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それぞれの思惑

王宮から帰って来たケーリッヒは、図書室に直行する。そこには、モーゼフに護衛されたリュシアンがいる。公爵家で部屋を与えられたモーゼフとネバエは、昼夜交代でリュシアンについているのだ。

「お帰りなさい、ケーリッヒ様」

ケーリッヒに気づいたリュシアンが、読んでいた本を置いて立ち上がる。

背中の傷は治療を受けてはいるものの、殺す気で付けられた傷は深く、その後も無理して馬を駆けたせいで治るまで時間がかかる。

安静が必要なのだが、リュシアンはベッドを抜け出して図書室に来るのだ。


「ゲオパルド卿、夕飯は?」

ケーリッヒは、リュシアンではなくモーゼフに確認する。

「いいえ、まだです」

本に熱中するあまり、また夕飯を食べていないらしい。


「リュシアン、傷を治すのが最優先だ。食事に行こう」

ケーリッヒが促せば、リュシアンが食堂までついてくる。

リュシアンが読書に飢えていた、というのはシェレス公爵家で暮らすようになってすぐに分かった。

ケーリッヒは、リュシアンが食事も忘れて本を読んでいるのでは、という心配から早く帰るようになった。

決行まで後少し、リュシアンも完治しなくとも同行するのは、間違いないのだ。



そんな中、王家主催の舞踏会の招待状が届いた。

エヴァンジェリンとオフィーリアは、ドレスの準備に慌ただしいが、ケーリッヒとヘルフリートは別の意味で慌ただしい。

舞踏会の前日が、クーデターの予定だからだ。

武力を持って、王に王位譲渡を迫るが、聞き入れなかった場合は、最終手段を使うことになる。


軍隊も上級士官だけの反乱となる。

慎重にシミュレーションを繰り返し、人選、配置と何度も変更して、最短で王の執務室に踏み込めるように策をねる。

王を守る護衛の確認、王妃の動向。

探るべきものも、たくさんある。




その日、陽が昇ると人々が動き出した。

貴族達が、王宮に集結する。

軍を掌握する者、ヘルフリートに付き従う者。


宰相と軍司令官がいる部屋には、ひっきりなしに連絡が届けられる。

ヘルフリートはケーリッヒ達と共に、王の執務室に向かっていた。

王宮の騒ぎは、すでに王に届いているはずだ。


ヘルフリートが王の執務室に着くと、部屋の前で警備に当たる近衛の二人が、扉を開けようとする者と守ろうとする者で争いだした。

近衛は貴族だけで構成されているが、全てがヘルフリート側ではない。


「ヘルフリート殿下こそが王たる者、抵抗する者は斬る」

ケーリッヒが、扉を守ろうとする騎士に警告を入れるが、それでも騎士は王を守って扉を開けようとしなかったので、ケーリッヒが斬りつける。

リュシアンがトビラに手をかけ開くと、ケーリッヒが露払いとなりヘルフリート達が部屋に入る。


そこには、手に剣を持った王がいた。

「随分騒々しいな、ヘルフリート」


「兄上、どうか王位を譲渡してください」

ヘルフリートは、無駄と分かっていても、そう言わずにいられない。

何年も王補佐として、兄王と共にしたのだ。


「軍を簡単に配下に出来ると思うな。

私が何もしないと思っていたのか」

アナクレトは剣を構えて、焦ってはいない。

高位貴族達が軍を掌握しきれなかった場合、返り討ちに遭うのはヘルフリート達なのだ。

すぐに、王を守りに軍隊が来るはずだ、とアナクレトは確信している。


「陛下」

前に出たのはケーリッヒだ。

「我らが、兵士を抑えられないとお思いか。

準備に30年かけている」

それは、アナクレトが4歳、ヘルフリートが生まれる前からだ。

ヘルフリートもそれは初めて聞く事だが、動揺するわけにはいかない。


ケーリッヒの踏み込みと同時に、王の執務室で乱闘が始まった。


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