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英雄行進――お嬢様を巡る静かな戦争

 太陽が石畳を照らし、王都が歓声を上げる。

 その中で――私はバルコニーの高みにいた。


 しらゆきが、当然のように寄り添ってくる。

 私の腰に腕を回し、頬を寄せる。


「本当に……綺麗ですね、お嬢様。

 カールと山車――きっとこの国の未来そのものです」


「ええ。

 私が大好きな、この国の未来よ」


 しらゆきは、ほんの少し得意げに笑った。

 私の頬に指を添えて、視線を奪う。


「未来よりも……今は、あなたを見ていますが」


 キスが落ちる寸前――


「……離れたまえ、第一婦人」


 影の底から刺すような低い声。


 夜姫だ。

 嫉妬の炎を抑えきれず、牙を隠そうともしていない。


「お嬢様を日焼けさせるなど……護衛失格だもの」

「わたしは日傘代わり……とでも?」


 影が伸び、私の足元に絡む。

 夜姫の気配が、ひたひたと滲む。


「……やれやれ。影が騒がしいですね」

しらゆきは肩をすくめ、私の手を取り直す。


「お嬢様は光。

 ならば影は美しく従うべきだと、私は思いますが?」


「光が強すぎれば影は深くなるものよ、しらゆき」


 夜姫が影から抜け出すように現れ、

 真っ黒なドレスの裾を揺らしながら近づいてくる。


「嫉妬してるの?」

私が問いかけると――


「当然です。

 お嬢様は、わたくしの全てですから」


「それは私も同じです」


 ふたりの視線が、私の肩越しで交差する。

 空気が、熱い。


(……ふふ)


 私はくいっと二人を引き寄せた。


「なら、喧嘩はパレードが終わってからにして。

 ――見たいでしょう?わたしの作った未来」


 しらゆきの手が震え、

 夜姫の睫毛が揺れる。


 その時――


 遠くから、雷精霊の脈動音が響いた。

 カールの姿が王道の向こうから現れる。


 胸が高鳴る。


「さあ――世界が私に追いつき始めるわ」


 私は二人と並び、欄干に手を添えた。

 王都の英雄行進を、笑みで迎えながら。

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