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薔薇と茨  作者: 松村順
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序章

序章


 トランスジェンダーという言葉が広く知られるようになってから,それなりの年月が過ぎました。この間,当事者による手記や自伝的な作品もいくつか出版されています。わたしも当事者の一人として,それらの著書をいくつか読みました。それでつくづく思うのは,一口に「トランスジェンダー」と言っても人様々,十人十色だなあということ。当たり前と言えば,当たり前ですね。

 それらの著書に書かれていることのいくつかはわたしも共通して体験したけど,わたしが体験しなかったこと,体験せずに済んだこともたくさんあります。そこに述べられている意見のいくつかには共感するけど,共感しきれないものもある。

 それらの著書では様々な苦労,悩みが述べられています。トランスジェンダーあるいはより広くセクシュアル・マイノリティーとして,世間一般の規範から外れざるを得なかった人として,苦労や悩みが多いのは当たり前かもしれないけど,わたしは自分のこれまでの人生,当年とって69歳の歳月を振り返って,決して不幸だとは思っていません。全体として見ればかなり幸せな人生だったと思うし,ジェンダーやセクシュアリティーに係わる部分だけ取り出しても,それほど苦難の連続,(イバラ)の道だったとは思えません。確かに茨もあったけど薔薇(バラ)もたくさん咲いていた,そんな人生だとわたし自身は認識しています。

 わたしはどうして,多くのトランスジェンダー,セクシュアル・マイノリティーの人たちが直面せざるを得なかった苦労,困難を免れたのだろう? そんな問いを心に留めて,自分の人生を振り返ってみました。

 狭い意味でのジェンダーやセクシュアリティーに係ることだけでなく,人生のいろんな出来事,たとえば学校での出来事や仕事に関するエピソードもたくさん盛り込むことにしました。そうした理由は2つあります。

 まず,学校や社会での立ち位置は,その人がどんな不幸や幸福を経験するかに大きく影響するし,とりわけマイノリティーにとって,自分を取り巻く環境がどれほど寛容/偏狭であったかは,重大な問題です。

 もう一つの理由。ジェンダーやセクシュアリティーは人生という多面体の1つの側面です。重要な側面だけど,あくまで1つの側面です。だから,それだけを語るのはわたしの人生を間違って伝えることになる。そう思って,あくまで人生の一部として語ることにしました。


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