赤闇の香り74%
三日ぶりの帰還。
大扉が静かに開いた瞬間――
「お嬢様……!」
「しらゆき……!」
二人は、迷いもなく抱き合った。
セバスが静かに目を伏せるほどに、
強く、離れたくないと願う抱擁。
腕の力が、言葉以上に語る再会の熱。
しらゆきは、胸核が震えるほどに抱きしめ、
お嬢様はその背をぎゅっと掴む。
(……三日だけ、だったのに
どうしてこんなに長かったのかしら)
お嬢様が、しらゆきの首元に顔を埋める。
声にならない安堵が二人の間に満ちた。
その光景を見ていた夜姫――
(……そう、三日ぶり。
あの方が渇いていたのなら当然)
嫉妬はある。
でも今だけは、堪える。
ところが。
ふと、しらゆきが表情を変えた。
お嬢様の髪に顔を寄せ――
すん……
ひと呼吸。
「……お嬢様。
夜姫の匂いが、全身に染みついています」
静かな声。
だが刀より鋭い。
「すぐにお風呂です。
夜姫の痕跡はすべて洗い流します」
「はあああ!?」
夜姫、即反応。
「ちょ、ちょっと待ちなさいしらゆき!
それは言いがかりというものです!」
「言いがかりではありません。
分析結果、夜姫成分74%」
「数値化するな!!」
夜姫の赤闇が、一瞬ふっと揺れる。
地面に小さな影の亀裂が走りかけ――
お嬢様が二人を見比べ、くすりと笑った。
「喧嘩はしないで。
私は――ふたりに抱きしめられて幸せだもの」
しらゆきと夜姫、言葉を失う。
「だから、争わないで。
どちらも大事よ?」
お嬢様は夜姫の手を取り、しらゆきに微笑む。
「ねえ、しらゆき。
夜姫の匂いは――
私が幸せだった証よ?」
しらゆきの目が揺れる。
嫉妬と安心がせめぎあい、
夜姫は逆に顔が真っ赤になる。
(……夜姫成分、要監視……)
セバスが静かにメモを取った。




