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ラブコメとギャグを足して二で割ったような学校でいかにして高校生活を充実させるか  作者: メルシー


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14/29

14 境目

 昼休み。クラスメイト達はいつもと変わりなくそれぞれ好きな人と一緒に席をくっつけたり、食堂へ行ったりして授業の疲れを癒やしている。そこに変化はない。


 人と言うものは存外他人……特に自分がよく知らない人には興味がないものだ。例えば友達から「○○ちゃんって××くんと付き合っているらしいよ」という話をされたとしてもそれが名前を聞いたこともない人であれば「ふーん」ぐらいで終わる。


 つまるところ俺が言いたいのは昨日のリークは一部の例外を除いて大多数は興味がないのではないかということだ。

 

 クラスを見てもそれは分かる。あれだけ入学当初はラブコメ脳だった奴らも、誰もこの件について反応していない。それに殆どの生徒は俺に対して変な目で見てくることもないし、誰も何も言ってこない。


 朝の真の言葉は多少表現がオーバーだったのかも知れない。


「風矢、今日のお弁当」

「いつもありがとな」


 雪からお弁当を受け取る。流石に卵事件はあれ以来起こっていない。


「そういう約束だからお礼はいらない」

「お礼ぐらい言わせてくれ。やっぱり人からものを貰うって凄く嬉しいからな」


 それにお礼を言わずにいると相手にストレスがたまって、不仲にになる可能性が出てくるからな。例えそれが相手がお礼はいらないと言ったとしても。


「……分かった。じゃ、改めてもう一度言って」


 おおう。また変なことを言うな。


「いつもありがとな」

「うん。どういたしまして」


 このやりとりに何の意味があるのかは分からないが、何やら満足そうなのでよしとする。


 「いただきます」といって食べ始めると、雪がいつもとは違う少し砕けた雰囲気で話を始めた。


「最近、ネットで新しくラブコメものの作品を読み始めた。あれは、良い」


 いつもより声が明るい。それから察するによっぽど面白い作品だったのだろう。分かる。俺も面白い作品を見つけて人に紹介ときは嬉しくてテンションが上がってしまう。


「どんな感じの内容だったんだ?」

「生徒会にスカウトされた主人公が、美少女生徒会長と学校の改革をしていく話だった」


 ほう、生徒会にスカウトとな。何かどっかで聞いたような話だな。


「露骨なラブコメじゃなくてちょっとした隙間に挟み込まれる生徒会長と主人公のラブコメ的な展開がいじらしい。普段はキリっとしてる生徒会長がちょっとしたときに見せる可愛らしさが文章から伝わってきて実体験を綴ってるんじゃないかと思うぐらい出来の良い作品だった」


 雪ってこんなに喋るんだな。しかも結構早口で。


 まあそれはともかくとしてこんな作品俺なんか読んだことある気がするな。


「因みに題名と作者の名前は?」

「えっと……題名は華麗なる生徒会の日々で作者の名前が……本屋の倅?」


 本屋の倅ってあいつの九十九のアカウント名じゃねえか。それに思い出したぞ。最近三話まで読まされた奴だこれ。これの感想を書けって言われて三話じゃ書けねぇよってキかけたけどなんだかんだ言って書き切った奴だ。あいつちゃんと書き続けてたのか。


 良かったな九十九。雪からの評判が滅茶苦茶良いぞ。


「どうしたの?」

「いや、何でもない。にしても良さそうだなそれ」 

 

 ちょっと驚いてるせいで適当な返事しか出来ない。


 あーでもマジか。そういうことあるのか。意外と世界って狭いものだ。


「うん。風矢も読んでみると良い」


 そういえば九十九の作品は読んで欲しいと言われた所だけ読むだけで、しっかりと連載を追ったことがないな。


 家に帰ったら読んでみるか。

「それでその作品の中で……」

「よ、ようやく見つけました!」


 不意に教室のドアが開き、どこか聞き覚えのある声が教室内に響き渡った。


「風谷さ……ってなぁに女の子とイチャイチャしながら暢気にお弁当食べてるんですか。ってしかもそれ中身同じってまさか作ってきて貰ったんですか!?」


 昨日の一般美少女だった。


「風矢……知り合い?」

「いや……まあ……うん」

「なんでそんなに歯切れが悪いんです」


 どうにも怒り心頭のようだ。いやまぁ騒ぎが騒ぎだからね。勝手に浮気相手にされたらたまらないよね。被害者として扱われても嫌だよね。


「いや……名前聞いてないから知り合いと言って良いのかどうか」

「そういえばそうですね。私は前川都と言います。以後お見知りおきを」

「ええと、じゃあ前川なんでここに来たんだ?」


 大方の予想はついているが聞いておいた方が無難だろう。間違って突っ走ったら嫌だ。


「そんなの決まってるじゃないですか。昨日撮られた写真のことですよ」

「週刊誌に撮られた芸能人みたいなことを言うなぁ」

「何、冗談言っているんですか」


 怒られてしまった。うーむ、アレだな物事の捉え方にどうにも差があるような感じだ。


「と言うか何故そんなに落ち着いているんです。風谷さんも当事者なんですよ?」

「特に実害がないからかな。正直、前川には悪いと思ってるけど」


 元からこの学校に友達など二人しか居ない。その上クラスメイト達と話すことなど殆どないため少数の人間から変な目で見られる以外は不都合がないのだ。


「強がりですか?」

「何故そう思う」


 別に辛いとかそう言うことはない。怒ることも何もない。この出来事によって俺の生活が何か変わることもない。だったら俺が何か悩むこともないだろう。


 こいつもなかなかに変なことを聞いてくるものだ。


「昨日見た顔と比べて少し顔がこわばっているように見えたので」


 なかなかに人のことを見ているな。いや、そうじゃない。顔がこわばっているから何だと言うんだ。あまり知らない人と話すときは緊張するだろう。


 ……この話を長引かせるのは得策じゃないな。


「まぁそうかも知れないな」

「そうなの?」


 雪が話に乗ってきてしまった。今日の朝、辛いことがあったらすぐに言うみたいなことを言ったばっかだったのを忘れていた。


 雪に顔を近づけて小声で話す。


「言葉の綾みたいなものだよ」

「なら良い」


 これで良し。


「何イチャイチャしているんですか。昨日言いましたよね、女の子を口説くのはこれっきりにして下さいって。なんで女の子と喋っているんですか」


 ええ……。口説く云々は置いておいて俺、女の子と喋るのも駄目なの?


「都、風矢は私の友達。喋っていてもおかしくない」

「あれっ恋人じゃないんですか? おかしいなみんな私を騙して……?」


 前川は混乱しているようだ。


「風矢、私たち恋人なの? 嬉しい」


 何故嬉しがる。勝手に人からお前らは恋人だと言われて良い気はしないだろうに。と言うか俺はまだ恋人などという関係に縛られたくない。


「いやいや、違う。恋人じゃないぞ友達だ。恋人な訳がない」


 露骨に雪は落ち込んだ顔をする。


「そこまで……否定しなくても……良い」

「え、いやそれは……え? どうしてこうなった?」


 雪が今にも泣き出しそうな顔でこちらを見つめる。


 え、何、冗談じゃないの? え、本気で好きなの? あれ……おかしいな友達じゃなかったのかな。男女の友情って存在しないの?

 

 いや、待て冷静になれ。


「うわ、女の子を泣かせましたよこの人」


 あ、やっぱり端から見たらそうなる?


「ちょ、泣かないでくれ。別に嫌いとは言ってないから」

「……本当?」

「ああ。嫌いな訳ないだろ」

「私のこと……好き?」


 友達としては好きだ。そうあくまで友達として。


「そうだ」

「愛してる?」


本当に急にどうしたんだ。こいつもしかしてラブコメ読んだからそう言う思考に染まっているのか?


「愛してる」

「いや、凄い棒読みですね。絶対気持ち入ってないですよねその愛してる」


 ……毎度のことながらこいつの洞察力はどこから来ているのだろうか? これまで生きてきて見抜かれなかった嘘とかが真実に至らないまでも殆ど見抜かれている。


「愛してる……。嬉しい。愛。」


 不味い。どうしてこうなった。どこを間違えた。


 あ、そう言うことか。


「ちょっと待て雪。親愛の愛と恋愛の愛を混同してはいけない」

「……どういうこと?」


 紙一重のところで話をこちらに引き込むことが出来た。


「あんまりこう言うことを言うべきではないのかも知れないけど、雪ってあんまり人と関わってこなかっただろ?」

「うん」

「んで、そうなると人との距離感とかも分からない訳だ」


 人との距離感が分からない人のパターンは二種類ある。極端に人と距離を置く人と極端に人との距離が近い人だ。


「で、今の雪は距離感が分からなくて急に距離を人と詰めすぎてるんだ。そうなると友達としての付き合いと恋愛としての付き合いの境目が分からなくなることがある。本来なら長い時間をかけて段々と心を打ち解けていくものだからそこら辺が分からなくなることは少ないはずなんだけどな」


 そう、人との距離感が急に近くなると相手に対してどのような感情を抱いているのか分からなくなることが多々ある。嫌いか好きかどうかも含めての話だ。


 勿論、それが良い方に進むこともある。例えばお見合いなどは上手くいけばそのまま結婚などに進むこともあるしそこまで行かなくても恋人の関係になったりすることもある。


 しかしそれはあくまで互いが付き合いたいから問題ないだけなのだ。それが恋愛感情ではなく友情だったとしても付き合うという目的がある以上さしたる問題にならない。


 しかし、そうでない場合は自分の感情を正確……とは行かないまでも大体把握していないと後悔する羽目になる。後で、気付いた時に思うのだ。もっと違う関係で居たかったと。


「だから、もう一度時間をかけて考えてみて欲しい。それが恋なのか、それとも友達に対する独占欲なのかを」

「この気持ちが嘘?」

「違う。その気持ちがどこから来ているものなのかって話だ」

「分からない」


 分からない……か。そりゃそうだ。そんな自分の感情がどうしてそうなっているのかが簡単に理解できるのであれば、この世の悩みの半分は消えているだろう。


「今すぐに結論を出す必要はないぞ。ご飯でも食べてゆっくり考えよう」

「……分かった」


 そろそろ食べ終えないと昼休みが終わるしな。


「あ、私もまだ食べて居ませんでした。ご一緒させていただいても?」


 よくこの雰囲気でそう言えるものだ。案外前川は図太いな?


「良いよ、都」


 意外にも雪が許可を出す。何か思うところがあるのだろうか?


「ありがとうございます」


 前川はどこからともなくパンを取り出した。

 そして食べる直前こう耳打ちをしてきた。


「ちょっと説教っぽいですが上手く煙に巻きましたね」


 本当になんなんだこいつは。昨日はあんなに弱々しかったのに訳が分からない。

主人公君の変化に皆様はお気づきでしょうか?


とりあえず星五つよろ。ブクマよろ。感想よろ。誤字報告よろ





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