独占夜姫、甘い夜へ
柔らかなベッドに並んで腰掛ける二人。
夜気に揺れるカーテンの向こう、
星々が静かに瞬いていた。
お嬢様の白い肩が、
月明かりに照らされて――美しい。
夜姫は手を伸ばす。
細い首筋へ、触れたか触れないかの距離で。
「……今日は私の夜でしょう?」
抑え込んだ熱が形になった声。
お嬢様は挑発するように微笑んだ。
「ええ。
しらゆきが嫉妬で狂いそうになるほどに――
私を愛してみせなさい」
ぱちり。
夜姫の胸の奥で、弾けた。
赤い衝動。
理性を焼き切る、独占欲。
(あぁ、いけない……)
思考より早く、腕が動いていた。
お嬢様の腰を、強く引き寄せる。
「……酷い方です」
震えた吐息。
怒りでも哀しみでもない。
ただ、欲。
「そんな言葉を与えられて――
どうして我慢などできるでしょう」
赤闇の瞳が、金色を映して揺らめく。
影が、二人の足元から絡みつく。
「お嬢様は……私のもの。
心も、身体も――
全部」
触れてはいけないはずの頬。
それでも、指が離れない。
「……私だけ、見てください」
祈りにも似た支配。
お嬢様は余裕を崩さず、静かに微笑む。
嵐を手の内に収めた女神の表情で。
「いいわ。
夜姫だけの私を――見せてあげる」
言葉が刃となり、蜜となる。
頬に触れる夜姫の手を取り、キスを落とす。
夜姫の胸が、破裂しそうに脈打つ。
「壊したくはないのです……
けれど、壊してしまいそう」
「壊せるものなら壊してみなさい?」
赤闇が完全に爆ぜた。
闇が甘く波立ち、
二人だけの夜が深く沈む。
この夜――
夜姫の独占欲は永遠の形となった。
それは愛。
同時に、狂気の始まり。




