表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹の巡り人  作者: 蔵人
第0章 ゴカ殲滅戦
28/84

0-28.紅怨の男

 星一つ見えない曇天の夜。

 古代人が眠る、闇が支配する石造りのクロイド遺構

 エンブラ兵たちは居住区跡地内で、一人のアウルカ人を追い込でいた。

 ライトで照らされた狭い通路で、銃声と怒号が飛び交う。


「そっちへ行ったぞ!」

「俺の方じゃねえ!」

「どこだ! 早すぎて……ひい!」


 片麻岩の美しい縞模様を、エンブラ兵の血しぶきが染める。

 クロイド遺構の居住区通路は狭く、一人の敵を追い込んだはずのエンブラ兵の方が、一人、また一人と切り殺されていた。


「いたぞ! 上だ! 壁の上だ!」


 屋根が落ち、ただの石壁となった外壁の上に、刀を握るグエンが立っていた。

 頬には火焔紋様が浮かび上がり、右手に握られた濡焔(ぬれほむら)は、蒼氷(そうひ)の如きクリアブルーの刃を持っていた。透き通った刀身からは、エンブラ兵の血を滴らせている。

 エンブラ兵が銃口を向けるよりも早くグエンは姿を消し、背後から、頭上から、時には銃弾を掻い潜り、兵士を次々と一刀のもとに切り伏せた。


 七十人を超えたあたりで、グエンは人数を数えるのをやめていた。

 グエンの頬に浮かぶ火焔紋様とその瞳は、闇夜に灯る小さな熾火のように燃え、闇に赤い光の尾を引いた。


「赤毛の入れ墨! ここだ! ……クソ! もういねえ!」


 仲間が殺された瞬間、エンブラ兵が火焔紋様の残光を見つける。

 すぐに声を上げるも、グエンは超人的な跳躍力で2m以上ある石壁を駆けあがり、別の兵士二人に襲い掛かっていた。

 兵士は頭上の物音を聞き、背にした壁を見上げた。


「ひっ! 人間の動きじゃねえ! なんで! あ」


 音もなく飛び降りたグエンの濡焔が、兵士の肩口からその体を両断する。


「貴様! よくも仲間を!」


 もう一人のエンブラ兵が、サーベルを引き抜きグエンに斬りかかった。

 エンブラ兵がグエンの頭部を狙い、サーベルを振り下ろす。

 対峙したグエンも同様に濡焔を振り下ろした。

 クリアブルーの刃が、サーベルの剣身を葦の葉を切り落とすように断ち、兵士ごと両断する。

 崩れ落ちるエンブラ兵を見下ろし、グエンは呟く。


「カガミはもういない……エンブラ兵は皆殺しだ……なあ、ユーゴ」


 空を流れる雲に切れ間が見え、月明かりがクロイド遺構を照らす。

 自身を照らされ、空を見上げたグエン。

 曇天は裂け、顔をのぞかせた星空から、色とりどりに輝く流星が降り注いでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ