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鍵を預かった女

 建国記念日の余韻がまだ街を包む頃。

 王宮から正式な召喚状が届いた。


 宛名は――

 セバスとしらゆき。


 内容は三つ。


・鉄道網拡張の国家議案

・魔導車カールに関する法整備

・王都再開発計画


 どれも、時代を動かす巨大案件だ。


「なるほど……避けられないわね」

しらゆきは書状を閉じ、控えめに息をついた。


「はい。これらは世界の血流を決める……お嬢様が望んだ未来でもあります」

セバスも真剣な眼差しで頷く。


 その横で――


「しらゆきが行くなら、私も行くわ」

お嬢様は当然のように言った。


「お嬢様が王宮に立てば、貴族たちは萎縮します。

 議論が止まってしまいます。どうか……堪えてください」


 セバスは深々と頭を下げた。


 お嬢様は少しむくれた表情で腕を組む。


「……つまらないこと言うのね。私はただ、しらゆきの隣にいたいだけよ?」


「お気持ちは痛いほど理解しております」

セバスは真面目な顔のまま続けた。

「ですが、今度ばかりは“裏の顔”ではなく、表の力に任せる時です」


 沈黙。

 しらゆきが一歩近づき、優しく手を取った。


「数日……すぐ戻ります。

 お嬢様のこと、夜姫に託します」


 夜姫が影から静かに姿を現す。

 あの金の瞳に、いつになく燃える光。


「お嬢様の世話は、任せてください」


「……いなくなるなんて、落ち着かないのだけれど」

お嬢様は小さく漏らす。


「甘えん坊ね、お嬢様」

しらゆきは微笑んで、指先でお嬢様の頬に触れた。

その指に、未練が宿る。


「……気をつけて」

短いけれど深い言葉。


「もちろんです。

 ――行きましょう、セバス」


 二人が転移魔術で王宮へ向かったあと。


 館には静寂が落ちた。


 そして――

 残されたのは、お嬢様と夜姫だけ。


「……静かね」

お嬢様の声はどこか寂しく響き、


「静かな時間こそ、甘える時間ですよ」

夜姫が妖艶に微笑む。


 数日、

 お嬢様は夜姫と二人きりだ。

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