表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

第5話

〜回想終了〜

「よぉグリム!、朝っぱらから元気だな」

『男』がそんな挨拶をしていると周りにルカとムクウェネが近づいて、ルカは『男』の耳元で囁く。


「“例の女”が来たみたいだぞ」


ルカがそう言うと、『男』は先程挨拶した際に見せた爽やかな笑顔とは打って違った、ドス黒い笑みを見せた。




『男』には2年の月日で変わった大きく3点あった。まず一つは騎士デュースから定期的仕事を頼まれ、仕事場以外の外へ出る機会が出来た事だ。そこには手伝いとしてルカとムクウェネが同行した。

そして2つ目は……。


――「それでは、ハプルブク様から定期的にビールを頂けるという事でいいんですね?」


「ああ、もちろん体裁上はハプルブク様からの恩賞だから不定期なんだが、大体月に一回と見て構わんだろう」


「騎士デュース様、心より感謝します」


「いや、同じ民族同士、助け合わなくてはな」


――そのような訳で、奴隷達の仕事場では定期的にドワーフ宛のビールが運ばれていたのだ。それを『男』は〈洗脳〉スキルで自主的に(・・・・)ドワーフ達から貰い、それを騎士デュースから頼まれた仕事のため、外へ出る際に持っていき、町で売る。そのようにして、『男』とルカ、ムクウェネの3人は奴隷にしてこの世界では初めて『金銭』を得たのだ。

これで彼らは、自分たちで自由に使えるお金を得たことで単なる「所有物」だった「奴隷」から一歩抜け出し、自分達が何も買えない奴隷ではなく、『買いたい物は買えないが、それでもパン1つは買うことが出来る』、そんな


“貧乏奴隷”


へと成ったのだった。


そして3つ目は、スキルの成長であった。

〈魅了〉スキルはビールを売る際に『男』が奴隷の様な薄汚い格好をしても全くそれを気にしない程に『男』を好意的に感じるレベルに強化され、〈話術〉スキルはデュースに仕事を自分に斡旋させるよう仕向け、ハプルブクにビールを定期的に渡させるようデュースに頼ませる事を可能にした。

そして〈洗脳〉スキルは他の奴隷達に詳細な命令を出すことを可能にし、またその効果自体にも追加がなされていた…。


「おい、いきなり呼び出しておいて何だまだ仕事中だぞ、もうビールが届いたのか?」

ムクウェネが“ポーズとして”微かな怒りを見せ、そう尋ねる。ルカはその言葉に対して、

「いや、ビールが来たらまず最初に俺に報告するようにデュースの野郎の部下に頼んである、俺にまだその報告が届いて無いって事はビールの話とは違うってことだ」と答えた。


「ああ、ルカの言う通り、ビールの話じゃない。私のスキルの話だ。私の〈洗脳〉スキルが成長した」


「……何?」

ルカとムクウェネは一見ただ聞き返したように聞こえるが、内心、『男』の〈洗脳〉スキルという発言に恐怖していた。

彼ら2人は『男』から〈洗脳〉スキルの説明を聞いており、自分達が『男』を犯していたら他の奴隷と同じく『男』のコントロール下になることを知っていたのだ。『男』は彼らの内心に気づいていたが、気づかなかったフリをし、話を続けた。


「話が速くて助かる。簡単に言えば、私の〈洗脳〉スキルの効果は自分が性交渉をした相手だけでなく、“性交渉をした相手が性交渉をした相手”を今は一人ではあるが操れる様になった」


『男』が淡々とそう言った瞬間、自分達が操られる心配は無いと知ったルカとムクウェネは緊張の糸が切れた様に笑う。


「おいおい、そりゃねえぜ。お前のスキルがその様に進化したとして、お前がヤッた相手は男もイケるロリコンのクソ奴隷商人とドワーフのチビどもと俺等の弟分だけじゃねえか、アイツラが貴族のバカ女をヤッたり、逆にクソ貴族やプライドの高い騎士に掘られたりでもしてその“やんごとなき”ご身分の方々でも操れるようにでもなったのかい?俺たちを馬鹿にすんのも大概にしろよ、グリムの方が余程マシなジョークを言えるぜ」とルカが言うと、『男』は待ってましたと言わんばかりの顔でこう言った。


「そのまさかだ。昔、奴隷商人が犯した女の奴隷に一人、バイエロン侯爵の愛妾となった人がいる」と。




騎士デュースが(うやうや)しくお辞儀をする。


「ミシェル様、わざわざこの様な辺鄙な場所にお越しいただき、恐悦至極でございます。して、どの様な御要件でこちらにいらしたんでしょうか」


「まぁ辺鄙な所なんて、このストーン家領の鉱山からどんな鉱石が採掘されるのか、デュースさんはご存知なくて?、私たちが身につける宝石のアクセサリーのおよそ7割はここが産地なんですわよ」

バイエロン侯爵の愛妾、“ミシェル”はデュースが言った『辺鄙な場所』という言葉の否定をするのと同時に自分がここに来た目的は鉱山である事も話した。この様な返しが出来る頭の切れる所も、侯爵に見初められた所以(ゆえん)の一つあっただろう、そんな事を心の中で思いながらデュースはミシェルが欲しがっているであろう答えを返す。


「では宝石加工の工場と発掘場所の鉱山の近くまで行ってみましょうか?」







「おい、『男』、例の女が来たみたいだぞ」ルカが『男』に耳打ちし、そして『男』はニヤリと笑った。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ