表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/68

王の立場

ブラウリオが、アナクレトにお茶を淹れていた。

王の執務室は、昨日のヘルフリートの決闘から緊張が高まっていた。

バカにしていた。

その言葉が正しいかもしれない。

ブラウリオにとってヘルフリートは、血筋では優位でありながら、小心者であった。

争いを嫌い、神経質で脅威にならない弟だった。

王位を望む兄、王位を望まない弟、それでうまくやっているはずだった。


昨日の決闘で、ヘルフリートは相手を殺すことを厭っていなかった。

手袋も着用せず、血に汚れるのも気にしていなかった。

宰相の後任になる為に、王補佐から外れたのは口実だろう。護衛に宰相の息子が就いている。高位貴族達がヘルフリートを取り込んだという事だ。

あれは別人と考えた方がいい。

シェレス公爵令嬢を王妃にして、貴族達を分割しようとしたが、手遅れだったな。

「ブラウリオ、イメルダはシェレス公爵令嬢を亡き者に出来ると思うか?」

面白そうにアナクレトが尋ねる。


「すでにお分かりになっているのでしょう?」

ブラウリオも面白そうに答える。

「側室の方々を排除したようには、シェレス公爵はいかないでしょう。王妃様では歯が立ちません」


「役に立たないな」

お茶を飲みながら、他人事のようにアナクレトは言う。

「アイツが王になっても、貴族達が思うようにはレクーツナは動くまい。レクーツナは進軍してくるだろう」

我が国とレクーツナ王国の間には、大きな溝がある。

父は私を王太子と任命し、ヘルフリートが生まれても(ひるがえ)しはしなかった。それが全てだ。

そして、ヘルフリートの存在が全ての争いの元だ。

厄介者(やっかいもの)めが。


「シェレス公爵家に侵入した者達は失敗したんだったな。

攫われそうになって、不安になった令嬢が婚約者に危害を加えて自殺する。それで、いいんじゃないか」

ヘルフリートとエヴァンジェリンを殺せと、アナクレトは指示する。

「昨日の決闘は傑作だったな。政略の婚約者を庇うヘルフリートに、貴族達は喜んだろう。我らが王と陶酔するがいい」

 

「陛下、第1部隊は軍司令官配下にあります。第3部隊を使います。

軍の大半は平民や下級士官だということを、思い知らせてやりましょう」

ブラウリオの目は笑っている。それだけの自信があるのだ。

「陛下が王位に就いて何年も、お側に居られた王弟殿下が御存知ないはずもあるまいし。

軍も事務局も、実働隊はすでに陛下が掌握しているということを」

司令官が命令を出しても、実行する兵士は王の命令を優先するということだ。



「婚約祝いに、王宮での舞踏会に二人を招待しよう」

そうすれば二人が揃う、とアナクレトが不慮の事故のセッティングを考える。

「わかりました、直ぐに手配します。

我々には、王弟殿下は必要ではありませんでした」

最初から、との言葉は出さずにブラウリオは執務室から出て行く。

王弟を側に置いて監視することで、十分な時間は取れましたから。


「そう言うな、あの弟も優秀なのだ」

そして正当な血筋の王子。

ブラウリオは部屋にいなかったが、他の事務官達にアナクレトは言う。

アナクレトは優秀であったが、カリスマ性も強い後ろ盾もなかった。だが、優秀な人材を育てることに秀でていた。

アナクレトの周りには、才能がありながら身分が低い為に端役であった者が集められ、重用された。

国は王一人で成り立つのではない、それをアナクレトは実践している。


急激な改革は、高位貴族の排除に繋がり、反感を買っているのも事実である。

そして、国内に高位貴族の反意、レクーツナを始めとした周辺諸国との摩擦も生んでいる。

高位貴族には有能な人物が多い、というのも事実なのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ