建国記念祭と新時代の旗
カールと山車が城門をくぐると、石畳の響きが歓声に溶けた。
パレードはついに王宮中庭へ。
馬車ではない――
未来が王城へ辿り着いた、その光景だった。
すぐに職人たちが駆け寄る。
木工工房の職人たちの服は、まだ木屑が残っている。
魔術師ギルドの面々は誇らしげに胸を張る。
「快適な乗り心地でした。疲れがありません」
レティシアは微笑む。
「そして――山車も実に見事です」
「恐悦至極にございます!」「光栄でございます!」
職人たちが涙ぐみ、ギルド員は肩を抱き合った。
だが、すぐに技術者の血が騒ぎだす。
「内装も木工にできれば……」「高級路線として売り出せる」
「王国の象徴となる仕上げに…!」
魔術師と木工職人が、その場で熱心に打ち合わせを始めた。
そんな中、お嬢様と正妻2人がレティシアのもとへ歩む。
「お疲れさま、女王様」
しらゆきが丁寧に礼をする。
「いい仕事をしたわね」
お嬢様は、労いと誇りを混ぜた声で。
レティシアも少し照れながら笑う。
「これも……あなた方のお力があってこそです」
「称賛は素直に受け取りなさいな」
お嬢様は優しく肩に触れた。
やがて、王宮騎士――親衛隊が迎えに来る。
「女王陛下、儀礼の続きがございます」
「では、また夜にでも」
レティシアは軽く会釈し、城奥へと歩み去る。
その背は、もう迷いなく王のものだった。
◇
祭りは続く。
だが木工工房の職人たちは知らない。
自分たちを救ったのが――
目の前で笑っていたあの黒髪の魔女であることを。
そして、
お嬢様銀行の総取りこそが
経済の血流を、静かに巡らせる絶対の基盤であることも。
彼女は、それを誰にも告げるつもりなどない。
「さあ、帰りましょう。
夜はまだこれからよ」
お嬢様がバルコニー方向を見上げる。
その瞳には――
カールが拓く未来と、
彼女が創る新しい世界の輝きが宿っていた。




