邂逅 2
ギロリ、とダンと呼ばれた男性は兵士たちを睨む。
態度と言葉からして、この男性は二人の上官に当たるのだろう。威圧するオーラが漂う。
「はっ!その…」
「なんと言いますか…」
ラトリーとゲイリーは互いに視線を合わせ、言いづらそうにモゴモゴと言い淀む。
二人の頬は朱に染まっており、その様子にダンは片眉を吊り上げた。
「失礼、レディ。この二人が何か粗相をしなかっただろうか?」
ラトリーとゲイリーの態度が物語っていたのか、ダンは再度溜息を吐きリーシャに向き直す。
少し冷たさも感じるが、これが正常運転なのだろうとリーシャは思う。
「えぇと、はい、大丈夫です」
リーシャはにこりと微笑む。
質問に応えてくれなくて困ってはいたが、粗相と言う程でも無い。
「…それは、良かった。だがレディ、貴女は今お困りの筈だ。良ければ私が用件を請けよう」
ダンは僅かに目を見張るが、直ぐに表情を直す。
「あ、ありがとうございます。けど、あの、いいんですか?」
「構わない。困っているレディが居たら助けるのが騎士の務めだ。…金と通行証の発行ならギルドに行こう。そこで全て解決する」
「は、はい。よろしくお願いします」
「あぁ。ラトリー、ゲイリー。ちゃんと仕事をするように」
「「はっ!」」
じろりと厳しく言われ、ラトリーとゲイリーは背筋を伸ばし、敬礼する。
拳を左胸に当て、顎を引くのがこの国の敬礼のようだ。
「では行こう。こっちだ」
「はい。えと…ラトリーさんとゲイリーさん?ありがとうございました」
「ー!い、いえっ!」
「おおお、お気をつけて!」
ふわりと微笑んだリーシャ。
その笑顔は二人にとって突然で、更に破壊力が凄まじかったようで。
「………」
「………」
何とか今度は返事をしたものの、くるりと踵を返し去って行くリーシャの背を見つめ一言。
「女神…」
「それな」
呆然と立ち、この後の仕事が捗らなかった二人の出来事が兵士たちの間で瞬く間に広がり、何とかリーシャの事を知ろうとダンに問い合わせが殺到するのは、また別の話。