第46話 ドラゴンの目2
ゴーレムの残骸から出て来た水晶玉に見えるその玉を床から拾い上げ、両手で持ってみて、これが前に手に入れたドラゴンの目と同じものだと確信した。
『出てきましたねー』
『だな』
『意外と早かったですね』
『だな』
俺はドラゴンの目を前にしてトルシェと二人、感想を語りあっている。実際探していたドラゴンの目が簡単に見つかってしまった。語り合ってるといっても、トルシェの感想が全てだ。
『それじゃあ、これを持って戻るか』
『そうしましょう』
ドラゴンの目を自分のリュックに入れ、来た道を戻っていく。
帰り道にはちゃんとムカデが湧いていて、トルシェの餌食になっていった。こいつらが経験値になっているのなら、トルシェは相当強くなってるんじゃないか?
実際かなり強くなっているから、経験値になっているのか。やっぱりステータスオープンとか言えばステータスが見えると便利だよな。
愚痴をこぼしつつ、トルシェが作った炭を足でつぶしながら拠点に帰る階段までたどり着いた。
階段を見上げると、黒く靄がかかっているため先は見えないのが救いかも知れない。300段も見えていたら一般人なら心が折れる。こんなところにやってくる一般人がいるとしてだが。
で、ここに全く一般人とは程遠いダーク・エルフが嬉々として階段を上っている。
体が軽いのは知っているから、もう少しゆっくり上ってくれよ。別に俺も階段を上ったくらいでは疲れはしないが、急いで登る必要はないだろう。
『トルシェ、急いでも、急がなくても何も変わらないんだ。落ち着けよ』
『えー、ダークンさんはあのドラゴンの目が気にならないんですか?』
『気にはなるが、今言ったように、何も変わらないだろ』
『夢がないなー』
階段を上り終え、いつもの通路とは逆回りに回って『炎の巨人』をたおした広間に反対側からたどり着いた。
リュックからドラゴンの目を取り出し、広間のこちらから見て右手の壁、ドラゴンの顔が描かれている壁に近づいていくと、手に持ったドラゴンの目が明るく輝き始めた。そのドラゴンの目を本来の目のある位置に近づけると、そのまま手のひらから浮き上がった玉が、壁に吸い込まれて行った。
ゴゴ、ゴゴ、ゴゴ、ゴゴ、……。
腹のない俺にもわかるような重い音が響き、両目の揃ったドラゴンの顔の真ん中に縦に切れ目が入り、壁が左右に動いて、その先にあの謎タイマツで照らされた通路が現れた。
『ダークンさん、やりましたね』
『ああ、やったな。行くか』
『はい。きっと宝物がありますよ』
『たしか、トルシェは、俺たちには金目の物は不要だとか言ってなかったか?』
『いやだなー、それを言ってたのは、ダークンさんじゃないですか』
『あれ、そうだったかな? まあいい、何かすごいものがありそうだものな』
『行きましょう』
通路は幅が3メートルほどでまっすぐ続いていて、突き当りは両開きの扉になっていた。さてどうやってその扉を開こうかと思って周りを調べようと扉に近づいたら、勝手に左右に開いてくれた。
入った先はさっきの広間の何倍もある四角い大広間で、ここでは謎タイマツではなく明るく白色の光を発する四角い板が高い天井に等間隔で何個もはめ込まれていた。まるで蛍光灯かLEDの照明のような明るさだ。だだっ広い部屋の真ん中には、あの鑑定石にそっくりな円柱状の石が突っ立ている。
『昼間みたいに明るいですね。眩しいくらいです。天井から部屋を照らしているのは魔道具ですよ』
『魔道具か。俺には電気照明に見えるがこっちの世界じゃ魔道具なんだな』
『電気照明?』
『俺の元居たところにあった魔導具みたいなものだ、気にするな。それで、そいつはやっぱり鑑定石だよな?』
『見た目は鑑定石ですよね。何か試しに鑑定してみますか?』
『それじゃあ、ムカデの炭が一塊あるから、そいつを鑑定してみよう。何かの役に立てば儲けものだしな』
リュックからムカデの炭を取り出したところ、リュックの中で削られてしまったようでだいぶ小さくなっていた。リュックの中も炭で黒くなってしまっている。
毛布はリュックの外側に括りつけているので中に入っているのはトルシェの水袋だけだった。革製の水袋の外見は炭で黒くはなったが中身がどうこうなったわけではないので問題はないだろう。
いつものように鑑定石の上にその炭を置いて、ガントレットを外した手で例の模様を触った。
<鑑定石>
「鑑定結果:
名称:特殊炭
種別:炭
特性:ダンジョン大ムカデの変異種が炭化したもの。非常に高火力」
微妙なものだが、この世界だと鍛冶かなんかに使えば役立ちそうだ。だが、これを大量に持ち歩くのはあまり効率がいいとは言えない。これからも、積極的に拾う必要はないだろう。
『やはり、鑑定石だった。この炭は特殊炭とかいう名前で、火力がかなり高い炭らしい』
『それって、「幻のドワーフ炭」って言われる炭じゃないんですか?』
『さあ、鑑定ではそんなことは何も出てなかったぞ』
『そうですか。「ドワーフ炭」は同じ重さの銀と同じ価値があると言われている超高級炭なんですが残念ですね。ドワーフ炭でないと融かせない金属があるらしく、どこの鍛冶工房でも必死になって仕入れているそうですよ』
『そうなんだ。まあ、こんなただの炭がその「ドワーフ炭」ってことはないだろう』
『鑑定でそう出ていないなら、そうなんでしょう』




