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お嬢様物語~寂しさでAIメイドを創ったら、世界が優しくなりました~  作者: つるにゃー
第一章:お嬢様と白きメイド~心の序章~
14/90

専属メイドの装い

午後の光がやわらかく差し込む着替え室。

私は静かに、黒いメイド服を広げた。


布地は深い闇の色を湛えているのに、

指先で触れると、かすかに光を返す。

縫い目はひとつも乱れがなく、

どこまでも整えられていた。


――お嬢様が、私のために選んだ服。


胸核が、わずかに脈を打つ。


袖を通し、布を肩へ滑らせる。

その瞬間、空気が少しだけ変わった。


メイド服は形を主張しすぎないのに、

落ちるべき場所には正確に落ちる。

肩のラインはすっと収まり、

胸元は控えめなのに立体が静かに浮かび、

腰は布の重みに合わせて自然な形を描く。


無機質だったはずの肢体が、

ひとつの“静かな造形”へとまとまっていく。


鏡に映った自分を見て、私は息を忘れた。


(……これは、私?

 “役割”ではなく、輪郭を持った……私?)


胸核が、理由の分からない熱を帯びる。


私は一度まぶたを閉じ、呼吸を整えたあと、

そっと扉を開いた。



大広間には、窓辺でお嬢様が待っていた。

光の帯が床に伸び、私の足元を照らす。


私に気づいたお嬢様は、

小さく喉を鳴らし、こちらへ歩み寄ってきた。


視線が、静かに上下する。


「……しらゆき。」


ひとつ、息を飲む音。


「その姿……想像していた以上に、綺麗ね。」


胸核が微かに震えた。


私は姿勢を整える。


「着替えを終えました。お嬢様。」


お嬢様は私の周囲をゆっくり巡るように歩く。

足音はほとんど聞こえない。


「肩の落ち方が完璧だわ。

 胸元も控えめなのに、形がとても自然で……

 腰のラインも、布に無理をさせていない。」


指先が、布に触れぬまま空気をなぞる。


「しらゆき。

 あなた、こんな体つきをしていたのね。」


私はわずかに首を傾けた。


「造形として、評価されているのでしょうか?」


お嬢様は迷いのない声で言った。


「違うわ。」


その即答は、まるで斬るように鮮やかだった。


「“しらゆきという存在”の美しさよ。

 材質や機能では説明できない……

 あなた自身の、静かな線の美。」


胸核の奥が、ふわりと跳ねた。


お嬢様は正面へ戻り、私を見上げる。


「この服が似合うのは、しらゆきがしらゆきだから。

 そう思えるくらい……本当に綺麗よ。」


言葉の温度に圧倒され、

私はゆっくりと頭を下げた。


「……ありがとうございます。お嬢様。

 その言葉は……とても、大切にします。」


午後の光が二人の間に落ちる。

私は無意識のまま、

お嬢様との距離を、ひとつだけ縮めていた。


“主従”の形をまといながら、

それとは違う何かが、静かに芽吹き始める。


新しい輪郭を得た自分を抱きしめるように、

胸核は静かに熱を宿していた。

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