表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブコメとギャグを足して二で割ったような学校でいかにして高校生活を充実させるか  作者: メルシー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/29

18 みーんなハッピー

 どうやってこの場を切り抜けよう。


 目から光が失われた雪と対峙しながらそう考えていた。


「ゆ、雪ちゃんどうしてここに……」

「質問をする前に私の質問に答えて」


 雪の声はひどく冷たい。


 前川と雪のテンプレートな会話を聞きながら辺りを見渡す。幸い近くにうちの学校の生徒はいないようだ。


 さて、どうするか。


「まぁ正直に話すしかないな」


 努めて冷静に話す。ここで変に緊張して声が震えたりしたら、余計な疑惑が出かねないからな。


「前川、これまでの経緯を話しても良いか?」

「え? あ、はい」


 前川は人に広めて欲しくなさそうだったので一応許可を取っておく。


「一から説明するから話が長くなるかもしれないけど、そこのところよろしく頼む」

「……分かった」


 多少の脚色を織り交ぜつつも今までの大まかな流れを説明する。

 多少なりとも流れには突っ込まれたりはしたが、意外にも流れ自体は大方納得してくれたようだった。


 そう、流れ自体は。


「経緯は分かった。でも風矢が都に勉強を教えることは理解できない。自分で勉強すれば良い」


 それは俺もそう思う。しかし約束してしまった手前、口に出して雪の考えを肯定することはできない。


「まぁ俺が言ったせいでこうなったんだから、前川の主張も一応筋は通ってるわけだ」

「そうです。風谷さんに教えてもらわないと私の成績と取引が大変なことになります」

「大体、出会って二日の異性を家に呼ぶこと自体おかしい。やましいことがあるはず」


 良いぞ、もっと言え。


 心のなかで雪を応援する。この件に関して言えば雪の主張に同調して前川に一言言ってやりたい。しかしながら俺がここで下手なことを言えば、前川が自分の不利益覚悟で俺を陥れようとしてくる可能性が、これまでの行動から見てないとは言えないので、雪を擁護することはできない。


「やましいことなんてないですよ。大体こんなひょろひょろな人に押し倒されるわけないじゃないですか」


 随分なことを言ってくれるじゃないか。これでも筋トレを始めたんだぞ。


 ……昨日から。


「違う。逆。都が風矢を押し倒す」

「私がですか? ないです。ありえませんよ。大体家には親もいるんですよ? そんなことできるわけないじゃないですか」


 平然と嘘をつきやがった。いや、さっきの家に誰もいないという言葉のほうが嘘の可能性があるが、冗談が冗談にならないやつだ。多分家に誰もいないのだろう。


 しかも俺がこれを訂正しようとすると、何故さっき言わなかったのかと雪に問い詰められる。話したら面倒だと思って、わざわざ情報を選択して都合が悪くならないように話していたツケが回ってきたか。


「親もグルの可能性がある。とにかく危険。風矢、行っちゃ駄目」

「どこに良くわからない男に娘を任せる親がいるんですか。別に変なことしないですし、安心して下さいよー」

「風矢、行かないよね?」


 うーん究極の二択。俺としては行かないを選択したいのだが、先程も言ったとおり俺を陥れてくる可能性が高い。例えば、「実は風谷さんに脅されてて」みたいな感じで。


 というか多分やるだろう。自分の目的の遂行のためなら、自分の悪評さえあまり気にしないことが今日の一件で分かっている。


 まあ俺一人にそこまでやるのかという疑問はあるが、少なくとも雪との関係を悪くしてでも放課後を誘ったことをみると何かあるのに違いない。それが分かればどうにかなるのだが、現状持っているカードにそれらしき情報はない。

 

 とにかく今はなるべく波風を立てないような選択を……。


「分かった。今日は帰ることにする」

「うん、風矢それが良い。風矢、この後一緒に私の家に行こう」 

「どうして! そうなるんですか!」


 前川を馬鹿にするかのように雪は笑う。


「都、風矢と私は長い付き合い。厚い信頼関係がある」

「長いと言っても学校が始まってからの付き合いのはずですよね。私とさして変わらないじゃないですか。大体、昼休みの時はあんなに病んでたのにどうしてそんな平静でいられるんです」


 それは俺も疑問だった。昼休みの時のままであれば、俺も色々詰められそうな気もするが一向にそういうことがない。


「病む? そんなの風矢に対しての愛に比べれば些細なもの。風矢が私を好きでいてくれるならそれで良い」


 雪は昼休み避け続けたせいでなんか変な拗らせ方していた。

 

 これもう、友達でいるの無理じゃない? どう考えたってもう言いくるめられないぐらい悪化してるだろ。


「なあ雪。流石に今日帰るって言った手前、その代わりに雪の家に行くのは印象が良くないと思うんだ」

「じゃあ来ないの?」

「そうじゃない。もし雪が良いというのであれば今週の土曜日行ってもいいか?」


 今まで雪に踏み込みすぎなかったことが、こういう事態を招いた原因だと思う。だからあえて自ら踏み込むことによって、恋愛感情を上回る友情を植え付けるのだ。


 ……決してどうにもならないと思ったから自暴自棄になったわけではない。


「分かった。それで良い」

「助かる。悪いな俺のわがままを聞いてもらって」

「そんなこともない。私も結構強引だったとは思う」


 人によって対応が違いすぎる気がするな、雪は。俺に対してはわりかし甘い気がするが、都に対しては口調も風当たりも強い気がする。


 普通初対面の人とか、よく知らない人に対しては割と丁寧に接すると思うのだが、どうやら雪にはそれは通用しないようだ。……いやよくよく考えてみれば、それが原因で一人ぼっちで居たんだった。


「ええ……本当ですかぁ。風谷さーん私の成績はどうなるんです?」

「それについては考えがあるから、とりあえず連絡先だけくれ。いちいちあって話すだけじゃ埒が明かない」

「連絡先ですか? まあ良いですけど」


 スマホを取り出して前川と連絡先を交換する。


 前川が本当に塾を辞めたいのであればそれに手を貸すことはやぶさかではない。何度も念押しするが、本当に辞めたいならな。


 一応自分が言ったことが原因でこうなったのだから責任は取りたくないが、まだ失敗していない以上最後まで見届けたほうが良いだろう。


「風矢、私とも」



 スマホをかばんの中に戻そうとしたところ、そう雪に言われたので動作を中止する。


 そう言えば雪とはまだ連絡先を交換していなかった。わざわざ聞くのも恥ずかしいとか何やらで聞くのをためらっていたはずだ。


 別に問題があるわけでもないので交換をしようと思ったところで、ふと思い直す。俺に沢山メッセージを送ってくるのではないかと。


 しかし、この状況で断るにもいかないので渋々交換する。


「ありがとう、風矢。これからいっぱい話せる」


 そんな俺の気持ちとは打って変わって、雪は嬉しそうにそう言った。


 それにしても雪の機嫌がだいぶ戻ってよかった。少し優しくするだけで、戻ってくれるのはチョロ……やめよう。


 雪は優しいんだ。


「それじゃ、帰ろう」


 なんとか乗り切ることができた。案外どうにかなるもんだな。



 ◇




 電車を乗っている間、前川と雪のご機嫌取りに奔走していた。二人とも乗る電車は同じだったため、少々予定が狂ってしまったがそれもやっと終わる。


 電車が最寄り駅に到着する。


「あれ、風谷さんもここで降りるんですか?」

「まあ俺もここが最寄り駅だからな」


 やっぱり前川はここが最寄り駅か。


 まあ昨日会った辺りに住んでいるとして最も近い駅はここだからな。だいたい予想はつく。


「風矢、前川の家に行っちゃ駄目。まっすぐ家に帰る」

「寄り道はせずに帰るよ」

「うん。じゃあね風矢」

「また明日な」


 雪と挨拶をして前川と一緒に駅に降りる。


 まあ少し予定が遅れてしまったが、問題はないだろう。


 改札を出てから話を切り出す。


「じゃあ前川の家に行くとするか」

「え、今日は帰るって言ってたじゃないですか。早速雪ちゃんとの約束を破るんです?」

「そうじゃない。一度帰ってからお前の家に行くんだ。嘘は言ってないし約束も破っていない」


 嘘はついていないから問題ないね。


「それに言葉遊びじゃあるまいしそんな……」

「言いたいことは分かる。ただこういうのは嘘をつかないのが大切なんだ」


 人間嘘をつくと大体何かしらの罪悪感を感じるものだが、屁理屈でも嘘をつかないことでそれを感じずに済む。またそれを問い詰められたとしても何食わぬ顔で受け答えができる。


 なんたって嘘なんてついてないからな。やましいことなんてなにもない。


「なんですかそれ。まぁ私に都合が良いから良いですけど。というかどういう心境の変化です?」

「どういうことだ?」

「だって行きたくなさそうだったじゃないですか。それなのになんでこんなリスクを冒してまで行こうとするんです?」


 なんでだろうな。わざわざこんなことしなくても有耶無耶にすれば良かっただけの話じゃないか。


 行きたくなくなってきたな。いや、今更撤回できないから行くけども。


「一度引き受けたからな。やっぱり反故にするのは気が引ける」

「意外と責任感が強いんですね」

「俺は責任を取るのは嫌いだけどな」


 責任なんて嫌いだよ。いつも俺を縛ってくる。


「何気にクズみたいな発言しますね。でも……堅苦しいよりかは良いです」

「そうなのか?」

「まあ、私の父も母も兄も全員堅苦しいというか、真面目な人ですからね。家に居ると息が詰まりそうになりますよ」


 なんか将来悪い男に騙されそうだな。ちょっと心配になってくる。


 とは言うものの気持ちは分からなくもない。俺もどちらかといえば不真面目な方である。もちろん真面目なのは悪いことではないが、真面目さが行き過ぎていると話していて辛い。


「じゃあこの学校を選んで正解だったな」

「そうですね。自由というかまぁ堅苦しくはないので羽を伸ばせます」


 学校が羽を伸ばせる場所というのも良いのか悪いのか判断をし辛いな。


「それなら、部活はどうしてるんだ? 家に帰りたくないなら何かしらに入ってるだろ?」

「実は部活に入ってないんですよね。時間を縛られるのが嫌で」 

「入る部活によっては大変らしいからな」


 クラスに居る連中がそうぼやいているのをたまたま耳にした。まだ学校が始まってから少ししか経っていないというのに大変だな。


「そろそろ私の家に行きましょうか。暗くなってしまいますし」

「そうだな。とりあえず俺の家に帰ってからにしよう」


 一応は約束を守らないと嘘をついた事になってしまう。


「変なところは律儀なんですね」

「嘘をつきたくないからな」


 これは大事なことなんだ。本当に。


嘘を嘘だと(ry


後、七話の時間経過を二週間から一ヶ月に変更しました。理由はそちらの方が都合が良いからですね。そのため色々言い回しなどが変なところが出てきてるかも知れません。申し訳ないです。


とりあえず星五つよろ。ブクマよろ。感想よろ。誤字報告よろ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ