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匠たちの祈り
完成した山車は――
ただの工芸品ではなかった。
黒檀を基調に、王国の歴史を彫り込んだ豪奢な車体。
四方には王国の紋章と創建の神話を象徴する彫像。
そして中央には――
初代王の立像、瞳に雷光の魔石が淡く灯る。
老親方は、その姿を見上げ、目頭を拭った。
「……誇りに賭けて、最高の仕事をした」
だが興奮の中にも、緊張はあった。
「問題は――
カールと連結して動くか、だ」
工房の外へ慎重に搬出される山車。
魔術師ギルドから担当者が来て、
試験車カールⅠ型が待機していた。
担当者は頷き、作業員へ合図する。
「連結開始!」
金属の嚙み合わせが重く響き――
カチン、と音が鳴る。
風さえ止まったような沈黙。
「……頼むぞ」
カールがゆっくり前進を始めた。
山車は軋まず、揺れず、完璧に追従する。
「行ける……!」
若者が思わず声をあげると、
老親方は震える声で言った。
「まだだ。
王国の前を走るその瞬間まで、気を抜くな」
それでも、皆の胸に熱が灯った。
今、確かに未来を形にしている――と。




