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番外編 護衛は見た

なんと200万PV突破!

ありがとうございます!!

お礼に、平和なハッピーエンドの番外編を追加します。

本編が陰謀、政変、というような話だったので、その後のメルデア王国です。

ヘルフリート・フォン・メルデアが即位してから3度目の春が来た。

その日は、王都では春祭りがおこなわていた。


街娘に扮したエヴァンジェリンと、商人に扮したヘルフリートがお忍びで街に出ていた。

本人達はごまかしているつもりでも、王家も公爵家も代々の政略結婚で美しい子孫が生まれている。

ヘルフリートとエヴァンジェリンもそうだ。

町人に成りきれない、すぐに貴族のお忍びとバレたが、王と王妃の顔など市民は分からない。

市民にとって王家は、記念式典の時に王宮のバルコニーで姿を遠目に見る程度なのだ。

どこかの貴族のお忍びだと思われていたが、街ではよくあることで誰も指摘する者などいない。


エヴァンジェリンと12歳の差があるヘルフリートが連れ立って歩いても、ちゃんと年の離れた夫婦に見える。そこはかとなく甘い雰囲気があるからだ。

エヴァンジェリンは乳母に預けて来た王子が気になるが、ヘルフリートはエヴァンジェリンとお出かけで舞い上がっている。

この為に、ケーリッヒに嫌みを言われながらも、執務を前倒しに処理して時間を作ったのだ。


短い婚約期間は、内乱ともいえる王位簒奪の期間だった。

結婚しても内政改革、外交折衝と休む間もなかった。

そして、エヴァンジェリンの妊娠、出産。

喜ばしいことだが、ゆとりある時間はなかった。

市民に人気のあったアナクレト王を弑したヘルフリートには危険が大きかった。

それも国が安定し生活が豊かになってくると、ヘルフリートの支持が増え、安全に視察に出る事も可能になった。


そして、やっと、初デートにこぎつけたのだ。


二人きりのお出かけ。

隠れて護衛は付いて来るが、それは考慮にいれないことにした。


紋章のない馬車で王宮から出た時から、ヘルフリートの賛辞が止まらない。

エヴァンジェリンの街娘姿に、可愛いの連発である。

仕事で発揮する才能も、エヴァンジェリンの前では、可愛いを繰り返すだけの貧相な語彙だ。

ハッキリ言って、ポンコツである。


「あれを食べるか?」

屋台を指さしてヘルフリートが言うが、エヴァンジェリンは食べたことがない。

エヴァンジェリンは深窓の令嬢で経験がないのだが、ヘルフリートは潔癖症であった為に、屋台など行くことはなかった。

それでも手を繫いで歩くだけで、世界は素晴らしい、と思えてくる。


「ええ、とても美味しそうだわ」

エヴァンジェリンが言えば、ヘルフリートは直ぐに肉を刺した串を注文する。


屋台の店主も、いわくありそうなお貴族様だな、と思いはしても追及などしない。

「美しいお嬢様ですね」

と串を渡しながら言えば、エヴァンジェリンよりもヘルフリートが嬉しそうに、妻だ、と言う。

「奥様でしたか、あまりにお綺麗なので」

「釣りは要らない、取っておけ」

ヘルフリートは串を受け取ると、エヴァンジェリンを連れて歩き出した。


ケーリッヒがいれば、『陛下、カモられてますよ』と嫌みを言いそうだが、影から護衛している騎士達は静かに見守っている。


エヴァンジェリンは串を一口かじると、ヘルフリートに差し出した。

「美味しいですわ。ヘルフリート様も召し上がってくださいな」

露店の得体のしれない肉、他人がかじった串、以前の潔癖症なら絶対に口にれなかったろう。

だが、国境の砦に行った時に、得体の知れない肉も食べた。

他人ではなく、エヴァンジェリンと分け合うのだ。

ヘルフリートは躊躇うことなく、串にかじりつく。

「美味いな」

王宮で食べる肉の方が、質が良く、手の込んだ料理で美味しいはずだが、エヴァンジェリンとのデートという調味料がかかっている。


次は、予約してあるカフェに行こうと、エヴァンジェリンの手をひく。

「この先に、人気のカフェがあるらしい」

「まぁ、楽しみですね」

下調べと予約をしたリュシアンから、お勧めのスイーツも聞いてある。

「今の季節はイチゴのケーキが美味しいと聞いたよ」


そのカフェは、ケーリッヒが勧めたのだ。

エヴァンジェリンが、ミッシェルとロミリアの浮気現場に遭遇したカフェである。

エヴァンジェリンは店の近くまで来て気が付いたが、何も知らない振りをする。

あの嫌な思い出は、今日、上書きするのだ。

あれから、人も街も変わった。


ミッシェルは、決闘の傷が元で亡くなった。

ミッシェルの子供を妊娠していると言っていたロミリアは、エヴァンジェリンが知らないうちにいなくなっていた。


今は、エヴァンジェリンを大事にしてくれる人と一緒にいるのだ。

エヴァンジェリンは、サーブされたお茶を一口飲むと、ヘルフリートに微笑んだ。

「ヘルフリート様、私、幸せです」

「私こそ、エヴァンジェリンのおかげで世界一幸せだ」

ヘルフリートはエヴァンジェリンの手を握って、幸せをかみしめる。


後ろの席には、シェレス宰相から逐一報告するよう指示を受けている護衛達が待機している。



後で、その報告を受けたケーリッヒは、エヴァンジェリンとのデートをちらつかせれば、ヘルフリートをもっと働かせられるな、とほくそ笑むのだった。


感想や評価、PV、すごく励みになっております。

読んでくださって、ありがとうございます!

violet


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