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ラブコメとギャグを足して二で割ったような学校でいかにして高校生活を充実させるか  作者: メルシー


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11/29

11 夜のお話

 夜風に吹かれて少し肌寒く感じる。まだ四月。春になったとは言え未だに汗をかいた体で外を出歩いていると風邪を引きそうだ。


 頭はもう充分に冷えた。俺は本当に何を思って走ろうと思ったのだろうか。気がつくと家から結構遠いところまで来ていた。時刻は八時を回り、いつもなら夕食を食べ終えている時間帯だ。


 そう言えば、夕食を食べていないな。気がつくとお腹が空いてくる。コンビニか何かで食べ物を買いたいところだ。

 辺りを見回すと少し離れた所にコンビニの看板が見えた。走ったせいで棒のようにも感じる足にムチを打ち、コンビニへ向かう。

 店で肉まんやら飲み物やらを買って来た道を戻る。


 歩きながら食べるのもアレなので近くにベンチでもないかと思い探すと、先ほど俺がいたところからコンビニまでの道中に小さい公園があった。公園ならベンチがあるだろう。


 公園と言えば一つ思い出がある。まだあの馬鹿どもとつるんで居なかった頃、暇だったので家の近くの公園に本を読みに行ったことがあった。何故公園で本を読もうと思ったのかは定かではないが、多分そんな変なことをし始める位暇だったのだろう。


 それで音楽を聴きながら公園のベンチに座って本を読んで居たら、偶然、本当に偶然当時小学六年生だった弟が女の子と一緒に歩いているのを見かけた。その時はもう弟がモテることを、バレンタインの日に貰ってくるチョコレートの量で察していたので、ませガキがと思いつつも特に何を思うこともなかったが、実際に女の子と喋っている所を見たことがなかったので観察してみることにしたのだ。


 別に俺はやましい気持ちはなかったが、ばれたら弟に迷惑がかかるかも知れないと思ったので、隠れてみることにした。後にそれが賢明な判断だったことが分かるがそれはひとまず置いておいて、弟達を観察していると大体の事情が見ているだけで分かってきた。


 どうやら女の子の方が告白しようとしているらしい。それに気がついた俺は弟に彼女が出来る瞬間が見られるのではないかと非常にワクワクしていた。なかなか他人の恋愛事情などを見られる時はない。今でこそ内心でクラスメイト達のことをラブコメ脳と馬鹿にはしているが、当時はラブコメのラノベを大量に読みあさっていたこともあり、それこそ本当にラブコメ脳になっていたのだ。


 それにお相手の子が小学生ながら可愛い子だったと言うのもある。それ故に非常にドキドキワクワクしていたのだが、あろうことか弟は告白を断ったのだ。


 馬鹿にしたり、笑ったりしてごまかすことなどなくしっかりと「ごめんなさい」と「付き合えません」とそう口にしていた。気になりすぎて割と近くまで近寄っていた俺は、その言葉をはっきりと聞くことが出来た。


 その言葉を聞いた女の子は涙を流し、泣きながらどこかへと走り去っていった。


 と、普通ならここで話が終わるのだがこの話には続きがあり、弟が帰ろうとした直後どこからともなく同年代の女の子達が出てきて、なんで断ったのかと弟をボコボコにしていった。


 告白を断ったらボコボコにされていくのだ。幾ら弟が運動神経が良いとは言え急な奇襲に加え女の子だ。反撃も出来ない。無抵抗にボコボコにされていく弟を見て俺は笑い転げた。


 それに加えその時ほど隠れていて良かったと思っていたことはない。ばれたら確実に俺にまで矛先が向いていた。弟は頭が回るので絶対に俺の名前を呼んだに違いない。そして俺まで巻き込まれるのだ。


 兄なら止めた方が良いんじゃないの? と思う人も居るかも知れないが、寧ろ中途半端なところで止めた方が、大きな歪みとなって長期にわたる問題になってしまう。弟のことを想う優しい兄は常に正しい判断をするのだ。断じて怖かった訳では無い。


 思えばその時からそういう大きな事件は弟には起きなかった気がする。それで人間関係についてまた一つ経験を積んだんだろう。……女性不信になってもおかしくないのによくならなかったな。

 これが俺の公園にまつわる話だ。

 

なんてことを考えながら歩いていると、公園に着いた。ベンチはあるだろうか。ある、あるが……先客がいたようだ。まあ隣に座れば良いか。どうせ知らない相手だ、特に気負う必要もない。しかし……何故八時にこんなところに居るのだろうか? まあいいや。


 近づいてみると先客の姿が見えてきた。どこかの学校の制服を着ている。これは……。


「永東高校」

「え? 誰ですか?」


 気付いたら声が出ていた。永東高校。俺が通う高校だ。そしてこいつは永東高校の制服を着ている。暗くても、永東高校のロゴを見落とすことはなかった。制服についている学年章を見るに同学年だろう。


 しまったな。同じ高校の制服を見つけたからつい、声に出してしまった。どうしたものか。このままでは不審者に間違われてもおかしくはない。


「永東高校一年生の風谷風矢。ほら……」


 ちょうど財布に学生証が入っていたことを思い出し見せる。これでひとまずは大丈夫か?


「あ、どうも、こんにちは。それで私に何の用でしょうか」

「いや、たまたま同じ制服を見つけたからつい、声が出て……」


 なるべく正直に言った方が良いだろう。そっちの方が上手くこの場を切り抜けられそうだ。


「そうですか」


 会話が止まる。それもそうだ、特に理由もなく話したのだから、仲が良い友達でも無い以上話が続くということはない。会話の種がないのだから。

 ……沈黙はきついな。


「なあ、肉まん買ったんだけど食べるか? 何も食べてないだろ?」

「どうしてそう、思ったのですか?」

「え、どうしてって……家に帰ったら制服から普段着に着替えると思ったからさ。家で夕食もとってないだろうと思ったんだよ」


 間違ってたら恥ずかしいな。そんなに考えて言った訳ではないし。


「正解ですよく見ていますね」


良かった。外れてはいなかったようだ。

 

「たまたまだ。で、どうする? 食べるか?」

「頂きます。お察しの通り何も食べていないので」


袋から肉まんを一個取りだし渡す。ついでに俺も、肉まんを食べる。弟に差し入れにでもいってやろうかと思って買ったが、まぁあいつは別に良いだろ。

 ……よく見ず知らずの相手から貰ったものを食べられるな。意外と図太いのか? こいつ。


「温かいですね。少し寒かったのでありがたいです」

「それは良かった」


 何を話したら良いのかが分からない。というか話しかけてすぐに立ち去った方が賢明だった。全く何故、午後八時になってまで外で女の子と話をしなければならないのか。


 ……八時か。


「なんでこんな時間に夕食も食べずにここに座ってたんだ?」

「それは貴方にも言えることでは?」


 逆に質問されてしまった。まあ別に俺の話はしても構わないからするけどさ。


「いやー何というか、ランニングしてたら何か知らない所まで来ちゃってさ。とりあえずお腹空いたから食べ物買って、座ろうとしたらここに来たって訳だ」


嘘は言っていない。それ以前の経緯を言っていないだけだ。

 

「随分すらすらとここまでの流れを話しますね。普通少し戸惑ったり思い出したりするのではないでしょうか。しかもこんな時間にランニングをする意味が分かりません。作り話でしょうか」


 いきなり人の事を疑ってくるな。人から貰ったモノはすぐに食べるというのに、こういう人の話には敏感なのか。どこかチグハグさを感じるな。


「作り話ではないよ。まあちょっと人間関係で迷ってたから、気分転換に走っただけだ」

「怪しいものですね。暗いですし女子高生を暗がりに連れ込んでイケナイことでもしようと画策したんじゃ無いんですか?」


 おう、いきなりぶっ込んでくるな。


「人を犯罪者みたいに言うなよ。それにそれだったらなんで肉まんを食べたんだ? 変な薬が仕込まれてるかも知れないだろ」

「それは……肉まんは美味しいじゃないですか」


 理由になってねぇ。まあでも真面目に言ってる訳では無いだろう。多分自分の話から話をそらす……というかその話に近づけない為に言ってると思う。


「ほら、俺の話はしたぞ。少しは話してくれても良いんじゃないか?」

「何をです?」


 しらばっくれる気か。

「いや、なんでこんな時間にここにいるのかって話だよ。別に遅すぎる時間帯って訳でもないが、一人で公園のベンチに座っているような時間でもないだろ」

「何ですか? 乙女のプライバシーに踏み入りたいんですか? 見ず知らずの相手に失礼ではないですか?」

 

 ええ……。いやまあそうっちゃそうだけどさ。確かに俺が話したら向こうも言うみたいな話では無かったし、話す必要もないが……。そこまで言われると余計気になってくるな。


「肉まん」

「酷い。あげたものの代金を後から請求するなんて。悪徳商法の天啓じゃないですか。悲しいですよ。風谷さん」


 涙目アンド上目遣いでこちらを見てくる。なかなかに策士だなこいつ。不細工がやったらアレだが、可愛いから様になっている。


「何をそこまで意固地になってるんだ」

「何でもかんでも自分の話が出来る訳ないじゃないですか! 私だって話したくないことの一つや二つあるんですよ! それにまだあったばかりの人に話すようなことでもないですし!」


 その通りである。ぐうの音も出ない正論だ。だが……そこを無理矢理通すのが俺の得意分野だ。特に理由もないし、こいつのこともよく知らない。だが、だからこそ気になるというものだ。知りたいと思うものだ。


 人と話すことで考えが纏まり、思いつかなかった新しい考えが見つかる。もしかしたら俺が陥っている状況の打開策が見つかるかも知れない。


 よく知らないからこそ話せることもある。話したいこともある。仲の良い友達よりも深い話が出来ることもある。


「だけど、話してはいけない理由もないだろ? そう言うってことは何かしら悩みを抱えているってことだ。誰かに話して落ち着くってこともあるだろう。仲の良い人に相談出来ないことも、知らない人にだったら恥ずかしげもなく話すことが出来る。だって知らないからな。相手のことを慮らなくても良い。後にいじられることもない」

「急に何を言ってるんですか」


 止めろその言葉は俺に効く。俺だって何を言ってるかなんて分からない。分からないから煙に巻くことができる。冷静に返されたら困る。


「俺にだって引けない理由がある」

「なんでですか。なんで引けないんですか」


なんでだろうね。俺にもわからんよ。


「だって……そんな酷い顔をしてる奴のことを放っておける訳ないだろ」


 ここまで言えば大丈夫だろう。強い言葉を使って相手のことを真剣に考えているように見せる。テンプレでも何でも良い。想いが籠もってなくてもそれで良い。そうすれば何かしら思うところがあるはずだ。


 真剣な態度を笑っても良い。その言葉に感銘を受けるでも良い。現状の雰囲気を打破することが話して貰うきっかけになる。


 すると笑い出した訳ではないがこいつは少し軽い雰囲気でしゃべり出した


「何ですかそれ。急に真剣になって。馬鹿みたいじゃないですか」


 まさか本当に上手くいくとは思わなかった。何があるか分からないものだ。 

主人公君は着実に墓穴を掘っていきます

とりあえず星五つよろ。ブクマよろ。感想よろ。誤字報告よろ

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