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世界が動いた瞬間

 その年の建国記念日――

 王都は史上例のない交通規制が敷かれていた。


 理由はただひとつ。

 “未来”が、公道を走るからだ。


 王都の中央大通り。

 沿道には何万人もの観客が押し寄せ、旗が波のように揺れる。

 ざわめきは期待に震え、まだ見ぬ瞬間を待っていた。


 そして――


「来たぞ……!」


 遠くの角を曲がって現れたのは、黒銀の魔導車。

〈カール〉――雷精霊の文様が淡く脈動し、静かに地を踏みしめる。


 その後ろには、圧巻の光景。

 カールの何倍もの大きさを誇る山車が連なり、

 まるで王国の歴史そのものが動き出したかのよう。


 黒檀の艶、精緻な彫刻――

 剣と王冠、創建の獅子。

 細部に宿る伝統の息吹は、観る者の心を掴んで離さなかった。


「すごい……あれが魔導車……?」

「山車が揺れない……魔法みたいだ」


 歓声が少しずつ広がり、

 やがて大通りを轟かせた。


 助手席の窓が静かに開く。


「皆さん――ごきげんよう!」


 手を振るのは、まだ若い女王。

 レティシア・アストラール三十四世。

 凛とした笑顔が観衆を照らし、声にならない感動が広がった。


 最先端の魔導車と、千年の技を刻む木工。

 ふたつの誇りが、今、同じ道を走っている。


 新旧が手を取り合った、その光景こそ――

 未来の到来の証だった。


(王国は、これから変わっていく)


 誰もが胸の内で確信した。


 技術革新の幕が、いま上がったのだ。

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