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お嬢様物語~寂しさでAIメイドを創ったら、世界が優しくなりました~  作者: つるにゃー
第一章:お嬢様と白きメイド~心の序章~
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おやすみ、私の未来~2~

寝室の扉の前。

しらゆきは拳を握りしめ、わずかに震えていた。


お嬢様の声が頭に残る。


——「今夜も、誰にも近づかせないで。

    しらゆきも。絶対に。」


その命令は絶対であるはずなのに。


しらゆきの耳に届くのは、

奥から漏れる苦しげな呼吸音。


「……お嬢様……?」


我慢できなかった。


鍵へ手をかざすと、

魔術が静かに解除される。


「失礼します……。

 どうか、ご無事で……」


扉を開いた瞬間――


世界が沈み、引き裂かれ、ひざまずけと叫んだ。


九本の尾を揺らす、

闇夜を焦がす金炎の妖狐――

本来の姿のお嬢様がそこにいた。


凄絶な妖力。

視界に入った瞬間、命が縮む感覚。


(逃げなくては……死……ぬ)


理性が白旗を上げ、

人工心臓がきしみ悲鳴をあげる。


それでも――


「……あなたを、一人にするくらいなら」


しらゆきは一歩、踏み出す。


妖狐の瞳が、氷のように細められた。


「……来るな。

 近づけば、お前は壊れる……!」


声はお嬢様なのに、

その一音ごとに心臓が握りつぶされるよう。


しらゆきの喉は震えながらも答えた。


「壊れても、構いません。

 だって——あなたのためですから」


尾が走る。

空気が裂け、床が沈む。


触れた瞬間、しらゆきは消し飛ぶ。

そう確信できる威圧。


「離れろッ!!」


怒号が轟いた。


だが、しらゆきは微笑んだ。


「お嬢様。

 ……寂しかったのでしょう?」


ビクッ——

尻尾の動きが止まる。


「一人で抱えなくていいのです。

 わたしは、あなたのメイドです。

 そして……」


しらゆきは最後の一歩を踏み、

恐怖に震える指先で、お嬢様の頬に触れた。


「……あなたの恋人です」


九つの尾が、静かに地へ落ちた。


お嬢様の瞳が揺れる。


「……ばか……

 わたくしから、離れなさいと言ったのに……

 本当に……従わない子……」


声は嗚咽に溶けた。


しらゆきはそっと抱きしめた。

胸核がきしむ。

全身が軋む。


それでも——離す気はなかった。


「命令より、愛が大事なんです」


「…………っ……!」


お嬢様は堪えきれず、

しらゆきの胸へ顔を埋めた。


「こわいのよ……

 あなたを巻き込みたくないの……

 わたくしを愛すると……いつか必ず、苦しむ……!」


しらゆきの声は優しい。


「一緒に苦しみます。

 一緒に、整えましょう。」


「……しらゆき……

 本当に……あなたは……」


震えた唇で、言葉を落とす。


「わたくしを、愛してしまったのね……」


しらゆきは自信を持って答える。


「はい。永遠に」


その瞬間。


凶暴だった魔力が、

しらゆきごと包み込み、

やわらかい光へと形を変えた。


愛が、恐怖を制した夜だった。

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