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千年越しの隣で

千年。

長い歴史が積み重なり、そのほとんどを彼女は見てきた。


かつて小さな城だった場所は、いまや巨大都市に変わり、

彼女が救った人々の子孫が、さらに新しい時代を築いている。


だが――

お嬢様の隣に立つ者は、あの頃と変わらない。


 


執務室。

天井まで届く書棚、魔導式の報告板。

外には、精霊灯がきらめく王都の朝。


セバスは淡々と報告を終える。


「以上が――本日の政務です、お嬢様。」


「ありがとう、セバス。」


お嬢様は疲れたように小さく息をつく。

あの頃と変わらぬ所作。

ただ、背負う時代が変わった。


「昔も今も、保守に縛られる貴族ばかりね。」


セバスは微かに眉を曇らせた。


「人の世は、千年あっても容易に進化できないものです。」


そこへ――

ずっと見守ってきた存在が、一歩近づく。


「お嬢様。もう大きな戦はありません。」


しらゆきの声は、

生まれてからずっと、お嬢様の傍にいた者にしか持ち得ない深みがあった。


「ですから――庶民を苦しめる税は、今こそ見直すべきです。」


お嬢様は窓外を見つめる。

千年前、共に笑った町は、今やどこまでも広がっていた。


「……そうね。国王と直接話しましょう。」


しらゆきがすっと紅茶を注ぐ。

その仕草ひとつに、千年分の愛情と習熟が宿る。


「貴方の言葉ひとつで、国家は震えます。

 ですが――」


しらゆきは紅茶を置き、お嬢様へ向き直る。


「長い間、私はずっと見てきました。

 人は、優しさだけでは変わらないのです。」


お嬢様は気づく。

その瞳の奥にある、鋭い光。


「強い御手で。

 でなければ、世界は変わりません。」


世界最強の魔女に、

ただ一人、真っ直ぐ言える存在。


「……ええ。

 必要なら、強く出るわ。」


しらゆきは微笑む。

その微笑みが、永遠の孤独を溶かしてきた。


「では、お嬢様。

 千年分の“恩返し”を始めましょう。」


お嬢様もまた、静かに笑い返した。


「――ええ。行きましょう。

 私たちの国を、守るために。」


 


永い愛は揺るがない。

永い誓いは薄れない。


むしろ――

時が積み重なるほど、強く、深く。


二人は今日も、同じ未来へ歩き出す。

紹介

セバスチャン(セバス)

お嬢様が政務をサボるために創造した、戦闘以外なら何でもできる完璧執事。

主命は「お嬢様を働かせすぎないこと」。

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