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ラブコメとギャグを足して二で割ったような学校でいかにして高校生活を充実させるか  作者: メルシー


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12 誰でも分かる悩み解決の裏技

 俺は基本責任をとりたくない。人の人生なんて背負うことは出来ないし、後から俺の判断が間違っていたというときに、問い詰められるのが嫌だ。


「初対面の相手にずいぶんなことを言うじゃないか」


 しかし、知らない相手であれば変に気負う必要もなく話すことが出来る。これからの人間関係がこじれようがどうなろうが、さして影響はないからだ。


「貴方の言えたことですか? 人の家庭の事情を探ろうとしている貴方の」

「家庭の事情か。何だ家出でもしているのか?」

「な、何を言ってるんですか」


 偶然にも当たりを引いてしまったようだ。


「何があった? 親と喧嘩でもしたか?」

「そんなんじゃありませんよ。……って違う。何しれっと人の深いところまで探ろうとしているんですか」

「言っただろ? 心配だって」


 他人の家庭環境などなかなか知る機会がないから、少しドキドキしている自分がいる。そんなことを聞けるポジションにいなかったからな。広く浅い交友関係だった。皆に信頼されていた訳でもない。


 そんなことも聞く暇がなかったのもあるな。あのときはゲームに読書といった娯楽が楽しくてそんなことをしている時間がもったいない位だった。


「怪しいものですね。しれっと人の事口説こうとしていません?」

「一割ぐらいは」

「そうですよね……ってえ? 一割は本当なんですか!?」 

「いや、流石に本気だったらやばいだろ」


 確かに可愛いしできることなら……止めよう。短い間の仲だ。そこまで情を移したり入れ込んだりすることではない。


「からかわないで下さいよ。というか一割もないんですか?」


 不満そうにこちらをじっと見つめてくる。


「……どうだろうな」


 あんまり断言すると不信感につながる。


「さっきまでの威勢はどこに行ったんですか?」

「いや……それは」

「自分で言ってて恥ずかしくなっちゃいました? 恋愛経験の無さがにじみ出てますよ?」


 俺の持論ではあるが、人に弱みを見せるのはなかなか難しい。相手のことをよく知らないと完璧超人に見えてしまうからだ。それ故に自分の弱みを見せて同じ人間だと認識させることが大切になる。

 

 俺が少し言い詰まったり、歯切れが悪かったりするのはその効果を狙ってのことだ。顔を見つめられて恥ずかしかったとかではない。キャラクターを演じているときにそんなミスはしない。しないったらしない。


「まあモテたことはないな」

「正直に言います? それ?」


 隣で座っている奴は笑いながらそう言う。


 急にどうしたんだろうか。緊張状態が解けた? 何せ対人経験が少ないので分からない。中学時代はこんなことをしていなかったからな。今は暇だからやっているだけだ。


「私、塾を辞めたいんですよ」

「え?」


 いや、話してくれること自体はありがたいが、随分と唐突だ。俺の理論が正しかったのか、それとも別の理由が何かあったのか。


 まあそれは良いだろう。結果さえ来れば後はこちらのものだ。


「散々引っ張ってこれってびっくりしましたか?」

「いや……まぁ」


 別に他に何かを想定していた訳でもなかったが、割と身近な問題で少し驚いた。俺も受験を終える前は塾に行っていたからな。


 身に余ることを言われなくて少し安心したが、逆に非日常を期待していた自分がいる。


「自分でも分かりますよ。小さな問題だって。……でも辞めたいって言ったら反対されて。行った方が良いという考え方も分かりますけど……でも行きたくないんですよ。だって高校生にもなって塾に行くの面倒臭いじゃないですか。帰るのも遅くなりますし。自分の好きな空いてる時間が欲しいじゃないですか」 

「なるほど。それで親との関係もあるから家に帰り辛いからここにいると」

「まあ……端的に言うとそう言うことですね」


 どうしたものか。俺の場合は親が放任主義だから辞めたいと言ったらすぐに辞められたが、親が反対しているとなると分からないな。


「具体的になんて言われたんだ?」

「あんたは自分で勉強が出来ないんだから塾に入っておきなさい、とか成績が落ちたら戻すのは大変だぞとかですね」

「結構辛辣だな」


 でも、子供のことを思ってくれているのは確かだ。どこどこの大学に行くために絶対入りなさいとかではなく、子供のことをしっかり見て判断している。頭ごなしに否定している訳ではない。まだやりようはある方だ。

 

「兄も、入っていた方が良いと親の味方をしていて」


 辞めた俺が言うのも何だが、ぶっちゃけ塾には行っておいた方が良いと思う。自分で勉強できる習慣がついていないとやらないからな。俺はついていないのでここ一ヶ月近く課題以外で勉強していない。


 ただ……こいつの願いはあくまで辞めること。必ずしも正しいことを言うことが正解ではない。


「兄のことは好きか?」

「急にどうしたんですか? いやまあ色んな所で上から目線で物事を言ってくるので嫌いですけど」


 嫌いか。やっぱり弟にも仲の良い友達みたいな感じで接した方が良いのだろうか? 上から目線で人に何か言っても信頼を得られる訳ではないか。


「そうか。兄のことが好きなら心苦しいのかと思ったがそれなら安心だ」

「兄のことが好きな妹なんてなかなかいませんよ。創作物の見過ぎです」


 そうかいないのか。でも現実世界で「お兄ちゃん大好き!」みたいなことやってる女の子を見つけたら近づきたくないから、それで良いかもしれない。


「まあそれは置いておいてだな、どんな感じで交渉したんだ?」

「普通に塾を辞めたいって言っただけですよ? それだけであんなに言われるとは思いませんでしたけど」


 塾を辞めたいと言っただけか。それならあの方法が使えるかも知れないな。


「一つ思いついた方法があるんだけど良いか?」

「唐突に思いつきますね」


 唐突なのはお互い様だ。


「単なる思いつきだからな」

「それで? どんなものなんですか」

「大人相手……というかこちらのことを子供扱い、未熟扱いしてくる人に理屈は通用しない。だから感情とかそっち系で訴えていくしかない」


 ぶっちゃけ幾ら理屈をこねてもことこの話に限っては不利だしな。


「だから今回は俗に言うドア・イン・ザ・フェイスというテクニックを使って交渉していこう」

「アレですか? 大きな要求から次第に小さい要求にしていくって感じの」

「それだ。今回で言う大きい要求というのがただ塾を辞めるということになるな」


 頭ごなしに駄目だと言っている訳でなく理由をちゃんと言っている以上一瞬迷ったんだろう。それなら確率も高くなる。


「なるほど、条件をどんどん付けていくんですね」

「そういうこと」


 ただ辞めるのは難しい。親にも勉強をしなくなるんじゃないかという心配があるからな。

だから譲歩を狙えるぐらい、相手が納得するぐらいの条件付けをする必要がある。


「一番最初は中間試験で半分よりも上の順位になるからって言うことにしよう」

「何故半分より上なのか聞いても?」

「ここよりも小さくするとまともに取り合ってくれなくなる。最低限理屈をこねて理由付けが出来る最低ラインがここだと思う」


 先ほど理屈で丸め込めないと言ったが、アレは感情的に受け付けないことを無理矢理納得させる際の話だ。今回の理屈をこねる行為とはまた別の話である


「なるほど」

「その次は三分の一、その次は四分の一で交渉していこう」

「それでも駄目だったらどうすれば良いんですか?」


 こいつの成績がどの程度か分からないが、塾が必要な程度には怠惰な奴である。自主学習で出来るのはここぐらいまでではないか。知らんけど。


 この最終ラインを超えた場合の方法はもう一つしかない。


「実力行使に出よう。半狂乱で暴れ回れば流石に言うことを聞いてくれるはずだ」

「いきなり脳筋みたいなこと言い出しましたよこの人」

「まぁ最終手段の一つだ。本当に家出すると言う選択肢もあるにはあるけど」


 しかしうら若き乙女が一人で外泊というのも危険だろう。ぶっちゃけ最終ラインを超えたら諦めるのが賢い選択だと思うが。


「本当に家出ですか……。その時は貴方の家に泊めてくれますか?」


 至って真面目な顔でそう聞いてくる。


 いきなり何をこいつは言っているのだろうか?


「冗談ですよ。出会ったばかりの人にそんなこと頼む訳ないじゃないですか」 

 

 少々フリーズしていると急に笑い出してそう言ってきた。


 中学生の時なら冗談で流せていたが、いつも冗談なのか本気なのか分からない奴と話しているので段々とそこら辺の感覚が麻痺してきている。雪め、許すまじ。


「何故ですか?」

「何の話だ?」


 笑い出したかと思えば急な真面目なトーンに戻る。情緒不安定な奴だ。まぁ、今こいつのおかれている状況を考えればそうなる気持ちも分かるが。


「何故、ここまで初対面の人の悩みとかを聞いてきたんですか? ほっとけなかったとかふざけた理由じゃなくて良いです」


 やっぱりネタとして受け取られていたか。まあ本心からの言葉ではないからな。ここで本当のことを言っても良いが、少し濁しておく。


「暇つぶしだよ」

 

 むやみに自分の情報を人に話すべきではない。こいつが三月達と仲が良い可能性が無きにしも非ずだからだ。


 ……そう考えるとやっぱりここまで話したのは悪手だったか? まあ良いや。どうせ夜に男と会っていたなんて友達にも話さないだろう。からかわれるからな。


女の子はジト目で俺のことを見つめてくる。

 

「……まぁそう言うことにしておきましょう」


 絶対疑われているな。勘の鋭い奴だ。だが、俺は嘘は言っていない。真実も言っていないだけだ。


「そうして貰えると助かる。じゃあ頑張れよ」

 

 ベンチを立つ。この公園に少々長くいすぎた。塾帰りの高校生ぐらいの人達がもう何人も公園の前の道を通るのを確認している。


「女の子を口説くのはこれっきりにして下さいね」 


 口説いてねえっての。

名前の分からない女の子ちゃんさぁ。最後の言葉ってそう言うことだよね?


とりあえず星五つよろ。ブクマよろ。感想よろ。誤字報告よろ



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