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踏み出した一歩

「お前の言っていることはワガママだ。

剣技があるわけでも、知略に長けているわけでも、政治に精通しているわけでもない。

自分を守る力など何もないくせに、知りたいだと?」

ケーリッヒはエヴァンジェリンの正面に座っている。

公爵は何も言わずに、ケーリッヒに任せているが、エヴァンジェリンを見つめたままだ。

ヘルフリートは、今にもエヴァンジェリンを抱き上げて部屋の外に出しそうな雰囲気だ。


怒られている。

違う、心配されているんだ。

今までも、そうだったのかもしれない。

家族は私に関心がない、と思い込んでいたから、自分から接しようとしなかった。

私、少しは変われたのかな?

クスッ、と笑いがこみあげてくる。


「エヴァンジェリン!

聞いているのか!? お前は馬車の中で身体を打ったんだ、休養が・・」

ガシッ、エヴァンジェリンがケーリッヒに抱きついた。

子供の頃だって、こんなことされたことない。

「心配してくれてありがとう、お兄様」

心配されているってことが、とても嬉しい。


「うわっ」

ケーリッヒがエヴァンジェリンを引き離そうとし、ヘルフリートも二人を引き離しにかかる。

「エヴァンジェリン嬢、いけません。婚約者は私です」

ヘルフリートがエヴァンジェリンを抱き上げ、扉に手をかける。

「エヴァンジェリン嬢を部屋で休ませてきます」


「殿下、お願いします」

公爵が立ちあがると、ヘルフリートは、すぐに戻ってきます、と答える。

「エヴァンジェリン、もっとワガママになっていいんだ。

それと、もう子供じゃないんだから、抱きつくのはやめろ」

迷惑だとは言わないケーリッヒは、照れているようだ。





兄は怒ってなかった、怒っているのは王弟殿下みたい。

エヴァンジェリンはベッドに降ろされたが、ベッドヘッドに追い詰められている。

ベッドヘッドに手をかけて、ヘルフリートがエヴァンジェリンを見下しているのだ。

「殿下?」

エヴァンジェリンが上目遣いでヘルフリートを見上げれば、フイと視線を背けられる。

「ずっと、貴女の婚約者という男に嫉妬してきた。

今度は兄に嫉妬させるのですか?」


うわぁ、可愛い。

12歳も上なのに、愛されているってこういうことなのね。

エヴァンジェリンがそっとヘルフリートの頬に手を添える。

「心配させて、ごめんなさい」

エヴァンジェリンの手は、ヘルフリートの頬から首に周り抱きつくように首の後ろで両手が交差する。私って、こんな大胆な事もできるのね。


ヘルフリートの手がエヴァンジェリンを抱きしめる。

「天使の貴女よりも、人間の貴女の方が素敵だ。

知りたい事は教えましょう。

だが、今回の犯人と思われる人物は巧妙で、確実な証拠を残したことがないんです。

犯人がエヴァンジェリン嬢を諦めない限り、とても危険なのです。

ケーリッヒはそれを危惧しているのです。私もです」


「分かりました、少し休みます。

体調が回復したら教えてください。分からずに怖がるのはイヤなんです。

アネットの事も心配だし」

エヴァンジェリンはヘルフリートから離れると、ベッドに潜り込む。

「おやすみなさい」


「ああ、おやすみなさい」

ヘルフリートは後をメイドに任せると、先ほどの部屋に戻る。



「私は、王補佐の辞任を予定より早める」

ヘルフリートの考えに公爵も賛成する。

「娘に強硬手段に出たということは、殿下はもっと危険でしょう」

王宮自体が危険な所なのだ。

「早急に貴族会を密かに開催します。殿下もご臨席ください」

それは、王位簒奪の集会であると言っているのだ。


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