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ラブコメとギャグを足して二で割ったような学校でいかにして高校生活を充実させるか  作者: メルシー


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17 作られた偶然

 前川は上機嫌な顔ででかいパフェを食べている。俺はドリンクバーから適当に飲み物を取ってきてそれをストローで吸いながら、パフェをじっと眺めていた。


「食べたいんですか?」

「いや、俺は良い。好きに食べてくれ」


 俺はパフェを食べたいのではない。パフェの値段が気になるのだ。


 まあ自分で奢ると言った手前、文句は言わないけどな。


「そうですかー。美味しいですよこれ」

「そりゃ良かったよ」

「風谷さんの飲んでるそれは……美味しいんですか?」


 前川が俺が飲んでいる濁った液体をまじまじと見つめる。


 俺が適当に入れて作った謎ミックスジュースだ。味の方は……。


「まあ色のとおりだな。飲めなくはない」

「なんでそんなものを作ったんですか」

「好奇心。ちゃんと飲み干すから安心しろ」


 不味くはない。美味しくもないだけだ。


「せっかく飲むんだったら美味しいものを飲みましょーよー」

「慣れてる飲み物ってあんまり美味しく感じないんだよ」

「そうなんですか。結構飽きっぽい性格なんですね」

「言われてみればそうかも知れないな」


 確かに今まで生きてきて本当に好きなこと以外はすぐにやめてしまっていた気がする。クリアしていないゲームとかも割と家にあるし。


 よくよく考えてみればやらなきゃいけないことは沢山あるな。面倒くさいし楽しくなさそうだから多分やらないけど。


「やっぱり改めて話すと印象が結構変わりますね。トゲトゲした感じの人なのかなって昨日話していて思いましたけど、結構穏やかな人じゃないですか。優柔不断ではありますけど」

「最後のは俺の心に刺さるよ」


 雪といたときと今のこいつの雰囲気は全く違うように感じられる。


 今のこいつはあの時に見せた鋭さを感じさせない、柔らかな雰囲気をまとっている。しいて言えば昨日初めてあったときのような雰囲気だ。


 学校の外だからか? 確かこいつは友達に弱みを見せたくないと言っていたはずだ。学校の中では常に気を張って生活しているが、学校外に出ると気を緩める。そんな生活をしているからこの差が生まれるのだろうか。

 

「でもなんか変なんですよね。言葉に心がこもっていないと言いますか、自分のことなのにどこか他人事なところありません?」

「え、そんな感じするのか?」

「失礼なこと言ってすみません。でも、そんな感じしますよ。何というか心ここにあらずといった感じで、本当にこの人と話しているのかな? みたいな」


 気を緩めたところで鋭い質問が来たな。


 ただ、これには凄く返答がし辛い。どう説明したら良いものか。


 そうだあれでいこう。


「人と話す時に冷静でいようと心がけているせいなのかもしれないな。自分を客観視すると言うかそんな感じで」


 正確には少し違うがおおむね正しいだろう。冷静にいようと心がけているのは事実だ。そうでなければ女の子と話すことは俺の本質からすると多分、難しい。


「冷静さですか。じゃあ例えば……」


 前川がテーブルから身を乗り出し俺の方へ顔を近づける。そして小声で


「今日、家に誰もいないんです。私の家の場所を紹介がてら、私の家に来ませんか?」


 こう囁いた。


「まぁ予定ないし行くかな」


 そう言うと前川は一瞬フリーズする。


「あれ……思ってた反応と違いますね」

「流石にフリがあったら身構えるだろ」

「それでももっと驚いても良いと思いますけどね」


 古今東西で使い回されてきたセリフに今更驚くほど、創作の世界に触れていないわけではない。


 まだ想定の範囲内の言葉だ。


「雪ちゃんのときと扱いが違くないですか? あのときも結構フリというか身構えるべきところではあったと思うんですけど」

「そりゃ百パーセントの好意とからかおうとして言った言葉じゃまるで重みが違うだろ」

「別に全部が全部からかおうと思っていった言葉でもないんですけどね」


 これもからかおうとして言った言葉なのだろうか?


 一瞬止まっていると前川はクスクスと笑い出した。


「そうですそうです、そういう反応ですよ。私が欲しかったのは。冷静にすぐに返答されてもつまらないじゃないですか」

「ご期待には添えましたかね?」

「はい、添えてます」

「そりゃ良かった」


 学校にいたときの殺伐とした雰囲気はどこへやら、ほのぼのとした雰囲気が辺りに漂っている。


 ……性に合わないな。話を変えよう。


「ところであの噂についてはどう思ってるんだ? まぁ流れたばっかりの噂だからまだ実感がわかないかもしれないけど」


 学校でうちのクラスに来たテンションと今のテンションがあまりにも違いすぎる気がする。あの時は感情の変化が激しかったが、今は落ち着いたのだろうか? そうでもない。


「そうですね……あの時ああは言いましたけど、実のところあまり気にしてはいないんですよ」


 気にしていないのか。だったら尚更何故あんなに怒っていたのか、これがわからない。


「どうしてだ? 昼休みはあのことでうちのクラスに来たんだろ?」

「まあそれはそうなんですけどね。ただ……あれは建前と言いますか、あの時写真以外の理由で話しかけに言ったら変に思われると思ったんですよ」


 それにしては随分と荒んでいるように見えたが、あれらは全て建前だったのか。


「随分と演技派なんだな。てっきり本当に怒っているのかと」

「別に怒るようなことでもないですしね」


 デマを流されて少なからず被害を受けているというのに、随分と心が広いやつである。


 大抵のやつは噂を流した本人やその原因となった人に対して敵意が向くというのに。


「そうなのか?」

「人の噂も七十五日と言いますし、もう広まったものに怒ったってしょうがないですよ」


 どっかの俺みたいなことを言ってるなこいつ。


「前川もそう思ってるのか」

「と、言いますと?」

「いや、俺もあまり気にしていないからさ」

「そう言えば、この件に関して風谷さんは何も言っていませんでしたね。実際どう思っているんですか?」  

「だいたい前川と同じだ」


 噂自体は時間が解決してくれると俺は思っている。その噂によってできた歪は俺の行動によってでしか解決できない問題ではあるけども。


 よくよく考えれば、俺の判断ミスの部分もあるが前川の行動のせいもあるよな。主に雪との関係に関してはこいつ割とやらかしてくれてるし。


「な、なんですかその目は。なにか言いたいことあるんですか?」

「いや、もっと雪と上手くコミュニケーション取れなかったのかなって。前川が」

「ええっ私ですか!?」


 オーバーリアクション気味に前川が驚いている。こいつまさかわざとやったんじゃないよな?


「いや、後から言うこともできたのになんであの場で言ったのかと思っただけだ」

「考えてみればそうかも知れませんね。少しの時間に色々詰め込みすぎた感は否めません」


 もうちょっと聞いてみることにするか。なるべく直球に。別にわざわざ聞き出すようなことでもないし、そこまで真面目にやる必要はないからな。


 わざとやっていたとしてもどうせ場をかき乱したかったからとかそういう理由だろうし。


「実はわざとやっていたとか?」

「そんな訳ないじゃないですか」


 笑いながら前川はそう返してきた。

 

 本当にわざとやってないっぽいが逆に怪しく感じる。


「それなら良いんだけどな。まぁ、聞いてみただけだ」

「そうですか。ってそれよりもどうするんです?」

「どうするって?」

「雪ちゃんとの関係ですよ。流石にあのままにはしておけないでしょう?」


 と言われてもな。良い案は未だに浮かんでいない。


 二重の意味で諦めたほうが良いのか、それともあがき続けるべきなのか。なんにせよ落ち着いて考えてみると無理ゲー感が凄い。


 とは言っても現状諦めるという選択肢は俺の中では最悪の場合にしか選択肢にならない。もちろんその時にこの選択肢が選べるのかという問題はあるが。


「どうにか手は打ってみる」

「ほほう。何か考えがおありで?」

「いや、ないぞ」


 そんなものあったらどれだけ良いか。こんなにも悩むこともないだろうに。



「駄目じゃないですか」


 前川は呆れたようにそう言う。

 

 俺としてもそのとおりとしか言いようがない。俺ってこんなに人と接するの苦手だったっけと思うぐらい、どうすれば良いのか分からない。


 その一端には何も失わずに物事を解決しようとわざわざ解決の難易度を上げている俺のせいもあるのだが、そこは譲れない。


「でもまあ難しい問題ではあります。とりあえず、この店から出てから考えましょう」


 気がついたら、前川はパフェを食べきっていた。そして俺も話しているうちに謎ジュースを飲みきっていたようだ。


 割と量あった気がしたんだが、よくこの時間で前川はパフェを食べきったな。甘いものは別腹的なあれだろうか?


 まあ良いか。


「考えるって言ってもこの後どうするんだ?」

「さっきまでの話ちゃんと聞いていましたか? 行くんですよ、私の家に」

「冗談だったんじゃないのか?」


 流石にほぼ初対面のやつを家に連れ込むとは思わないし、そんな非常識なことをやらないとは思うんだけどな。


「言ったじゃないですか。全部が全部からかおうとした言葉じゃないって。さ、行きますよ」


 確かに言っていたけどさぁ。冗談だと思うじゃないか。


 これから行くの? まじで言ってるのか?


 とりあえず会計だけは済ますことにする。


「いやー人のお金で食べるものは美味しいですね。ごちそうさまです。ささ、駅早く駅に向かいましょう。暗くなってしまいます」


 前川の言葉に若干イラっとするが、これからのことを考えると憂鬱になってそれさえもかき消される、


 女の子の部屋に入るのは流石にハードルが高い。


「今からそんな顔をしないでくださいよ。ちゃんと部屋も綺麗にしていますし安心して下さい」

「そういう問題じゃない」

「じゃあ、どういう問題なんですか?」


 そんなことを話しながら店を後にする。


「いや、何も問題ないな。前川の部屋に行くのは」


 そう、何も問題ではない。そう思うことで俺の心は保たれる。

 

「何が、問題ないの? というか都の部屋に行くってどういうこと?」


 前提条件として、前にも言った通りこのファミレスは学校近くに存在している。つまりうちの学校の生徒がこの近くを通ってもおかしくはない。


 そう、その通った生徒が俺と仲の良い人であったとしてもそれはおかしくはなく、そしてそれが女子生徒だったとしても変ではない。


 それが、雪だったとしても、偶然俺たちが店を出た瞬間に通りがかかる可能性はゼロではない。


 偶然って恐ろしいな。そしてこれから起こることも恐ろしい。


 ……いや、出待ちはないだろ。


二人がファミレスに入って話しているのをずっと外から見ていた雪ちゃんの健気さに震えろ。


とりあえず星五つよろ。ブクマよろ。感想よろ。誤字報告よろ

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