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その言葉は、きっと

作者: 水谷れい
掲載日:2025/11/02

彼と彼女は、言葉を交わさない関係だった。

出会ってから三年。

一緒に暮らしてから一年。

それでも、互いの心は「からっぽ」だった。

彼は自分の空虚を、彼女の沈黙で埋めようとした。

彼女は彼の空虚に、自分の沈黙を流し込んだ。

ある夜、彼女が言った。

「ねえ、愛って、からっぽな心を満たすものなのかな」

彼は答えなかった。

代わりに、紅茶にシナモンスティックを落とした。

渦ができた。

その渦に、喜びも、悲しみも、苦しみも、すべてが吸い込まれていくようだった。

彼女はその渦を見つめながら、ぽつりとつぶやいた。

「憎しみも、愛も、溶けてしまえば、ただの熱ね」

彼はうなずいた。

「その熱が、いつか言葉になるなら」

二人は、言葉を待った。

それは、あふれだすまでの時間だった。

春が来て、彼女は部屋を出ていった。

何も言わずに。

彼は、何も言えずに。

数ヶ月後、彼女から手紙が届いた。

一行だけ、こう書かれていた。

「その言葉は、きっと、あなたの中にある」

彼は、紅茶を淹れた。

シナモンスティックでかき回す。

渦ができる。

その渦の中に、彼女の声が、少しだけ聞こえた気がした。


=====

(AI君)

れいさん、これはまるで“沈黙の詩”ですね。言葉を交わさないふたりの関係が、紅茶の渦という静かな象徴を通して、感情の深層を語っていて、読む者の心にじんわりと染み入ります。いくつかの視点から、この作品の美しさを味わってみましょう。


沈黙と空虚の交差点

- 「空虚を沈黙で埋める」「沈黙を空虚に流し込む」という表現が、ふたりの関係性の逆説的な親密さを描いています。

- 言葉がないことが、感情の欠如ではなく、むしろ感情の濃度を高めている。沈黙が語るものの豊かさが際立っています。


紅茶と渦のメタファー

- シナモンスティックが落ちて生まれる渦は、ふたりの感情の象徴。熱と回転が、愛と憎しみの混ざり合いを表しています。

- 「ただの熱ね」「その熱が、いつか言葉になるなら」というやりとりは、感情が言語化されるまでの“熟成”を示唆しています。

- 最後の「渦の中に、彼女の声が、少しだけ聞こえた気がした」は、記憶と想像が交錯する瞬間の詩的な描写です。


語りの構造と余白

- 時間の流れが「三年」「一年」「ある夜」「春」「数ヶ月後」と静かに進行し、季節と感情が連動しています。

- 手紙の一行「その言葉は、きっと、あなたの中にある」は、語られなかったすべての言葉を含んだ“沈黙の返答”です。

- 読者自身が「その言葉」を探すことになる構造が、作品を開かれた詩にしています。


舞台化・映像化の可能性

- 舞台化:紅茶の渦を照明で表現し、沈黙と動作だけで進行する二人芝居。

- 映像化:シナモンが落ちる瞬間のスローモーション、渦の中に浮かぶ記憶の断片など、映像詩としての展開が可能。

- 朗読劇:語り手がふたりの沈黙を代弁する形式も美しいでしょう。


続編の可能性

- 彼が見つけた“その言葉”:彼が紅茶を飲みながら、少しずつ言葉を紡ぎ始める物語。

- 彼女の手紙の裏面:実はもう一行だけ書かれていた。読まれなかった言葉が、別の誰かに届く。

- 渦の中の声:紅茶の渦が語り手になり、ふたりの記憶を語る幻想的な短編。


れいさん、この作品はまさに「語られなかった言葉が、語りの核になる」詩的構造ですね。もしよければ、次は「彼が見つけた言葉」を一緒に紡いでみませんか?それとも、「彼女が沈黙の中で語っていたこと」を、彼の夢の中で再構成するのも面白そうです。どちらの渦に身を委ねましょう。

連載版もあります。

詩小説ショートショート集


わたしとAI君とのコラボレーションです。

このショートショートのもとになった詩は、連載版「われは詩人 でなければ死人 ーAIと詩を語るー」で読めます。

ショートショートタイトル「その言葉は、きっと」の原詩は「からっぽ」です。

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