表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/68

王妃の怒り

「モーガンを呼びなさい!」

イメルダが侍女に手に持っていた紅茶のカップを投げつけた。


ガッチャン!

派手な音を立ててカップが割れた。

「王妃陛下、モーガン様は戻って来ておりません」

紅茶のかかった侍女を隠しながら、バトラーの一人が答える。


「そんなバカな」

モーガンが失敗したのは知っているが、逃げ切れてないとは思ってなかった。

モーガンは、騎士としても鍛えているのだ。

「エヴァンジェリン・シェレス、小娘と(あなど)った」

シェレス公爵子息と王弟が、駆けつけて来たと聞いた。王が興味を持ったという意味が分かった。

だが、王が王妃を差し替えようとしているのは、間違っていない。


この茶会でモーガンが、エヴァンジェリンを落とす予定だった。

馬車の襲撃は、あくまでも念の為に用意していたのだ。

どちらも失敗して、モーガンは連れ去られた。



イメルダは侍女達を下げると、ナシエフという名の男を呼んだ。

「モーガンは秘密を知りすぎている」

ナシエフはイメルダの子飼いの影だ。

エヴァンジェリンの馬車を襲撃し、馬に矢を射ったのもナシエフだ。


「王妃陛下、モーガンはシェレス公爵邸に連れていかれたようです」

「軍ではなくって?」

フーン、と面白そうにイメルダが笑みを浮かべる。


それは誰を恐れてのことか。

「公爵邸の警備を確認してきます」

「これを持って行きなさい」

イメルダが渡したのは、小さな小瓶。

ナシエフが消えたベランダを、イメルダは見ていた。


公爵家に生まれたと言うだけで、あんな娘が大事にされる。

死んでしまえばいい。




翌日も王妃の茶会が開かれていた。

若い令嬢達が招待され、バトラー達が接待する。

そこでは、王妃は頂点におり、誰もが王妃の顔色を窺う。


「ミッシェル・ビスクス様でしょう?

シェレス公爵家の近くでお見かけしましたわ」

「婚約が無くなったとお聞きしてましたのに」

気になる話をしている令嬢達に、イメルダが近づく。

「ビスクス伯爵令息は、見目麗しいわよね」

王妃に声をかけられて、驚いた令嬢達がビクンとする。


「ええ、そうなんですの。王妃様も思われますよね」

イメルダが思わせぶりに相槌をうつと、令嬢は話を続ける。

「シェレス公爵令嬢は、ミッシェル様にいつも従っていらっしゃったので、婚約を解消されるとは思いもしませんでしたの。

シェレス公爵令嬢はおとなしい方で、ミッシェル様の不満とか聞いたことがありませんでしたわ。

ミッシェル様の方が婚約に不満そうでしたもの」

「まぁ、それでは皆さんの為にも、フリーになったビスクス伯爵子息を今度呼びましょうね」

イメルダがにっこり笑えば、令嬢達も嬉しそうに頷く。


イメルダのエヴァンジェリンの印象も令嬢達と同じものだった。

先日のお茶会に来たエヴァンジェリンが変わっていたのだ。

ミッシェル・ビスクス、使えるかもしれない。



王妃が離れて行くのを見送って、令嬢達が席を立つ。

お互い顔を見合わせて、帰り支度を始めた。


それは、シェレス公爵邸にある名簿に載っている家の娘達だ。

父親から、王妃に聞こえるようにミッシェルを褒める、という指示を受けていたのだ。


シェレス公爵は、ミッシェルと王妃をまとめて排除しようとしていた。



戦いはすでに始まっている。


他作品の番外編の準備で、こちらの投稿が遅れており申し訳ありません。

こちらも完結までがんばりますので、よろしくお願いします。

violet

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ