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魔女と王女と、新幹線

王都・王城。

深紅の絨毯に、精霊灯の光が反射する静かな茶会室。


お嬢様が席に着くと、

真っ先に駆け寄ってきた小さな影があった。


「ま、魔女さまっ!!」


まだ幼い王女が、そのまま勢いよく

お嬢様の膝の上に――ぽすん。


「ちょ、ちょっと……王女、淑女としての所作が――」


国王が慌てるが、お嬢様は苦笑する。


「いいのよ。子どもの自由は、息をしているようなものだもの。」


王女は幸せそうにスリスリと膝の上で丸くなる。


しらゆきは昔なら

「その位置は私の……!」

と内心で荒れていたが。


今の彼女は柔らかく微笑みながら近づき――


お嬢様の右隣に椅子を引く。


「しらゆきは、妻としての正しい席に。」


「……ありがとうございます。」


自然と手が触れ合い、指が絡む。


王女はそれすら気づかず、ご機嫌だ。


──しかし話は甘いだけでは終わらない。


国王が重い話題を切り出した。


「今年、庶民の平均年収が金貨200枚を下回りました。」


空気が一瞬、引き締まる。


お嬢様は王女の頭を優しく撫でながらも

瞳は鋭く国王を見据えた。


「……昔、私が守った民。

 その子孫が困窮しているのね。」


「はい。上層貴族は肥大化し、

 庶民の税負担が大きすぎます。」


しらゆきが資料を卓上へ。


「まずは200枚回復を目標にしましょう。

 減税と、生産性向上策を同時に。」


「生産性向上策……?」


お嬢様は懐から一枚の図を広げた。


精霊術と魔導技術の線が複雑に絡むその設計図。


「これは……?」

国王が息を呑む。


お嬢様は微笑んだ。


「私の領・ルーベリアと王都を結ぶ高速輸送網――

 《魔導新幹線》よ。」


王女だけが純粋に目を輝かせる。


「しんかんせん?なにそれ!すごいの?」


「ええ、とても素敵なものよ。

 遠くの家族にもすぐ会えるようになるの。」


国王が震える声で問う。


「……これを、王国に?」


「もちろん。

 民の生活を変えるのは、贅沢な城ではないわ。

 届く道よ。」


しらゆきはその言葉を誇らしげに見つめる。


王女はお嬢様の胸へ顔を埋めて、安心したように笑った。


「魔女さま、だいすき。」


「……ありがとう。

 私も、民と――この国がだいすきよ。」


その言葉に、国王は深く頭を下げた。


「世界が再び、あなたに救われる日が来たのですね……!」


しらゆきは、静かに寄り添いながら確信する。


(この国を動かすのは――

 やっぱりお嬢様です。)


そして、


(私はその隣で、全てを支える妻。)


お嬢様と手を結ぶ指先に、

千年の愛が宿っていた。

※貨幣価値について

金貨1枚 = 約10,000円(現代日本円換算)

※あくまで読者の参考用

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