婚約破棄?何言ってんの、その子は私の婚約者です。
やっと、一緒になれるね。
広い広い王宮の広間で開かれた、学園の卒業舞踏会。
僕も卒業生として参加して、今日でこの国の美味しい食事を食べれる最後だと思ってたし、それを楽しみにしていたのに…。
「シンシア・クレイバーレ!貴様と生涯を共にするなど到底無理だということが学園生活でよく分かった!!故に、この婚約を破棄させてもらおう!!」
「…はぁ、どうされたのです。オランド殿下」
ダンスが行われようと広間が空いた瞬間に、男子生徒四人と女子生徒一人がド真ん中を陣取り、男子生徒の一人のオランド・レイ・ユウラシア第一王子殿下が声を張り上げた。
…名前の通り、この国の第一王子だよねぇ?
以前から目にしてる第一王子と全く一緒なんだけど、ほんとに同一人物??最近僕は第一王子とは全く遭遇しなかったけど、前はもっとしっかりとした優秀な王子だったはずなんだけどなぁ…もうすぐ王太子として立太子される予定は、コレでパァかな?まあ、立太子の前で良かったよ。簡単に切り捨てられるだろうさ。
あれの婚約者のシンシア嬢は可哀想だねぇ。
ここには、僕のような他国の人間もいるのにね。随分と、下手なことをさせたものだ。
でもまぁ、この話持ち帰ったら多少は僕の要望も受け入れやすくなるかなぁ…?色々準備頑張ったんだしぃ…あの子も堕ちてきたから、絶対反対されても手に入れるし、なんなら地位だって捨てても構わないけど…ね。そんなもしもは無いだろうなぁ、父上が許可したし。
「〜よって、貴様との婚約を破棄させていただく!そして俺はここに居る、レティア・マクレイド嬢と婚約する!貴様を追い詰める証拠が綺麗に消されていたのか得られなかったが、そんなものなくとも俺に貴様を愛する気持ちなど無いのだから、破棄しても構わないだろう?貴様がどうかは知らんがな」
「…わかりました。それでは私からもお父様に婚約破棄の旨をお伝えしておきますのでご安心なさいませ。それでは私はお父様にお伝えしに家に帰り…「ああ、待て。その前にコイツらも婚約破棄をしたいそうだぞ?」…そうですの」
「ああ、俺は〜」
まじかぁ…他の奴らもすんの?
これ聞かされてる立場にもなってよね〜。持ち帰って利を得られるのはいいけどさ…僕用事あるのになぁ。
「以上の理由により君との婚約を破棄させていただくよ、ユフィリア・セリエット。」
?!!!は???!!!!
「…はァ?!!」
「「「?!!」」」
めっちゃ大声ではァ?!!て言っちゃったじゃん!何してくれんだアイツ騎士団長の息子だよね???
騎士団長めちゃめちゃマトモでちゃんと考えられる人のはずだしちゃんと伝えてるはずなんだけど???なんで婚約者候補如きが、選ばれる側の人間が選ぶ側に破棄とか言っちゃってんの???いや別に関係なかったらどうでもいいけど、その子、僕のなんだが??
いやホントふざけてる。
「…ど、どうかしたのですか。リリシア・フォン・ルファンド皇女殿下…?」
僕の名前はちゃんと知っていたようだけど、なんでわかんないのかなぁ…そもそも他国の王族が留学してる上に、その卒業式でやることじゃないって分からない???…わかんないんだろうなぁ…。
「どうしたもこうしたも無いでしょう…貴方、今自分が言ったことを理解しているの?」
「えっと…私の婚約者が余りにも酷いので婚約破棄を…「は???」えっ」
おっと、王女らしからぬ声を出してしまった。
いやでも仕方なくない??でも僕の愛しい彼女に汚名をきせてこれみよがしに馬鹿にしたんだから相手してあげるか。
「はぁ…貴方そもそも婚約者候補でしょう。それなのに破棄って何事なの?」
「えっ?候補??いえ、婚約者ですよ」
…何故そんなに思い込みが強いの??めんどくさいなぁ
「違うわよ。その子は私の婚約者です。私が留学期間中に口説き落として帝国へ連れ帰るのだから、変な言い掛かりは良しなさい」
「「「…はァ?!!」」」
あ、今度は私以外が驚いてるわ。まあ、驚くことを言った自覚はあるけど。
「な、何を言っていらっしゃるのですか!貴方様は女性!そしてこのユフィリアも女性ですよ!婚約者なわけないじゃないですか!!それに、貴女の国は確か、同性婚など無かったはず…!」
「お父様を説得し倒して許可して頂きました。ユフィリアが婚約者となる事も了承済みです。また、ユフィリアのご両親にも話は通してありますよ。侯爵家は分家の男児を養子に迎えるそうです」
「なっ…なっ…!!」
口をパクパクすんのやめようよ、みっともない。
そんな事より、今のやり取り聞いて顔を赤くしている彼女を早く抱き締めたいなぁ…!膝の上に乗っけて、ひたすら抱きしめてキスして甘やかしたい…!!
ドロドロに甘やかして僕無しじゃ生きれないようにするんだ…軟禁もありかなとは思ってる。彼女の意思を一番尊重するけどね。早く家に来ないかな…。
「まあ、貴方が納得しなくても構わないわ。ほら、ユフィ?私の馬車に一緒に乗って私の屋敷へ帰りましょう?大丈夫。一度城下町の方で泊まって、明るくなってから出発するから。ね?」
「もう…リーシャはいつも私を色んなことから護ってくれるのね。そんな所も好きよ」
…これは宿に入ったらGOサインですか?頂きますよ?まあ、そういう事は結婚後って約束してるからしないケド!!!なんて生殺し…ぬぅ……。
「あっ、おい、待ってください!まだ私の話は…!!」
外野がなんか言ってるけどどうでもいい事だよね、きっと。無視しよ無視。とりあえず帰らなきゃ!
2人でゆっくりイチャイチャしたいもんね。
それにしてもホント、この国の第一王子が高位貴族っていうか、めっちゃ力のある大公家を敵に回すとか頭に脳みそあるぅ?て感じだけど、まあ、あれは向こうで処理するでしょ。でっち上げの罪を被せないだけマシはマシかな?別の国で昔、でっち上げで断罪したら酷いしっぺ返しを食らったっていう例が効いてんのかもねぇ…それでも破棄を辞めないあたり凄いケド。
折角の後ろ盾を蹴るんだから、それ相応の覚悟があるんだろうなぁ、殿下は。まあ、その横の令嬢は無いだろうけどねぇ。この間王妃になれるって喜んでたそうだし。
早く、結婚したいなぁ…。
「ねえ、早く結婚したいね?ユフィ」
「また言ってるの?どうせ遅かれ早かれするんだし、しなくてもこれからは死ぬまで一緒にいるでしょ?違うの?」
…ホント、この人には勝てないや。愛してる。
生涯を掛けて幸せにしないとね。
「勿論、そうだよ。愛してるユフィ」
「私も愛してるわリーシャ」