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ラブコメとギャグを足して二で割ったような学校でいかにして高校生活を充実させるか  作者: メルシー


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21 誰かの何か

 気づかなくても良いことがときにはある。人はいつだって思考に行動を阻められ、縛られ、そして操られていく。思考から逸脱した行動を取ることは許されず、そもそもそんな行動があることすら気づかない。

 

 逆に言えば、やらないほうが良いこと、やりたいすることを阻害する情報などは知らないだけ、気づかないだけでそれらに縛られずに行動できる。人間は気付いていないことを考えることはできない。


 だから俺はどこまでも羽ばたいていける。



 ◇



 ついに来てしまった土曜日。


 土曜日なので学校は午前中で終わり、教室では部活に所属していないあるいは部活が休みの生徒たちがプロレスや腕相撲をしている。勝者と敗者は互いの健闘を称え合い、そして握手を交わす。うん、青春をしているようで何よりだ。


 そんな連中を尻目に雪と話しながら帰路についていた。と言っても帰る先は俺の家ではないから正確には少しばかり違うが。


「今日は父さんも母さんも仕事で居ないはずだし、姉さんも仕事のはず。だから緊張しなくても良い」

「その言い方だと逆に緊張するな」


 なんでこうも俺が女の子の家に行くときは家に家族が居ないんだろうか。と言っても記憶の限り女の子の家は、これから行く雪の家を除いて前川の家にしか行ったことはないので、そこまで言うほどのことではないかもしれない。


「別に変なことはしない。風矢も家の物とかを壊さなければ私の部屋なら好きに寛いでくれて良い」

「それはありがたいけど、家に他人を入れる抵抗感とかないのか? しかも男だし」

「風矢なら良い」


 ここまで言われるとなんか怖くなってくるな。主に重さ的な意味で。とは言え信頼してくれるのは嬉しいことではある。雪と過ごしてきた一ヶ月は嘘ではなかったらしい。


 そんなこと例の騒ぎの起こった日の時点で分かってたんだけどな。


「そんなことより早く行く。安心して。風矢のために部屋は片付けておいた」

「いや、そこは別に気にしてないけどさ」

「そう? 汚いのは良くないって姉さんが言ってた」

「それはそうだけどな。まぁでもそういうことなら素直にお邪魔させてもらうよ」


 若干話が噛み合っていない気もするが、面倒くさいのでスルーして流しておく。


 にしても、確か雪の家ってこの学校から結構遠い場所だよな。着くのは何時ぐらいになるんだろ。





 大体学校から二時間ほどかけて雪の家にたどり着いた。普段住んでいる町から、かなり離れた場所にあるこの町は普段の町とは随分違った空気が流れているように感じる。


 なんというかイメージ通りの住宅街って感じの場所だ。 


「雪の家って戸建てなんだな」

「うん。風矢は戸建てじゃないの?」

「いや、戸建てだけど」


 どうでもいい話をしながら雪は扉を開けようとする。


「あれ……開かない」

「どうした?」

「鍵を開けたはず……。逆に閉まってる? ……もしかして」


 不意に扉が開く。


「やあやあ彼氏くん。どうも、雪の姉の冬でーーーす」

「ああ、どうも。こんにちは」

「随分と淡白な挨拶だねぇ」


 家の中から、雪の姉とは思えない……極めて雪と対照的な女の人が現れた。


 何が対照的かと言われれば体型がぜんぜん違うというか、雪が言っていた「ないすぼでー」に相違ない体型をしている。


「お、どうしたのかな、私を見つめちゃって。もしかして私に惚れちゃった? だめだよー浮気は」


 性格も随分と雪とは違い、社交的なように見える。というかウザ絡みしてきそうなタイプだ。


「なんで姉さんがいるの? 仕事は?」

「えーだって、大事な大事な妹が男を家に連れ込むって言ってるのに仕事なんてやってる暇ないでしょー。それに、今日は元から休みなんだ。騙してごめんね」


 俺としては家の人がいるほうが何かとありがたい気もするが、どうやら雪は不服らしい。隣で凄く不機嫌になっている。


「風矢、早く私の部屋に行こう。姉さんは邪魔しないで」

「心配しなさんな。若い二人を邪魔するほど姉さんも腐ってはいませんよ。いや、腐ってはいるか。ま、とにかく私がしたかったことと言えば彼氏くんの顔が見ることだけだからあとはお二人で好きにしてくれれば良いですよっと。ちゃーんとヘッドフォンつけてゲームやりますから、どんなことしてても気にしなくてオーケー!」


 色々とテンションがやばい御仁だが、それにしてもなんか色々と情報が曲がっているように見えるな。


「あの、ええと冬さんでよろしいでしょうか」

「うん?」

「俺、彼氏じゃないです」

「またまたー。照れ隠しをしなくても良いんですよう。雪が心を開くのなんて彼氏以外にいるわけないない」

「いえ、本当です。いや、証拠を出せと言われてもアレですし、そもそも恋人関係に明確な線引がないので言われれば否定はしづらいんですけど、俺としては付き合っているつもりはないですし、多分それは雪も同じだと思います」


 ここで雪が「私とは遊びだったの?」みたいなことを言えば俺は多分ひどい目にあうだろうが、それは多分ないと信じたい。


 ……ちょっと心配になってきたな。すぐさま逃げれるような体勢にしておこう。


「風矢とはまだ友達」


 姉に色々と邪魔されたせいか少しぶっきらぼうだが、雪は俺の望む答えを言ってくれた。いや、ちょっと言い回しが変だな。


 まあでも、これでひとまずはちょっと辛い逃げる体勢じゃなくて普通の体勢に戻っていいだろう。


「え、雪、彼氏でもない人にお弁当作ってたの? やっぱり変だとは思ってたけど、え? 騙されてない? 弱みとか握られた? 大丈夫?」

「私が作りたいから作っているだけ。そろそろ、本当に怒る」

「ごめんごめん。でもまさかただの友達に……ただの友達って言ったら怒られるかな、まあ良いや。でも雪冗談抜きに大丈夫?」

「大丈夫。それよりも早く風矢私の部屋に行こう」

「え、あ、うん」


 業を煮やした雪に手を引かれあれよあれよと雪の自室へと俺は連れ込まれた。


「……あれが私の姉さん。ちょっとおかしい」

「それは確かに」

「でも、あんなのだけど悪い人ではない」


 実の妹にあんなのとか言われるとか可愛そう。しかしやってることがやってることなだけに評価としてはあながち間違ってはなさそうなのがなんともいえない。


 ……もしかして俺も弟にあんなのとか言われたりしてるんだろうか? ありえる。日頃弟にしていたことを考えれば友達とかに俺の悪口を言っている可能性も……ほとんどないな。最近あいつとあんまり話してないし、そもそもあいつはそういうタイプじゃない。


「姉さんはちょっと過保護な面がある」

「妹のことを想っての行動だとは思うけどな」

「そんなのは分かってる。でも、私ももう高校生。そこまで心配されるほど子供じゃない」


 心配されるほど子供じゃない……か。確かにそう思う気持ちも分からなくはない。実際高校生になったら働けるようになるし、義務教育を終えているという点で言えば大人に半歩足を踏み入れた状況だろう。

 

 だからといって実際まだ成人はしていないわけだから、ある程度は子供として縛られることもある。


 大人と同じような立ち居振る舞いは求められるが、それらの行動に責任を求められることがなくその代わりとしてある程度の縛りを設けられる。それが高校生の置かれる微妙な状況だ。


 だから大人からしたら高校生は責任を負わない子供に見えるし、高校生からしたら大人と同じような立ち居振る舞いが求められるので大人になったように感じる。


 大人と高校生の感覚のズレというのはこういうことだろう。


 実際のところは俺に大人の感覚などわかるはずもなく、ましてやその道のプロというわけでもないので正しいのかはわからない。ただ、俺はこう考えている。


 と、ここまで長々と解説してきたが、多分姉の問題はそういうことではなく、妹離れできない姉という話だと思う。

 そしてぶっちゃけそこまで妹離れできていないかと言われるとそうでもなく、寧ろ割と放任主義なんじゃないかなと。俺のことを彼氏と思い込んでいたときは普通に歓迎していたし、単純に男友達を家に招くという行為が、付き合ってもいない異性に弁当を渡すという行為が危ういように見えただけだろう。

 俺だって姉の立場にいたら雪のこと心配すると思う。というか同性の友達だったとしても心配すると思う。


「まあそこまで気にすることでもないんじゃないか? 姉なんてそういうもんだろうし険悪な仲よりは健全だとは思うけどな」


 思ったことを言っても良いことがないので無難な返事をする。こんなの絶対地雷を踏むに決まっているからな。


「それでも気になる」

「それだったら嫌なことがあったときに愚痴を言えばいい。俺だったらまあできる限り聞くから」


 愚痴を言うことは往々にして嫌われることではあるが、かといって全く言わないというのは精神衛生上良くない。感情の浮き沈みが急に激しくなったりだとか、いつも不機嫌になったりだとか、そういう危険性もある。

 それらが原因で自分自身も不快になることに比べたら愚痴を聞いてストレスを発散してもらったほうがまだマシである。度が過ぎるのもあれだが、学校とか放課後一、二時間程度だったら時間はひねり出せる。



「……そうする」


 少し考えた後雪はそう言った。自分でも少し思うところがあったのだろうか。


「あ、お茶出すの忘れてた。とってくるから好きに寛いでいて良い」


 そう言うと雪は急いで部屋を出ていった。


 一人取り残された俺は暇だったので部屋の様子を見渡してみる。


 本棚にこれでもかというぐらいラノベが並べられているのと、ゲームソフトが棚にぎっしりと並べられている以外は普通の部屋だ。いつも勉強とかに作っているであろう机の上にはデュアルモニターのパソコンが置かれており、少々羨ましい。


 モニターを二台置くとかいう所業は金欠学生には夢物語なのだ。尚、デュアルモニターにしたところで特に使い道はない。一般高校生にはそんな画面が必要なほどマルチタスクをこなすことはないのだ。動画編集をするわけでもあるまいしな。


 なんてことを考えていたら不意にドアが開いた。お茶を運んでくるにしては随分と早い帰還のように思える。


「ハロー風矢くん」

「名前、知ってたんですか」

「まあね〜」


 案の定雪の訳でもなく。


「どうしたんですか? 冬さん」


 雪の姉がやってきた。


 明るい人は良いよね。


 とりあえず星五つよろ。ブクマよろ。感想よろ。誤字報告よろ。

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