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おっさんのウインク

 ほらよ、とゲラルドさんから通行証を渡された。

あれよあれよと言う間に話が進んだわ。びっくりする位。私リーシャになってから一日も経ってないのに。

いい加減頭がパンクしそうよ。情報量が多すぎて処理しきれないわ。

けどここで投げ出してはダメね。ゲラルドさんもヴィンセント様も、私の為に色々してくれてるんだもの。


「ありがとうございます。あの…こんなに良くして頂いて何と言ったらいいか…」


「ん?構わねぇよ。俺も貴重な経験を積ませてもらったしな!」


ガハハハ!とゲラルドさんが豪快に笑う。

きっと懐が深いのも彼の強さなのね。ほんと、良い方と知り合えたわ。


「通行証は常に身につけていた方がいいぞ。身分証も兼ねてるからな。そうだ、嬢ちゃんは今金持ってるか?」


「あ…ありません」


「ならその持ってる物を換金するか?それは魔草だろう?図鑑で見た事があるが、確か良い値がつく。先立つものが無けりゃ何も出来ねぇからな!住むとこもそうだし、仕事だって探さないとだろう?」


「はい。お願いします」


話が早くて助かるわ。確かに一文無しじゃ何も出来ないもの。

着替えも欲しいわ。こんなワンピース姿じゃ仕事は無理だしね。


「おぅ!ちょっと待ってろ!鑑定士呼んでくるからな!」


ゲラルドさんはパチンとウインクなんかして部屋を出て行った。

…正直、見たくなかったわ…。


「リーシャ。今見た悍ましいものはすぐに記憶から消すように」


「ぶふっ!」


ヴィンセント様がすっごく真面目な顔をして面白い事を言うから吹き出しちゃった。

キリッとした表情だから余計に面白いわ。

クスクス笑ってたらヴィンセント様は不思議そうに首を傾げる。


「何かおかしなことを言ったか?」


「ふ、ふふ!だってヴィンセント様、そんな真面目な顔をして記憶から消せって…」


「実際、真面目だ。おっさんのウインクなんて気色悪いだろう。いつも止めろと言ってるのに本人は聞く耳持たないから困る」


ふん、とヴィンセント様は息を吐いて眉間に皺を寄せる。

そんな顔も様になってるから、ちょっぴり、うぅんかなり羨ましいわ。


「それにしても、良かったなリーシャ。通行証が発行出来れば、自由に店の中も入れる」


「はい。これもヴィンセント様が私を信じてくれたお陰です。本当に、ありがとうございます」


「…俺がやりたくてやった事だ。礼など必要無い」


優しい言葉をかけてくれるヴィンセント様。

先程から一人称が私から俺になってるけど、少しは打ち解けてくれたって事よね?

ヴィンセント様って、公私をきちんと分けていそうだし。


「リーシャ、換金等が終わったらどうするつもりだ?」


「そうですね…。まずは必要な物を買って、当分住める宿を探そうと思います。ゲラルドさんはこの魔草は良い値がつくと言っていましたが、いきなり家を買う程のお金にはならないでしょうし。仕事も探さないとですしね」


「………………」


「ヴィンセント様?」


え、なんかジッと見られてるんだけど。何?何なの?




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