる」


 その瞬間、照明が全て消えた。


 パリン、と割れる音。

 闇に金の瞳が三十七の視線を貫く。


「夜を、私に」


 影が膨張し、床から無数の黒槍となって立ち上がる。


「ぎゃあああ!?」


「足が……沈む!? 助け――!」


「影縫い。

 命乞いできる時間、与えるわけないでしょ」


 悲鳴が重なる。

 ただし、それは始まりの合図にすぎない。



「稲妻制圧、開始」


 倉庫壁をぶち抜き、

 青白い閃光と共にしらゆきが降り立つ。


「最大出力、18秒限定」


 彼女の指先から無数の電撃レーザー。

 狙撃精度、百分の一ミリ。


 敵の武器だけを焼き切り、

 神経を麻痺させ、膝を折らせる。


「ひ、ひいい……

 化け物が……二人も……」


「ええ。まだ二人よ」



「全員確保確認!」


 クレーロの声が通信器から入る。


「出入口封鎖完了!

 衛兵隊も“適法手続き”で動かしてます!」


「優秀ね、クレーロ」


「褒められると……胃が痛ぇ!」



 戦いは終わった。

 鉛のような静寂の中――


「夜姫」


 しらゆきが近づく。


「その選択を。

 誤ったとは、言わせません」


「誤るものですか」

 夜姫は血に濡れた髪を掻き上げる。


「闇ではなく。

 あなたの光を護るために、振るのよ」


 しらゆきの眼光が揺れる。


「競争相手としては、最悪です」


「恋ってそういうものよ」

 夜姫は笑った。



 数秒後。

 倉庫の扉が軋む。


 お嬢様が、夜風をまとって現れた。


「さすがね。

 二人とも、よくやったわ」


 その微笑み一つで、

 すべての闇が光に変わる。


「さ、帰りましょう。

 あなたたちの居場所はここじゃない」


 夜姫は主の背中を見つめ、

 ゆっくりと跪いた。


「――お嬢様の影として。

 世界すべての夜を、あなたに」


 魔女と影とAI――夜を統べる三つの刃

 新しい秩序がここに揃った。

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