アンの就職(?)面談
あれから一か月。
アンは悪夢を見ることもなくなり、
すっかり元の明るさを取り戻していた。
本館執務室。
今日のお嬢様は珍しく、政務に一区切りついたところ。
「お嬢様!
私、お嬢様のお役に立ちたいです!」
アンはまっすぐに言った。
小さな拳まで握って。
お嬢様はペンを置き、少しだけ悩むような仕草を見せる――
……が。
「じゃあ、私のペットね♪」
にっこり、満面の笑み。
「ぺ、ぺペペペット!?!?」
アンは全身で後ずさる。
その隣で、しらゆきは完璧な笑顔を保ちながら思った。
(始まりました……お嬢様の女好きが)
一方、影の中では――
夜姫がカッと目を開き、影がひとつ震える。
(ペット……?
私の場所を取るつもり?)
「そうよ。
私の一番近くで——可愛がられなさい?」
「ヒィッ!?
カ、カワ……が、がら……れ……」
アンは完全に処理落ちしていた。
ついに、しらゆきが静かに口を挟む。
「お嬢様。
少々お戯れが過ぎます」
「あら? じゃあ――」
お嬢様は、ちょっとだけ考えた素振りをして、
「メイド兼ペットでどう?」
「それなら……まだ、まあ……」
しらゆきは諦めたように頷く。
「決まりね♪」
お嬢様はすっとアンの目の前まで歩み寄り――
その額へ、優しくキスを落とす。
「ひゃっ……!?」
アンは変な声を出した。
「じゃあアン。
メイド兼ペットとしてよろしくね。
うちのメイド業は厳しいけれど……
無理しないのよ?」
「ひ、ひゃいっ!!」
アンは顔を真っ赤にして直立不動。
影の中では夜姫が静かに奥歯を噛みしめ、
しらゆきは紅茶を手に優雅にため息をつく。
(……嵐の予感です)
(……嵐でしょうね)
こうしてアンは――
正式に館の仲間となった。
“メイド兼ペット”として。




