リーシャのスキル
深く息を吸い込んで、ゆっくり吐く。
大丈夫。仮に【癒しの力】が使えるとバレても、この二人は私を利用しようと考える人じゃない。
根拠は無いけど、信じるの。ヤトも騒ついてない。確かシイラだった時の知識だと精霊は悪の心に敏感だというし、自分の記憶も信じて。
「リーシャ、十八歳。スキル【心眼】」
「!」
「!?」
言い終わった瞬間、透明な石が綺麗な紫色に変わって光る。
何だか私の瞳の色に似てるけど気のせいかしら?
その光は段々淡くなっていき、数秒で消えてしまった。
「あの、これって」
「嬢ちゃん鑑定スキル持ってんのか!?」
「ひっ?」
「ゲラルド!」
ガシィッ!とゲラルドさんに両腕を掴まれる。肩にはヤトがいるから配慮してくれたのかしら。
急に強面で頭ツルピカな男性のドアップが視界いっぱいに広がるから思わず叫声が上がってしまった。
だけどヴィンセント様が直ぐに引き離して庇ってくれた。あぁヴィンセント様ありがとう。感謝します。
私の視界は黒髭のおじ様からヴィンセント様の逞しい胸板に変わる。すごいわ、びくともしない。
あの、もう大丈夫なので貴方の腕の中から出してくれませんか?すごく恥ずかしくて爆発しそう。
それに美丈夫って匂いも素敵なの?すごく安心する匂いなんだけど。
「お、おぉ、悪い。つい、な…」
ポリポリと爪でツルツルの頭を掻くゲラルドさん。
「大丈夫か?リーシャ」
頭上から甘くて低い声が降る。
腰がゾクッとしたのは何故かしら。こんなにも優しくしてくれるのは…何故なの?
「ヴィンセント、それ以上くっついてたら嬢ちゃんが茹で上がっちまうぞ」
「ー!すまない。苦しかったか?」
「ぃ、いえ、大丈夫、です。ありがとう…ヴィンセント様」
お願いだから顔を覗き込まないで…鼻血が出そうだわ。
甘い空気がこの部屋に広がりきる前に、ゲラルドさんがわざとらしい大袈裟な咳払いをする。
「それで、話が逸れたが嬢ちゃん。君は鑑定スキルが使えるのか?しかも【心眼】と言ったか?」
「は、はい」
「そうか…それが本当なら…いや、嘘ではないと分かっている。判定石が光ったからな。箱を開けてみてくれ」
「はい」
言われて黒い箱をそっと開けた。
「…ペンダント?」
そこには茶色の革紐に白いティアドロップ型の石が付いたペンダントが入っていた。
もしかしてこれが通行証なのかしら。
「それが嬢ちゃんの通行証と、身分証だ。このトンラッドの街で発行された通行証はペンダント型なんだ。各ギルドや門に確認する係が居て、そいつらが見れば分かるようになってる」
「へぇ〜。その国や街によって通行証の形は変わるんですか?」
「そうだ。あとさっきも言ったが、発行する時に虚偽を言えば判定石は反応しない。けど嬢ちゃんの時はちゃんと光ったろ?だから嘘じゃないと分かるんだ」
ふんふんとゲラルドさんの説明に頷いていると、隣から視線を感じる。
「ヴィンセント様?」
「…リーシャは【心眼】を持っているんだな」
「?はい」
「……そうか」
「?」
ふと嬉しそうに目を細めたヴィンセント様。
私のスキルがそんなに喜ぶものだったのかな?
「あーゴホン!嬢ちゃん、【心眼】のスキルはな、鑑定スキルの中でも最上位のものなんだ。一般的な鑑定のスキルは物のステータスを見れる。それだけでもレアなのに、【心眼】は人や魔物のステータスも見れる」
「………!」
「神の眼とも言われるスキルだ。…嬢ちゃんに関わるもんは異例ばかりだな。…まさか聖女?」




