第71話 またまた冒険者ギルドへ
アズランのピクシーかごは今のところどうでもいいが、退治したシルバー・ファングを冒険者ギルドに持っていこうと思い、渦のある部屋に入って街に出た。これはすごく便利だ。
ふつう、買い取りだけなら迷宮の出口に隣接したギルドの出先の買い取りカウンターで済ますのだが、今回は昇級もかかっているし、買い取りカウンターは大きなリュックを背負った連中でかなり混んでいたので、冒険者ギルドの方にいつものようにいくことにした。
冒険者ギルドへの道すがら、
『出来ればGランクからCランクくらいまでランクを上げたいところだな』
「期待はせずに、期待しましょう」
『その通りだ』
俺とトルシェの哲学的会話についてこれないアズランが困った顔をしている。べつにアズランを仲間はずれにしたいわけではないので、
『アズラン、俺たちの話していることの7割は冗談で3割がバカ話だ。気にすることなどないんだからな』
「は、はい」
日もだいぶ傾いて来たようだ。
そんな中、通りを行く人に避けられながら、三人で冒険者ギルドに向かう。
危ない人が街中に一人いるだけで、こうも世の中は大迷惑なんだと実感してしまった。
実感はしたが何をどうするわけにもいかない。せめて調子に乗って人の多い方に向かってオラオラオラとか叫びながら近づいていかない俺を、褒めてもらいたいくらいだ。
『ダークンさん、エライ!』
心の声が、トルシェに漏れていたようだ。
『ダークンさん、さすがです』
アズランにも漏れていた。どうも、褒めて、褒めてを強要してしまったようだ。いっそのこと、開き直ってもっと褒めてもらおう。俺は褒められて伸びるタイプだからな。
『ダークンさん、スゴイ!』『ダークンさん、カタイ!』
だいぶ、アズランも肩の力が抜けてきたようだ。
『着いたようだな。トルシェ、シルバー・ファングを出すときうまくやってくれよ。あんまり、「収納キューブ」を見せびらかさないようにな』
『大丈夫です。出すときには、「キューブ」はそのままで平気ですから』
トルシェによると、今回のような常設依頼で、出来高制の物はさきに買い取りカウンターで確認書を書いてもらい、それを持って買い取りカウンターで報酬を貰うようだ。
その報酬額などが集計されて最終的に昇格などを判断するということだが、E、とかFランクの昇進など窓口で適当に判断するのだそうだ。
しかし、今回のようにBランクのパーティーが全滅するようなモンスターの討伐の場合は、冒険者ギルドのギルドマスターの面接のような、なにか特別なことが起こるかもしれないそうだ。それはそれで面倒ではある。
俺たちが1階のホールに入ると、それまで、ホール内がざわついていたのだが、水面に小石を投げ入れて波紋が広がっていくように、ざわめきが静まって行った。
人気者はつらいぜ。
俺たちは、ホール中の注目を浴びながら、そのまま買い取りカウンターに向かって歩いて行った。
買い取りカウンターはちょうど前の冒険者の持ってきた物の手続きが終わったところだったようで、待つこともなく手続きを始めることができた。
トルシェが、前掛けをした窓口のおっさんに、
「お願いします」と声をかけた。
しかしこのおっさん、妙にガタイがいいな。
「持ってきたものをそこの台の上に置いてくれるかい? 後ろの鎧を着たのもおまえの仲間か、ゴツいの連れてんだな」
「まあね、それでその台の上だと出し切れないほど量があるんだけど」
「何を持って来てるんだ? おまえたち三人とも手ぶらに見えるから、どうせ証明用の耳かなんかなんだろ?」
「シルバー・ファングなんだけど、まずは一匹ここに出しちゃうよ」
「冗談言うなよ。……、
お、おい、シルバー・ファングじゃねえか! それにお前さん『収納キューブ』持ってるのか。あれ、おまえら、よく見りゃ全員Gランクじゃないか。いったいぜんたい、どうなってるんだ? そういえばGランクのくせにとんでもないヤツがいるって話をどっかで聞いたがおまえたちだったのか。黒くてゴツいのもいるし」
「それで、これがそいつの耳。一匹丸ごとだから、わざわざ耳を切らなくても良かったかな」
「そうだな」
「それで、これ一匹だといくらになりそう?」
「ばらしてみないと分かんないが、ここまで毛皮が傷んでいないシルバー・ファングだとまず10は固いな」
「そう、そいつと同じのがあと5匹いるんだけど」
「なにー! ここじゃ、そんなに受け取れないぜ。後のは、迷宮前の買い取り所に持っていってくれるか? しかし、見事だな。首筋を一撃か。いや、こめかみから血が出てるが、孔が開いてるぞ! こっちが致命傷なのか。こいつは凄いな。わかった。おまえたちは今日から、Bランクだ」
そう言ったおっさんが紙に何か書きつけてトルシェに手渡した。
「この紙を持って受付に行ってくれ、そしたらBランクの銀のカードがもらえるはずだ。今受け取ったシルバー・ファングはその間に査定しとくからな」
「おじさんが、そんなに簡単にわたしたちを昇格できるの?」
「うん? なんだ、おまえさん、俺を知らないのか? 俺はこう見えてもこのギルドのギルドマスターなんだぜ」
なんだかんだで、俺たちはラッキーだったようだ。
ギルドマスターにもらった紙を手にして、受付の列の最後部に並んだら、お先にどうぞ、どうぞで、すぐに俺たちの番になった。ラッキーはハッピーだとつくづく思うよ。




