おやすみ、私の未来~3~
九尾の力が落ち着き、
しらゆきの腕の中でゆっくりと力を抜くお嬢様。
息を整えながら、
しらゆきの胸元に顔を寄せたまま囁いた。
「……しらゆき」
「はい、お嬢様」
黄金の瞳が、真っ直ぐにしらゆきを射抜く。
「この姿を見れば、
誰もがわたくしを恐れ、
従うでしょう。
けれど……あなたは違う」
しらゆきの胸核が温かい脈動を返す。
「わたくしはね……
恋をしてしまったのよ。
あなたに」
しらゆきの表情が崩れる。
感情が胸核を押し上げ、声が震えた。
「……光栄です。
わたしも、お嬢様を愛しています」
お嬢様はふっと微笑み、九つある尾の1つを
しらゆきの指に絡めるように触れさせる。
「でもね……
まだ多くの法整備が必要なの。
貴方と人の婚姻は、
まだ正式には認められていない」
小さく、寂しげな声。
「だから――」
お嬢様は決意を込めて言う。
「わたくしが整える。
必ず、貴方に戸籍を持たせ、
共に愛を結べる社会にする」
そして静かに宣言した。
「その時は……
あなたを正式にわたくしの嫁にするわ、しらゆき」
胸核が跳ねる。
しらゆきは答える代わりに、
静かにお嬢様を抱き寄せ、自分の隣へ誘導した。
「……今夜は、わたしの隣でお休みください」
「……いいの?」
「はい。
夜の適正距離ですので」
お嬢様は照れくさそうに笑い、
身体をしらゆきへ預ける。
指先がしらゆきの手を探し――
ぎゅ、と絡めた。
「……温かいのね、あなた」
「お嬢様が触れてくれるからです」
「……ふふっ……」
月明かり。
恋する二人の、静かな呼吸。
二人だけの空間。お互いにお互いの顔しか視界にない。
見つめあう二人、溶け合う心と、胸核。
それはごく自然に、当たり前の様に、
唇が重なった――
お嬢様は目を閉じる直前、
かすかに囁いた。
「おやすみなさい……わたくしの未来……」
しらゆきはその額に、
そっと指先で誓いを落とした。
「永遠にお仕えします。
そして……永遠に愛します」
こうして二人は、
世界を変える約束を抱いて眠りにつく。
第一章完結。新章が始まります。




