レックス
ヴィンセントはリーシャの問いかけに応えず、ジッとリーシャを見つめる。
その顔は何かを思案しているようにも、何かを言い淀んでいるようにも見えた。
「リーシャ、あの…」
「ヴィンセント様?」
「その…」
コンコン!
ヴィンセントがモゴモゴしていると、元気なノックの音が二人の耳に届く。
ヴィンセントは出鼻をくじかれたようで、クッと眉間に皺を寄せため息を吐いた。
「…後で話したい事がある。構わないだろうか」
「は、はい」
真面目な雰囲気にリーシャは驚きながらも頷く。
瞳の中に熱の籠った“何か”があった。
「ありがとう。………入ってくれ」
ノックをしたのを台無しにしてしまう程、扉が勢い良く開いた。
「お邪魔しまーす!!」
明るい声と共に入ってきたのは、一階で最初に話した猫の亜人のレックスだった。
キラキラと太陽の光で煌めく茶髪と、好奇心旺盛な茶色の瞳が印象的だ。
「どもダン副部長!リーシャ!さっきぶりだね」
ニコニコと言うよりはニヤニヤの言葉が当てはまる、レックスの顔は猫の亜人の特有だ。
人懐っこい第一印象だが、中身は警戒心の塊。心を許した相手にしか本心は見せない。
それはレックスの生い立ちが関係するが、今は詳細を省こう。
「ギルマスに言われてリーシャの持ち物を鑑定しに来たよ」
「そうか。ゲラルドは?」
「下でエルザと話してる。なんか結構な金が出るかもしれないからって」
レックスの頭に着いている耳がピコピコと動く。
リーシャがその動きをついつい目で追ってしまうのは無理もないだろう。
動くものに目が行くのは人間の反射的行動だ。
「んじゃ、リーシャにサクッと自己紹介!改めて、オレはレックス。猫の亜人で歳は一六。基本はギルドの受付。ギルマスに頼まれた時だけ鑑定もするよ。よろしくね!」
「あ、えと、リーシャ、一八歳。肩に乗ってるのはヤト。こちらこそよろしくね」
レックスの勢いにリーシャは戸惑いつつも挨拶する。
ギルドには個性的な人ばかりなのかと、リーシャは頭の片隅で思う。
「うん!じゃ、鑑定するね!これ全部換金していいヤツ?」
テーブルの上に置いていた魔草を指差し、レックスは確認する。
「えぇ。お願いします」
「はいはーい!ちょっと待っててねー」
言うやいなやレックスはソファに座り、一つずつ丁寧に見ていく。
ジッと見た後、ポケットから紙とペンを取り出し何かを書きだす。
それを何回か繰り返した後、フーッと大きな息を吐いて顔を上げた。
「リーシャ、これって全部精霊の池で採ってきたの?」




