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ラブコメとギャグを足して二で割ったような学校でいかにして高校生活を充実させるか  作者: メルシー


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25 発展進歩などなど

突貫工事や!!!!

 理の隣で顔を真っ赤にしている白井さんを尻目に作戦会議を始める。理も少し顔が赤くなっている気がするが、きちんと啖呵を切った奴をわざわざ辱めることもないだろう。


「で、風矢には何か策があるのかよ?」

「ないぞ」

「は?」


 そんなのある訳がない。何せこの話を今日初めて聞いた上に、こいつらの置かれている状況というのも話を聞いただけだからな。


「とはいえ、これ以上状況が酷くなるとも思えないけどな」

「どうしてだ?」

「いや、普通に考えて嫌がらせしている側にこれ以上のことはできないだろ。聞いた限りのことで済んでるんだったら先生からの注意ぐらいで済むけど、これ以上やったら停学もあり得る。下手したら退学だ。お前らの高校でそこまでのリスクを犯せる奴はいるか?」


 それにそんなことをしているほど暇も無ければ、もっと他にする楽しいことだって有るはずだ。これから中間テストもあるだろうし、文化祭の準備なども時期的には早いが待ち構えているだろう。

 俺の抱いている俺を落とした高校への理想かも知れないが、多くの生徒が理知的なはずだ。夏休みになる頃にはこれらのことは忘れられてそうな気もするんだけどな。


「それはそうかもしれないけどな。それでも今辛そうにしているのは見てられないだろ」

「辛そう……ねぇ」


 どんなに強い人間であっても常に他人からの悪意に晒されていれば壊れるまでは行かないまでも、感情がねじ曲がってしまう。その中で一つの光明を見つけてしまうと、それに依存してしまう。

 

「なあ白井さん。中学の時はどうしてた?」

「どうって……」

「学校でどう過ごしてた?」

「一人で本読んだりしてました。後は……勉強とかですかね」


 白井さんが喋ると先ほどから静かだった雪も口を開く。


「私と同じ。勉強はしなかったけど」

「そういや雪もそんな感じか」

 

 似たような境遇の話をどこかで聞いた気がしていたが、雪もそう言えば中学時代孤立していたんだった。

 というか三月との話もまだ決着がついていないな。色々話さなければいけないことがあるから、いつか話そうと思ってかれこれもう一週間以上経ったが、彼女は今何をしているんだろう。次の一手でも考えているのだろうか。


 まぁそれはおいおい考えるとしよう。

 

「えっと……雪さんも中学時代一人ぼっちだったんですか? ……ってごめんなさい。聞かない方が良いことでしたよね」


 おっと、この子中学時代に一人でいた割にはどんどん人の触れにくい所に触れていくな。意外と図太いのかもしれない。

 いや、単に自分の同類に話しかけているだけかもしれないが。


「別に良い。今は風矢がいるから」

「えっと、雪さんって風矢さんのお友達でしたよね? 随分と距離が近いですけど、どうしたらそんなに人と仲良くなれますかね?」

「お昼ご飯一緒に食べたりした。後、お弁当作ってあげたり」

「え、お弁当つくってるんですか!?」

「うん」


 あれ? なんか雪と白井さんでガールズトーク始まってね? しかも、滅茶苦茶盛り上がってるし。


「おい、風矢。お前、お弁当作って貰ってるのか?」

「そんなことどうでも良いだろ。それよりもどうする。真面目な話をする雰囲気でもなくなったし」「いや、どうでも良くはないだろ。……でも白井さんがこんなに笑顔で人と話してるのは初めて見たわ。やっぱり俺と居るよりも、同年代の女子と一緒に喋ってる方が楽しいよな」


 ふむ。どうやら随分と自己評価が低くなっているようだ。昔というか中学時代ならばこんなことは言わなかっただろう。いや、そんなこともないか。俺たちの前では天上天下唯我独尊みたいな雰囲気を醸し出していたが、他の人達の前ではその雰囲気は弱くなっていた気がする。

 それに一ヶ月、俺たちと連絡を取る暇無く考えて行動して、そして俺に頼るまで追い詰められてまで得たかった笑顔をこうもたやすく見せられると、自分を肯定するのも難しいだろう。


「ちょっと、お手洗いに行ってくるな」


 女の子達に言うことでもないが、そう言って理の腕を引っ張りながら部屋を出る。


「どうしたんだよ。急に」

「まぁ聞けよ」


 壁に寄りかかって理に向き合う。壁のひんやりとした感触を背中に感じる。もうすっかり日は暮れて、電灯の光だけが俺たちを照らしている。


「お前さ。白井さんがお前のことどう思ってると思う?」

「どうって。悪くは思って無いと信じたいけどな」

「本気で言ってるのか?」


 理の少しやつれた顔をじっと見つめる。理は恥ずかしくなったのか、虫の居所が悪くなったのか分からないが俺から目を逸らす。


「何が言いたいんだよ」

「それじゃあその話をする前にさっき、はぐらかした話をしようか」

「一番解決しそうな方法とか言ってたらあれか?」

「その通り……と言いたいところだけどな、ちょっと違う。その前の嫌がらせを受けたきっかけのほうだよ」


 こいつだったらいつもなら気付きそうな気もするが、やはり自分が当事者になると気付かないものなのか。

 それとも意図的に気付かないようにしているだけなのか。


「何故嫌がらせを受けるようになったのか、時系列を考えれば分かるだろ?」

「俺に原因があるって言いたいのか? 俺が白井さんに話しかけたからって言いたいのか?」

「よく分かってるじゃないか」

「でも何で俺が話しかけたから嫌がらせを受けるんだ?」

 人からの好意というのは否定したくなる。それが非現実的なことであるから、もしくは自分が自意識過剰な人間であるということを否定したいからだ。


 誰にも知られることのない自分自身の感情ですら、思うだけで恥ずかしくなってしまう。そういった羞恥心、自分自身に自分の感情を知られてしまうという、自分に向いた恐怖の感情が人の思考を惑わせてしまう。


 だからこそ自分は気付いていない、何も知らないと思い込んでしまう。思い込むことができるのだ。


「例えばお前のことが好きな誰かが、お前に一目惚れした誰かが嫉妬したからとかだな」

「なんで俺に一目惚れなんてするんだよ?」

「孤立している女の子に人目も気にせず話しに行けるその優しさ、キュンと来る女の子は居るんじゃないか? 例えばそうだな……昔孤立していたけど高校デビューして人気者になれた子とか」


 だから、だからこそ嫉妬する。自分が努力して手に入れた地位よりも、自分が軽蔑して捨てた地位に居る人に。自分の努力が否定されたとも思えるようなその事実はやがてその身を蝕み、その妬みの対象となる人への攻撃を後押しする。


 例え話ではあるが、ないとも言い切れないストーリーだろう。


「まぁどうしてお前に一目惚れしたとかはどうでも良くてだな。そう仮定したら、色々と辻褄があうってことだ」

「じゃあ、俺が白井さんから離れれば嫌がらせは止むのか?」

「そう考えると思ったから俺はあのとき言わなかったんだよ」


 だから圧迫面接みたいなことをしてまで白井さんから、彼女からあの言葉を引き出した。

 

「そもそもだな、お前は根本的に間違っている点が一つある」

「何だよ?」

「お前が思っている以上に白井さんはお前のことを想っているんだ。そして、嫌がらせを受けなくなる未来よりも、こうしてお前と一緒に居られる今の方が彼女にとっては幸せなんだよ」


 聞いていたはずなのに何故気付かない。何故分からない。


 違う。自分を守る為に分かろうとしていないんだ。紛れもなく自分自身への恐怖から守る為に。

 


「白井さんが言った言葉を記憶の良いお前なら覚えているはずだ。そしてそれが俺がさっき言った言葉の答えだ」


 強い意志の籠もった言葉だ。それこそ言霊を持ってもおかしくないくらいの。


「やっとできた友達なんです。そう簡単に離したくはありません。ずっと夢見てたことだったんです……か」

「お前にとっては呪いの言葉かもな」

「呪いって……。正直分からないんだよ。誰かに強い感情を向けられたことがないから。どうすれば良いのかがな」

「何もしなくて良い……と、俺は思いたい」

「なんでそこだけ歯切れが悪いんだよ」


 言いたくないなぁ。というか現在進行形でブーメランを投げまくってるから、自分に刺さりまくるんだよな。俺の言葉が。


 とはいえ、旧友のよしみだ。少しくらい話しても罰は当たらないだろう。


「いや、俺も雪から逃げてるからな」

「そういえばお前もそうか」

「しかもお前よりも酷い理由だからな」

「どんななんだ?」

「自由でいたいから。誰にも縛られたくないから」

「人間の屑が」


 そんなの自分でも分かってるんだよなぁ。


「とはいえ、いつかは向き合わなきゃいけないものだからな。その時にお前が白井さんとやらのそばに居ないと、誰も幸せにはならない。だから、絶対に彼女からお前は離れちゃ駄目なんだ」

「……分かったよ」

「それなら戻ろう」


 部屋に戻ると、顔を真っ赤にした白井さんが何やら思い詰めたような様子で理を見つめ始めた。

 

 ……雪が何か吹き込んだのか?


「あ、あの、砂押君。し、下の名前で呼んで良いですか?」

「え? ああうん。良いけど……」

「じゃ、じゃあ理君。私のことも下の名前で呼んで下さい」

「……双葉さん」

「は、はい!」


 何を俺は見せられているんだ? いやまぁ、青春の一端という意味では非常に良いもの、尊いものではあるが、それにしても実際に見るとは。


「風矢はこんな感じじゃなかった。もっと甘酸っぱさを出す努力をして欲しい」

「いや、割と恥ずかしかったけどな」

「ふーん。そうなんだ」


 そんな会話を雪としつつ理達の方を見ると何やら甘い雰囲気で話している。楽しそうで何よりだ。


「帰るか」


 時計を見るともう八時を回っていた。

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