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騒乱の始動

ヘルフリートとケーリッヒは、3日遅れて王都に到着する身代わりの隊に合流する。

早朝の内にシェレス公爵家を密かに出て行く二人を、エヴァンジェリンは見送った。

出発する二人を、エヴァンジェリンは玄関で待っていた。

「いってらっしゃいませ」

ただ一言だったが、エヴァンジェリンの心がこもった言葉だ。

ケーリッヒは片手をあげ、ヘルフリートは笑顔を見せた、それだけで十分だった。




ヘルフリートは、王宮に着くと王の執務室に向かった。

国境の視察の報告をする為である。


コンコン、扉をノックすればすぐに開かれた。

隊が戻った連絡は来ていたのだろう、アナクレトが待っていた。

「兄上、ただいま戻りました」

王弟としての礼を取り、ヘルフリートが前に進み出て報告をする。

砦で部隊長がヘルフリートの暗殺に失敗し、処理されたことは連絡を受けているのだろうが、ヘルフリートもアナレクトもそれには触れない。


エヴァンジェリンを誘拐しようとした厩番の男は、自白することなく息を引き取った。

それこそ、黒幕が簡単に自白して裏切れる相手ではない、と言っている。

王妃は、エヴァンジェリンを殺そうとした。

殺そうとせず、誘拐するのは別の人間だろう。

報告を終えたヘルフリートが、アナレクトを見る。

兄上、貴方の補佐でいい、と思ってました。

レクーツナとの開戦が身近にせまり、エヴァンジェリンに危害があるのでは、そのままではいられません。


王の側近のブラウリオが横に立つのと同時に、ヘルフリートが下がる。

そのまま、軍夫牢に収容されているミッシェルの様子を見に行こうと執務室を出ると、外で待機していたケーリッヒが護衛に付く。

「殿下、どちらに?」

「ミッシェル・ビスクスの様子はどうだ?」

「エヴァンジェリンに再婚約を申し込みに行った、の一点張りです」

そうか、とヘルフリートは足を止めない。

「自分で裏切ったくせに、それが許されると思うところが理解できん」

ケーリッヒも同感である。


できれば、無血で王位交代をしたい。

そうでなかったら、アナレクト王とイメルダ王妃の間に生まれた王太子も処理しなければならない。

まだ12歳だというのに。



牢に着くと、担当の騎士に尋ねる。

「どうだ?」

「すぐに裏を話しましたよ」

最後まで黙秘をした厩番とは大違いである。

これで王妃との繋がりが出ればいいのだが、王妃の事は何も話さない、と言う。


ケーリッヒにとってミッシェルは、妹を裏切った男。ヘルフリートにとってミッシェルは、エヴァンジェリンの婚約者でありながら、夜会にはエスコートしてもそのまま放置する男。


ドン、とヘルフリートがミッシェルの前の椅子に座り、ケーリッヒが後ろに立つ。

「王弟殿下?」

やつれたミッシェルがヘルフリートの姿をいぶかし気に確認する。


「私の婚約者に、もう一度婚約しろと迫ったようだが?」


え、とミッシェルが驚いて、目を見開く。

「殿下? あんな冴えない女を?

公爵令嬢とは言っても、爵位を継ぐわけでもなく持参金だけですよ。

殿下には必要ないでしょう」


ヘルフリートは手袋を脱いで、机に叩きつける。

「婚約者の名誉をかけて、決闘を申し込む」

ヘルフリートは、側にいる警備の騎士に確認する。

「ミッシェル・ビスクスの言葉を聞いていたな?」

騎士が頷くのを見て、ヘルフリートは立ち上がった。

この男は王妃に踊らされていただけで、大した情報を持っていまい。

エヴァンジェリンを貶す男は、地獄を見るがいい。


婚約を迫って、公爵領に侵入したのは罪だが、貴族を私刑には出来ない。

だが、決闘なら。


「違う。僕は違うんだ!」

後ろでミッシェルが叫ぶが、ヘルフリートは振り返りもせず牢を出て行き、ケーリッヒが後を追う。


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