第4話 賢者の孫
「フランのクソ野郎‼」
通算2回目となる私の絶叫は、再び教室内に大きく響く。
「すごい試合だったわね……」
もはや誰も何もいうまいと、他のクラスメイトたちは口を閉ざす。
フランは私の方を一切見ようとしない。
「勝てばいいのよ! 勝てば!」
悪役が吐きそうなセリフだが勝利条件はフランに擦り傷一つでもつけたら勝ち。あの時、床に沈めて傷だらけにした時点で――勝利は確定していたが、それ以上にインパクトがあったのは最後の頬への平手打ちだった。
鮮やかな音が場内へと大きく響き渡り、本試合終了は私の勝ちだと告げることとなったのだ。
「歴史に残る試合だと思うわ、笑いで」
「あんなのが歴史に残らなくてもいいわ! 絶対イヤよ。学園全員が見ている中で胸を揉まれるなんて、ほんと最悪――……」
「お前な⁉ あれは事故だろ!」
フランは、さすがに聞き捨てならないといった表情で口を出す。
「だいたい、あんな場所からお前の方から俺の上に跨ってきたからだろうが! 悪いのはお前だ!」
「ま、跨って……⁉ ちょっと、なによ、そのいい方は⁉ 変ないい方しないで!」
「不可抗力だし、怪我した上に平手打ちで被害者は俺だろ!」
フランは頬も耳までも赤くながら、全くもって被害者の私に対しぎゃあぎゃあと騒ぎ立てていると学園の先生が到着し、ようやく私たちの騒ぎは終焉した。
ふと授業中にひっそりとフランに目をやると、胸元にピンバッジが一つ。
そう、そうだった。
「フラン、約束どおりピンバッジをちょうだい」
小声で私はフランに耳打ちをする。
眉をつりあげ、露骨に嫌悪の表情を浮かべると、ピンバッジを取り私の机の上に置いた。
「なんでそんなにピンバッジが欲しかったんだ」
「いったでしょ、賢者アレスのファンだって」
「本当にそれだけか?」
授業もあり、それ以上のフランの問いかけは無視した。
でもフランはかえって気になったのかもしれない、どうして、このピンバッジが欲しかったのか。
私の胸元にピンバッジを飾る。
もう無理かも、と本当に心が折れそうだったけど、これがあればもう少し学園生活を頑張ってみようと思う。
なんと私、無敗だったあのフランに勝ちました!なんて大手を振って歩けそう。
これなら就職も有利かもしれないし。
その時、椅子にかけていた形見のおんぼろローブが床へずり落ち、フランがそれを拾う。
フランは拾う時に名前が刺繍されたところへと視線を落とした。おじいちゃんの名前が金色に光る。
「フォレスティナ=アレス……?」
よくも悪くも授業中。
「お前……」
それはあまりにも小さく、フランの言葉は私以外には誰にも届かなかった。
「アレスの孫か……?」