表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/68

救出、そして覚悟

側には、馬の下敷きになった護衛と御者が、血だらけで倒れているが、意識はあるようだった。

ヘルフリートとケーリッヒが横倒しになった馬車の扉に手をかけると、扉は軋んだ音を立てて開く。

「エヴァンジェリン!」


「アネット、アネット」

侍女の身体を抱いて泣いているエヴァンジェリンが、ヘルフリートとケーリッヒに気が付いた。

「助けて、アネットが私を庇ってケガをしているの、血が止まらない」

エヴァンジェリンはハンカチでアネットの額を押さえているが、血で真っ赤になっている。


ヘルフリートがエヴァンジェリンを、ケーリッヒがアネットを抱き上げて馬車を出る。

アネットは額から血を流し、頭を打っている為に気を失っていた。

外では、ヘルフリートの護衛達がエヴァンジェリンの護衛と御者を助け出していた。

馬の暴走を止めようとして、護衛は大ケガを負っているようだった。


エヴァンジェリンはその様子を見ていた。

侍女はエヴァンジェリンを庇って、護衛はエヴァンジェリンを守ってケガを負った。

「私が狙われたのですね?」

「その話は、公爵邸に戻ってからだ」

ヘルフリートは、これでエヴァンジェリンが恐がって、婚約を解消するのではないかと思っている。

「ええ、なによりアネット達を医者に診せなければ」


恐い、それを感じる。

けれど、それよりも怒りが沸き上がってくる。

もう逃げない。




「エヴァンジェリン!」

屋敷に着くと、オフィーリアが飛び出して来た。

すでに医者も手配されており、アネット、護衛のコスナー、御者、エヴァンジェリンが診察を受ける。



別室では、ヘルフリート、ケーリッヒ、王宮から戻って来たシェレス公爵がコスナーから事情を聞いていた。

「王宮を出た所で、弓矢による襲撃を受けました。

最初から馬を狙っていて、興奮する薬が塗られていたようです。

矢を受けた馬の暴走で、馬車は恐ろしい速さで街を駆けたのです。

馬の興奮を抑えるのは無理だと判断し、馬を斬って馬車を止めようとしたのですが、馬車が横転してしまい申し訳ありません」

コスナーが包帯の巻かれた身体で、謝る。


「いや、よくやった。

あのままだと馬車は横転どころか、どこかに激突し大破していただろう。

そうなれば、ケガでは済まない。命の危険があった」

ケーリッヒは軍人らしく、事件を分析する。

ヘルフリートと公爵は無言で聞いている。


「証拠はないが、王妃の仕業であることは分かり切っている。

シェレス公爵家に敵対するとはどういうことか、思い知らさねばならない」

ケーリッヒはモーガンを使おうと提案する。

王位を簒奪したあかつきには、王妃は断罪されることになる。


コンコン、とノックをしてエヴァンジェリンが入って来た。

「私もそこに入れてください」


「エヴァンジェリン?」

エヴァンジェリンには安全な所にいて欲しいのだ、それはヘルフリートもケーリッヒも公爵も同じ思いである。


「凄く怖いし、お腹も痛いし、逃げたいです。

でも、もう逃げたくないんです。

きっと守ってもらわないと何も出来ないと思う。

でも、何も知らないのはイヤなんです」

何も知ろうとしなかった私のままでは、ダメだと思うから。


天使ではなく、生身の人間がそこに居た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ