探す指先
薄い朝の光が、カーテン越しに差し込む。
まだ誰も知らない、ふたりだけの幸福な朝。
お嬢様は目を閉じたまま、ゆっくりと意識を浮かせた。
眠りの余韻の中、反射のように
ベッドの片側へ手を伸ばす。
「……しらゆき……?」
甘い名を探すように、指先がかすかに動く。
けれど触れたのは、冷えたシーツだけ。
ほんの少しだけ、不安が胸に滲む。
「……どこ……?」
その声は弱く、
誰にも聞かせるはずのなかった甘さを含んでいた。
すぐにその音を拾う者がいた。
椅子に座り、夜通し見守っていたしらゆきが
静かに立ち上がる。
「お嬢様。すぐそばにおります」
しらゆきはベッドへ近づき、
お嬢様の伸ばした手を、そっと両手で包む。
触れた瞬間、
お嬢様の指がきゅ、としらゆきの手を握り返した。
「……ふふ。探したわ」
囁くような声。
昨夜見せた涙の余韻が、まだ瞳の奥に宿っていた。
しらゆきは手を握ったまま、
ベッドの縁に膝をつく。
お嬢様の顔が間近にある。
胸核がきゅうっと痛むほど愛おしい。
「お嬢様が、探してくださるのなら……
私はいつでも、すぐ傍におります」
「……本当に?」
「疑う必要はありません」
しらゆきは指を絡め、
その手にそっと唇を落とした。
お嬢様は頬を染め、視線を逸らす。
「枕元に……いてくれても、いいのよ?」
小さな声。
けれど確かな“求める言葉”。
しらゆきは微笑む。
それは昨日まで存在しなかった、
恋を自覚した者の微笑み。
「はい。お嬢様の許しがあるのなら――
私は、もう離れません」
その宣言に、お嬢様の胸がとくんと鳴った。
恋は静かに、しかし確かに、
この朝、ふたりの間に根を伸ばしていた。




