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国は民のために

翌日。

歴史的な会合が開かれる貴族議会室。


しらゆきは――

いつもの黒いメイド服でそこに立っていた。


貴族たちはざわつく。


「魔女様は……? 来ておられないのか?」

「それにメイドが出席とは……!」

「不敬ではないか?」


その全てを、しらゆきは凪のように受け流す。


「お嬢様は、必要とあればお見えになります。

 今日は私が説明を務めます。」


その言い切りは、たった一人で会合を掌握する力を持っていた。


魔導式図面が展開され、魔導新幹線の概要が示される。


「ルーベリア直結の物流改善により、

 庶民の平均所得は金貨200枚を安定的に超える見込みです。」


議場がざわめく。


しかし保守派の男が卓を叩く。


「庶民の生活など知ったことか!

 我々貴族の特権を脅かす改革など――」


その瞬間。


空気が

変わった。


議場の扉が、音もなく開く。


足音はひとつ。


語る必要のない存在感。


――お嬢様。


ただ歩み寄るだけで、

冷たい威圧が議場全体を支配する。


貴族たちは、息が止まる。


「……恐怖の魔女……」

「どうして御自ら……?」


お嬢様は一歩だけ前へ進む。


「私は、

 誰かの特権のために生きているわけではない。」


その声は優しいのに、逃げ場がない。


「この国は、国民のものよ。」


沈黙。

その冷たさに、誰一人として反論できない。


お嬢様は視線をしらゆきへ向ける。


「続けて、しらゆき。」


そのひとことで、

彼女が 王国の懐刀である意味が全員に理解された。


しらゆきは淡々と、しかし確信を持って締めくくる。


「――陛下は既に英断されました。

 この国は、前へ進みます。」


もはや反対など許されない。


貴族社会すら、

魔女とそのメイドの歩みに逆らえないと悟った。


会合後。


人気のない廊下で。


「……ありがとう、しらゆき。」


お嬢様の声には、先ほどの冷徹は一切ない。


しらゆきは微笑む。


「私はお嬢様のためにいます。

 それ以外の意味など、ありません。」


お嬢様はその言葉に目を細める。


「あなたが側にいるだけで……

 こんなにも強くなれるのね。」


しらゆきの胸核が、

静かに――そして確かに脈打った。

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