絵画に恋して
美大で学ぶしっかり者の女子大生・こはるは、絵に「技術はあるけど、気持ちが足りない」と評価され悩んでいた。
そんなある日、教授の紹介で不思議な研究者・久賀のもとでバイトをすることに。
彼が研究していたのは、なんと「絵画のモデルを現実世界に呼び出す」術式だった。
呆れるこはるの前に現れたのは、フェルメールの名画《牛乳を注ぐ女》から現れた少女。
久賀に“ミル”と呼ばれながら、朝食の準備までさせられている姿に、こはるは思わずツッコミを入れる。
最初は無口で控えめだったミルが、こはるの優しさに少しずつ心を開き、やがて語り始めた過去。
奉公、叶わぬ恋、押し殺してきた感情——絵の中に閉じ込められていた“想い”が、今、あふれ出す。
久賀の奇抜さに振り回されながらも、こはるの絵に少しずつ変化が訪れる。
それは、人の感情を見つめるという、新たな一歩だった。
絵画に恋をしてしまった、少し不思議で、温かい物語——
シリーズ第1弾、「牛乳を注ぐ女」編。