金貨二十三億枚の大革命
「鉄道。物流車両。都市再生。
この3つはバラバラでは意味がない。
3つ揃って初めて、未来が動く。
3本の矢──合計予算金額は金貨二十三億枚です」
一国の年間予算を三年分つぎ込む規模だ。
議場が爆ぜた。
罵声、怒号、机を叩く音。
「狂気の沙汰だ!!」
「財源が尽きる!破滅だ!」
女王レティシアは沈黙したまま。
ただ、その視線だけが鋭い。
そこで――
クレーロが立ち上がった。
書類をゆっくり閉じ、
怒鳴り散らす貴族たちを一望。
そして、静かに吐き捨てる。
「破滅だと?
……破滅しているのは、諸君の経済の知性ではないかな?」
「な、なんだと貴様!」
「馬車のままでは物流は鈍化。
鉄道は王国の動脈だ。
動脈を持たぬ国家は、
ただの死体だ。」
ざわ、と空気が変わる。
「想像してみたまえ。
物資が一晩で大陸横断する未来を。
労働者が自由に動き、
店は人で溢れ、
税収は桁違いに膨らむ。」
利益の匂いが貴族の瞳に宿り始める。
クレーロは一枚の書類を掲げた。
「融資は、強制ではない。
余力のある者だけで良い。
……ただし、
出資者は未来を買う権利を持つ。」
沈黙。
クレーロは追い打ちをかけた。
「諸君――
この革命に自分の名が刻まれないなど、
恥ずかしくはないのか?」
敵意が、
いつの間にか熱狂へと変わる。
「我が家門も出資を――!」
「鉄道駅の命名権はどこが取る!?」
「利益分配の条件は!?」
レティシアが立つ。
「採決を取ります。
本計画――可決。」
議場は歓声と雄叫びで満ちた。
ただひとり、クレーロだけは落ち着いていた。
(全ては――
お嬢様のための布石)
彼は知っている。
王国が動き始めたその起点に、
お嬢様銀行の影があることを。




