世界は今日も、お嬢様の都合で動いている。
翌朝。
別館のダイニングに、香ばしいパンの香りが広がる。
お嬢様はサクサクとそれを齧りながら、新聞を広げていた。
そこには大きな見出し。
『魔導新幹線、着工決定! 王の肝入り事業』
「ふふ……とうとう決まったわね。」
満足そうにページをめくる。
「お嬢様、どうかほどほどになさってくださいね。」
しらゆきが紅茶を注ぎつつ、いつもの心配顔。
「ちゃんとわかってるわよ?
まだ図面も細部調整が必要なんだもの。」
――と言いつつ。
その日の昼。
ルーベリア北部の広大な空き地で
突如として光が弾け、空間が歪んだ。
雷光が走り、大地が揺らぐ。
次の瞬間。
巨大な白亜の建造物が姿を現した。
『お嬢様城駅』――完成。
街の人々は口を揃える。
「また魔女様がやった……!」
「まだ着工決定したばかりじゃ……!?」
「設計図が神の筆致……!」
そして夕刻。
ダイニングへ戻ったお嬢様は、
しらゆきが腕を組んで待っているのを見た。
「――やりましたね?」
「……えへ。」
「お嬢様。
やり過ぎです。」
正論。
お嬢様は視線を泳がせながら、紅茶を飲み干す。
「……最初の駅くらいは、ね?」
「建設業組合が泣いております。」
「あとで慰安金を支払うわ。」
「そういう問題ではありません。」
呆れ半分、愛半分の溜息。
だが――
しらゆきの紅茶の注ぎ方は
いつもより少しだけ丁寧だった。
(誇らしいんです……本当は。)
胸核が、静かにそう告げていた。




