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意外な一面

 周りからの視線をバシバシ受けながら私とヴィンセント様は二階へと上がる。


大きな吹き抜けになってるから二階に上がっても浴びる視線の数は変わらない。

見られるのは慣れてるけど、詮索するような視線は心臓に悪いから止めてほしいわ。

チラリとヴィンセント様を見たけど、全然気にしてないみたい。

騎士様はいつでも注目の的だからかしら。その強靭な精神、少し分けてくれないかしら。


「ゲラルドはここのギルドマスターで、私の父からの付き合いなんだ。緊張しなくとも平気だ」


「ぁ、はい…」


別にその事で強張っていた訳では無いのだけれど。

弁解するのもアレだし、それでいいわ…もう。


コツコツ。


「ゲラルド、入るぞ」


 ノッカーを軽く二回叩いて。

ヴィンセント様は返事も待たずに扉を開けた。…ノックの意味とは。


「ん?おう!ヴィンセントか!久しぶりだなぁ!今回は何だぁ?」


急な来訪に驚く事もヴィンセント様のマナー違反に怒る事もせず、部屋の主はガハハと豪快に笑った。

太陽を背にしてるからか、髪の毛が無い頭がピカッと光ってる。ちょっと眩しい。


「彼女の助けになってくれないか。…少し事情がある」


「お前がエスコートしてる別嬪さんをか?まぁ座れよ。詳しく聞こうか」


応接用のソファを勧められ、ヴィンセント様に最後まで付き添ってもらった。

ほんと、どこまで完璧なんだろうかこの人は。


「お嬢さん、俺はこのギルドの責任者のゲラルドだ。聞いた話は一切漏らさないから安心してくれ。この部屋にも盗聴防止の魔法がかけてある」


「お気遣い、ありがとうございます。私はリーシャと言います。この子はヤト。精霊獣です。私たちは精霊の池からこの街へ来ました」


精霊の池、という単語にゲラルドさんが反応する。僅かに目を見開いた後、面白そうにニヤリと笑った。

うん、お髭もたっぷりあるし、ダンディズムを感じるわ。日本で言うチョイ悪オヤジみたい。


「ほぅ…精霊獣と絆を結んでいるのか。ではその手に持っているのは精霊の池に生えていた物かな?」


「そうです。お金も通行証も無いのでこの街で換金して、この街で暮らせたらと思って…。ヴィンセント様には門で困っていた所を助けていただき、此方へ連れて来てもらいました」


「…ヴィンセントが君を助けたって?この冷血漢騎士様が?」


「おい、ゲラルド」


「ヴィンセント様が冷血漢?誰がそんな事を!すごく思いやりがあって優しい方ですけど…」


「リ、リーシャ…」


 思わず言えばヴィンセント様が慌てたように私の名前を呼んだ。

顔を見やればヴィンセント様の頬が少し赤いように見える。

出逢って時間は短いけど、私はそう感じたのだもの。何も変な事は言ってない…よね?


「ガッハッハ!こりゃ意外な一面だな!こーんなちんまい頃からコイツを知っているが、赤面してる所なんて初めて見たぞ」


「ゲラルド!俺は赤面なんかしてない」


「口調が乱れているぞヴィンセント。まだまだ経験が足りねぇな」


揶揄うように笑ってるゲラルドさん。

きっと仲が良いんだろうな。ヴィンセント様のお父様からの付き合いだと言うし、歳の離れた兄弟…は無理があるわね。叔父と甥、ならイケるわね、うん。


「くそっ…ゲラルドに頼るといつもこれだ」


ヴィンセント様が眉間を人差し指と親指でつまむ。

この雰囲気から予想すると、ヴィンセント様はゲラルドさんに口では勝てないみたい。



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