第75話 三人団が行く3、檻(とりかご)
誤字報告ありがとうございます。(2021年12月23日)
骨音楽で遊んでいたら、疲れていないといっていたわりにベッドに入るとすぐに寝てしまったトルシェたちが起きだしてきた。
「おはようございます! ダークンさん」「おはようございます!」
目覚めは良いようで、それは元気な証拠なのだろう。
『二人とも顔を洗ってこい』
「はーい」「はい」
二人が朝の支度をしている間、俺が朝食の準備をしてやるとするか。
台所脇の食糧庫に行き、適当に食材を選んだ。パンの塊とハムの塊、バターにチーズ、それにリンゴを用意した。ハムは厚めに切ってフライパンで焼いてやり、皿の上にチーズとリンゴを一緒に乗っけてやった。それに、スライスしたパンとバター。飲み物は水袋に残っていた『暗黒の聖水』だ。皮の水袋に入っていた『暗黒の聖水』だが、透き通ってまったくにごりがない。さすがだ。
二人分のナイフとフォークと一緒にテーブルの上に並べていると、トルシェとアズランが支度を終えてやって来たので、
『簡単なものだが、朝の用意をしてやったぞ』
「わーい、ダークンさんありがとう」
「ありがとうございます。ダークンさんは食べないんですよね?」
『気にせず食べてくれ』
「おいしーい」「ほんとですね」
喜んで食べてもらえると、こっちまでうれしくなるのは何でかね?
『食べたら少し休んでそれから街へ行こう。食べた食器は流しに置いておいてくれ』
「いえ、すぐに洗っておきます」
「アズラン、私のもお願い」
トルシェはちゃっかりしてるなー。まあいいけど。
『それじゃあ、そろそろ行くか』
俺もヘルメットとガントレットを着けて出発準備ができた。今から街に出ると外は明るいだろうからマントはいらないだろう。肩にコロちゃんの入った鉄箱の肩ひもをかけて、さあ出発だ!
「はい」「はーい」
『大迷宮』の渦から出ると、それなりに日は高くなっていた。これなら店も開いている。
『まずは、樽だな。ところで樽はどこで売ってるんだ?』
「それは、樽屋でしょう」
『ふーん。それじゃ樽屋にいこう。で、樽屋はどこなんだ?』
「さあ」
「あのう、樽は桶屋じゃないですか?」
「そうだ、桶屋だ。桶屋で見たことある」
『じゃあ、桶屋に行こう。場所は、分かるんだろ?』
「桶屋なら分かりまーす」
トルシェに連れられて桶屋にやって来た。
店の前には道にもはみ出して、いろいろな大きさの桶がたくさん置いてある。店の中に入ると、ちゃんと樽も置いてあった。
『10個も買っておけばだいぶもつだろ? あと、ガーゴイルの口から「暗黒の聖水」を直接樽の口に入れたいから、樋になるような物がないかな? それと漏斗も欲しいな』
「樋も漏斗もちょうど売ってました」
『それじゃあ、トルシェ。頼む』
「面倒ですから店の樽全部買っちゃいませんか? そんなに高いものじゃないし多ければ多い方がいいですから」
『じゃあそうしてくれ。どうせ、「収納キューブ」に入れるんだから問題ないだろ』
そういったことで、店にあった同じ大きさの樽を20個ほど買うことが出来た。だれの一生かは分からないが、もはや一生ものの樽だ。当然『収納キューブ』に樽を収納したのだが、店の人が結構驚いていた。
『次は、二人のために日持ちのする食料を買いに行かないか? 干し肉とかそんなのがあれば結構もつだろ? 「暗黒の聖水」ばかり飲んでると飽きるだろ?』
「そうですね、他に干した果物なんかもいいかもしれませんね」
『そういったものはやっぱり乾物屋か?』
「はい。すぐそこに乾物屋があります。そこで結構安く手に入りますよ」
次に入った乾物屋の中には、いろいろな種類の干し肉があった。いわゆるビーフジャーキーのように薄く延ばしたものから、おおきな塊までいろいろだ。干した果物も、レーズン、干しあんず、デーツなどいろいろで、木の実のような物も何種類もあった。
『そこはお前たちの好みだから好きなものを買えよ』
ということで、それなりの量を二人で買い込んでいた。
『それじゃあ、まだすこし早いかもしれないが、武器屋に行ってみよう』
お店で別に小袋に入れてもらった木の実を二人とも食べながら武器屋へむかった。何の木の実か分からないが殻から実をとり出して食べている。殻を道に捨てちゃ良くないだろ。別にいいけど。
アズランなどは体が小さいのでまさに小動物がエサの木の実を食べているようでほほえましい。トルシェも小柄なのでそれ相応にかわいく見える。
いつもの武器屋に入ると、お店の娘さんが俺たちのことをちゃんと覚えていてくれて、型直しが終わったアズランの鎖かたびらを持ってきてくれた。すぐその場でアズランは鎖かたびらを上着の下に着込んで準備は万端だ。
『これで準備できたから、行くか?』
「その前に、冒険者ギルドで、何か依頼で割のいいのが出てないか調べてから行きませんか?」
「あのう、その前に鳥かごが……」
アズランの鳥かごのことはすっかり忘れていた。
『トルシェ。とりあえず、ここの娘さんに鳥かごがないか聞いてみてくれるか? ないとは思うがあれば儲けだし、なければどこかに売っていないか聞いてみてくれ』
「わかりました。
すみません、鳥かごって売ってませんか?」
「はい、小モンスター捕獲用の檻でしたら売ってますよ」
檻もかごのようなもんだろう。
「見せてもらえますか?」
「今持ってきますので、お待ちください」
娘さんが店の奥に引っ込んで行った。
……
「こちらになります」
娘さんが台車に乗せて持ってきたのは、鳥かごによく似た形の檻だったのだが、かなり大きい。頑丈そうだがその分重そうだ。アズランの背丈からいってアズランがこれを持ち歩くのは難しそうだ。トルシェもそう思ったようで、
「これよりも小さな檻はありませんか?」
「申し訳ありません。あいにく、当店で扱っている小モンスター用の檻はこれしかありません」
モンスターの檻ならこの大きさにこのゴツさは仕方がないな。どうせ、ピクシーがそんなに早く見つかるはずもないから、とりあえず買って『収納キューブ』に仕舞っておけばいいだろう。
『とりあえず買っておけばどうだ? ピクシーが見つかるまで出番がないから収納したままでいいから』
『それもそうですね』
「それじゃあ、その檻もください」
アズランがホッとしてるよ。
全部の勘定を済ませて、檻を収納して店を出た。
『アズラン、良かったじゃないか。檻が手に入って』
「はい!」
元気いっぱい返事を返された。そこまでうれしいか? うれしいんだろうな。




