お熱いカップル
誰かが言った。全身の血液が豚骨のだし汁でできた豚がいると。
誰かが言った。アメリカのある場所で、十数年に一度ハンバーガーの形をした宇宙船が訪れ奇妙な現象を起こすと。
これは、とある熱い、ジューシーな男女のお話し。
「ちょっと待ってパティ、さっきもその話は聞いたわ。いい?こっちは証拠も用紙も揃ってるの。あなたは此処にサインをするだけ、簡単でしょう?」
「ちょっと待ってよレタスィー。こんなん無いじゃないか。もう離婚なんて、そんな、いくらなんでも話が早すぎるよ」
「早めたのはあんたでしょ?妻がいるのに。結婚してまだ時間もたってないのに……。普通女の子家に呼ぶ?しかもよりによってトメトかよ」
「だから誤解だって。トメトはちょっと用事があったから呼んだだけだよ。勿論君を一番愛してるよ」
「やめて!」
レタスィーは、抱擁しようよしてくるパティの両手を払いのけるた。そして、ん、と言いながら離婚届を持ち上げた。
「やめてよレタスィー、そんなもの見たくないよ」
「こっちだってやよ。あんなことされたらどんなレタスでも水分がどっと出るわ。ていうか、そのあだ名止めてよね。もう恋人同時じゃないんだから、ちゃんとレタスって呼んで。というか、本当ならもう話したくもないし、顔も合わせたくもないわ」
「そんなのあんまりだ!僕たち仕事仲間だろ?」
「仕事仲間、っていう建前でまた近づいてくるつもり?今度はその、程よい赤みくらいじゃ私は騙されないわよ」
「そんなの言われたって……。というか、こっちにも怒る権利はあるんだぞ」
「はぁ??あんたパティ?自分から裏ぎっておいてバッカじゃないの。熱くなんないでよ」
「そっちこそ、さっきからぷんぷんで熱くなってばかりじゃないか!」
「私が起こるのは当たり前でしょ!もう、汗つけないでよ!」
「しょうがないだろ!仕事なんだから!」
「もうほんとむかつく!」
「なぁ、やりなおそうよレタスィー、僕たち、きっともう一回出来るって」
「はぁ、そんなの、あるわけ……、あるわけ……」
レタスィーははっとした。程よい焦げ目、あふれ出る肉汁、そう、彼は、パティは、いいミートボーイ(女の子のニーズにmeetしてるboy)になっていたのだ。
「そ、その、あなた。なんだかとっても魅力的だわ」
「君もだよレタスィー。ソースと僕の肉汁が絡み合って、とっても綺麗だ」
迫るパティ、それを包むようにはじけるレタス。これぞ美しきハンバーガー黄金比。
「わかった、今回のことは肉汁に流してあげる。もう、パティパティったらまた私の芯を奪うのね。次の機会はないわよ」
「うんレタスィー。もう二度とトメトは呼ばない、約束するよ」
二人は熱い肉汁を交わした。
そのパティの上で、トメトが鋭い目でパティを見ていたとは知らずに……
そして、わずかな時間の間に鉄板の上で繰り広げられた三角関係をよそに、このハンバーガーにかぶりつくものが一人……。
「だから僕は、ビックマックを食べた」
完