第84話 『大迷宮』15階層、緑ゴブリン
オーガ?をたおし、宝箱をゲットした俺たちは、15階層へ下り立った。
『新階層チェック球』を『キューブ』に収納していたトルシェに、
『忘れず、『新階層チェック球』をひねって、15に目盛りを合わせておいてくれよ』
「はーい。……おっ、ちゃんと15の目盛りに矢印が動きました」
『よーし、それじゃあ、先に進むぞ』
進むとは言ったが、先頭を進むアズランに指示を出さなくてはいけない。
『アズラン、これまで通り正面の通路を道なりに進んでいこう』
「はい」
指示にもなっていない指示だが、これで何とかなっていたのだから、これからも何とかなるだろう。
アズランを先頭に俺とトルシェが並んで後ろを進むいつもの隊形で、通路を歩いて行く。もちろん、前人未到の階層だ。通路の床面には何も足跡などないし、それ以外の情報も一切ない。
アズランに任せておけば万が一罠があっても発見してくれるだろう。
道なりに進んで行ったところ、初めて通路が二股に分岐している場所に出た。
「ダークンさん、どっちに進みましょうか?」
迷路の場合、常に左側の壁に沿って歩くとか、その逆とか言われているが、そんなことは気にかけても仕方ないし、ぐるっと一回転していたらそんなことは成り立たないので、何も考えることもなく、
『アズラン、左に行ってみよう』
「はい」
何も考えることなく選んだ左の通路。先に進んで行くと、
『前方に、2匹。二本足で歩いています。大きくはありません』
『どんなモンスターか、確認しよう』
音を立てないよう洞窟通路を俺たちは進んでいった。
ゆるい洞窟の曲がりの先にいたのは、あの緑のゴブリンだった。
『あれ? また、極端に弱そうなのが出て来たな』
『どうしたんでしょうね。まさか、グリーン・ゴブリンは強かったりして』
『それはないだろう。あいつらだぞ』
『そうですよね』
『トルシェ。面倒だから、やっちゃてくれ』
「はいはーい!」
トルシェが右手を伸ばして、何かしたと思ったら、二匹のゴブリンの頭の上半分が通路の天井まで吹き飛んだ。
『トルシェ、そういえばたまに使う今の魔法はどういう仕組みなんだ』
「これはですねー、フフ、聞きたいですか?」
『じらすなよ』
「エヘヘ。まず、風魔法で、相手の頭蓋骨にくるっと切り込みをいれたあと、頭の中に小さなファイヤー・ボールを作ってそこで爆発させます。そうすると、切り込みで弱くなったところから頭がちょん切れて上に吹っ飛ぶわけです」
なるほど、かなり高度な魔法であることは俺にも理解できた。
『すごいな』
「日々魔法の研鑽を欠かしていませんから」
『そうだったか』
とてもそうとは思えないんだが。
『一匹だけ念のため取っておいて、後はコロちゃんに食べさせてしまおう』
そう一言いっただけで、アズランがゴブリンの死骸のところに行ってしゃがんでいる。
あそこに行って、コロちゃんを出せと言っているんだろう。
『トルシェ、アズランのいる方じゃなくて反対のゴブリンを収納しといてくれ』
「はーい」
待たせるのは悪いので、急いでアズランのところに行って、鉄箱の中からコロを取り出しながら、
『食べていいぞ』
そう言って、緑の血を頭の切り口から流すゴブリンの死骸の上にコロを置いてやっった。
見るまにゴブリンの体がコロに取り込まれて行って無くなってしまった。いつものように自分の何倍もあるゴブリンを食べてもコロの体は全く大きくなっていない。不思議だ。
急にアズランが立ち上がり、饒舌な口調で俺に詰め寄って来た。
「ダークンさん。もっとゴブリンをコロちゃんにあげましょう! たったこれだけだと全然コロちゃんが可哀そうです!」
『これから先、いたらな』
「それじゃあ、ダークンさん、すぐに行きますよ」
『あ、ああ、行こう』
アズランに急かされる形で、通路を進む俺たち。出くわすのは緑のゴブリンのペアばかり。アズランが最初に発見して、知らないうちにたおしてしまい、
「たおしました。コロちゃんに早く食べさせましょう」
と言ってくる。
それで、俺は急いで現場に駆けていき、俺より早くそこに戻ってしゃがみこんでいるアズランの近くのゴブリンの死骸の上にコロちゃんを乗せてやるわけだ。
そんなことをしながら、10匹だか11匹だかコロがゴブリンを食べたあと、たらたらと通路をそれなりに進んでいたら、前方にモンスターを発見した。
『大きいです。動いていません。おそらく三体です。上の階層にいたオーガ?だと思います』
『もう面倒だから、トルシェ、おまえが行ってサクッとやってくれ』
ゴブリンを見つけては走り寄ってコロに食べさせるの繰り返しで、俺も精神的に疲れが出てきたようだ。
油断は禁物だが、オーガ三体くらいなら問題ないだろう。
通路の先で目にしたモンスターは、やはりアズランの報告通り上の階にいたオーガ?が三匹だった。アズランは、すでに向こうに回り込んでいるようだ。
オーガ?達も俺たちに気づいて身構えている。トルシェに任している俺も、石でも投げられてトルシェにダメージが入ってはまずいので、前を進んで行く。十分オーガが視界に入ったところで、俺の後ろから伸びた黒い線が最初のオーガを捉え、順に、2匹目、3匹目を捉えたようだ。
今回の黒い線は、こめかみでなく、背骨の上の首の付け根だった。即死していないにしても、首から下はもう動かすことができないだろう。
ゆっくり崩れ落ちていくオーガたち。すでに頸動脈をアズランによって断ち切られているようで、真っ赤な血を首から勢いよく噴き出しながら倒れていった。
まさに、圧倒的じゃないかわが眷属は。
オーガがいた場所には宝箱。その先に下り階段があった。




